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夕陽の見える丘で

僕はマリーを連れて丘へ向かう。


「今からどちらに向かうのですか?」

「僕がいつも悩んでいるときとかに行く場所だよ。」

「そんな場所があるのですね。」

「うん、もうそろそろで着くから楽しみにしてて。」


護衛の人たちには少し離れた場所で待機してもらっている。

この場所は出来るだけ人に知られたくはないから。

自分の中でも特別な場所なのだ。

最初に行ったときは父がまだ生きていた時だった。

武術が今でさえ神童といわれているがそれでも壁にはよくぶつかった。

そうして伸び悩んでいた時に肩車してもらって連れてきてくれた。


「うわぁすごくいい景色ですね。」

「そうでしょ?父上によく連れてきてもらっていたんだ。何となく悩んでいたときとかにここに来ると元気が貰えたりしてね。」

「そうだったんですね。」

「……僕は若干鈍いところがあるから詳しくはわからないけど何か悩んでいたんじゃないかって思ったんだ。どう?」

「そう、ですね。自分でもどうしてかよくわからないんですけど不安に思うことがあったんです。私結構強引なところがあって本当は迷惑かけているんじゃないか、とか婚約者の件も無理させてはないかとか。だからさっき私にプレゼントしていただけると思っていなかったんです。それが嬉しくて、でも申し訳なくて複雑だったんです。」

「そっか。ごめんね、まだ僕も正直婚約者っていう実感はないんだ。……実際まだ未練はあるから。」

「そうです、よね……。それについても問題ないと大口叩いたのにやっぱりどこかで不安があったんです。やっぱり私が婚約者なんて嫌ですよね?」

「そんなことはないよ。確かに驚くことは多いけどそれも含めて楽しいって思うんだ。」

「本当ですか?無理してないですか?」

「してないよ。だから安心して。」

「よかったです。……あの少しだけ胸を借りてもいいですか?」

「うん、いいよ。」


そうして胸に飛び込んでくるマリー。

緊張していたのか顔を埋めると嗚咽を漏らしていた。

それからどれくらいの時間が流れたかわからない。

マリーが落ち着くまで夕陽は顔を覗かせていた。


「お見苦しいところを見せました。」

「気にしないで。むしとその方が婚約者っぽくない?」

「そうかもしれないですねっ!」


前に言われた言葉をそのまま贈る。


「あの、ステファニー様のことですが……。」

「うん?」

「その、以前の言葉を取り消すつもりはないです。ステファニー様も一緒にジーク様を支えたいと思います。」

「それは、どうなんだろ?」


ステフは気にしなさそうだが本人がいないから何とも言えない。


「きっとステファニー様も賛成してくれると思いますよ。人伝ですけど聞いた印象から仲良くなれそうな気がするんです!」

「そっか。今度一緒に会いに行ってみようか。」

「はい、それがいいと思いますっ。」


少し僕の中でも二股しているような形であえてマリーの前ではステフの話題を出さないようにしていた。

そういったことも含めてマリーを不安にさせていた要因だったのかもしれない。

言葉に気を付けるのは勿論だが、思っていることはどうしても隠し切れないものだろう。

どこかのタイミングでこうやって思いを伝え合うのは大事なのかもしれない。


「あの、先ほど頂いたネックレスよければつけてくださいませんか?」

「もちろん。」


そうしてマリーにネックレスをつける。


「うん、思った通り似合ってるよ。」

「えへへ、ありがとうございます。一生大事にしますっ。」


そうして二人で手を繋いで丘を降りていく。

線引きは当然必要だが今後はこうして恋人らしいことをしてもいいかもしれないな。


「あの、ステファニー様にいつ会いにいきましょう?」

「え、さっきのいまで!?」

「当然です!思い立ったらなんとやらですよ!それにステファニー様もきっと待ってますよ!!」

「だといいんだけどね。」


何度か連絡しているが返事はない。

不安になることが多かったのでいい機会なのかもしれない。

ステフは今何しているだろう?

出来れば笑っていて欲しいな。



━━━━━━━━━━━━━━━


あの日ジーク様の領地が騒動に見舞われてからお会いすることができなかった。

父が勝手に婚約を解消したのも、縁を切ろうとしているのも何かの間違いだと思いたかった。

政略結婚自体珍しいことはなく、寧ろ恋愛結婚自体が少数派だ。

別にそこに不満はない。

何しろ母がまさにその渦中に居たのだから。

あの父のことだから私をその道具にしようと言うのも知っていた。

そんな折に相手として父が認め、私が想う相手として重なったことは嬉しかった。

結局今は振り出しに戻ってしまったけど。

いや寧ろマイナスなのかもしれない。

何せ今ではトライル家は火の車で、疫病神として相手にされないのだから。

でも納得していない私としてはちょうど良かったのかもしれない。

まだ未練がある状態で他の場所に嫁に出されたりなんかしたらきっと不貞腐れてしまう。


「クソクソクソッ。何でこんなことになってるんだっ!!それもこれもあのガキが大人しくくたばらないからだっ」


父の怒号が聞こえる。

叫びたい気持ちは私も同じだが父に逆らうことなんて出来ない。


「はぁどうしてこうなったんでしょうか……」


思わずため息が出る。

最近では部屋から出ることさえ許されない今星を眺めるのが唯一の楽しみだった。

貴方は今元気に暮らせていますか?

良ければ私をこの籠の中のから解き放ってください。

いかがでしたでしょうか?

本日で年末年始の連続投稿は最終日になります!

次回からは以前のように毎週土曜日投稿に戻ります!

お楽しみに!

またこれからもこの作品をよろしくお願いします!


また、便利なブクマの登録や下の☆で評価をしていただければ励みになりますのでお願いします!!



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