漢達の殴り合い
店員さんを何とかなだめると、俺が頼んだ『チーズインインハンバーグ』と美少女が頼んだ『ナポリタン』が運ばれた。
美少女は既にスプーンとフォークを持っていて臨戦態勢に入っており、ナポリタンが目の前にきた瞬間に目にも止まらぬ早さでナポリタンのメンをグルグルと器用に巻いて、口の中に運んでいた。
俺はハンバーグの真ん中をフォークでぶっ指して、豪快にそのまま口の中に運んだ。
「う···旨い」
思わず言葉がもれてしまっていた。
美少女は俺の言葉など気付くこともなく、ただ眼前のナポリタンを無我夢中で食らっていた。
俺は会計の前に立つと横を向き、手のひらを相手にみせ懇願するようにお願いした。
美少女はそれに気付きポケットから財布を取り出し、俺の上にヒラヒラと一枚万札が落ちた。
やっぱり金持ちだわ。
ヒモになるチャンス。歳を重ねる事に働く気がなくなるのは何故だろう。
間違いなくやりたくない仕事をやっているからだろう。
早くあのフュギュア地獄から解放されたい。
会計を済ましお釣りを返そうとしたら当たり前のようにお釣りを貰えた。
これで100パーセント金持ちだと確証されてしまった。
腹ごしらえを済ました俺達は近くの映画館に向かった。
映画館の中はキャラメルポップコーンの甘ったるい匂いに包まれて、さっき食べたばかりなのにキャラメルポップコーンを以上に食べたくなっていた。
今日1日の上映時間をみると『漢達の殴り合い』『幼なじみとラブラブ学園生活』の二択のみだった。
美少女の目線は完全に『幼なじみとラブラブ学園生活』を見ていたが、俺は『漢達の殴り合い』のチケットを二枚買って一枚渡すと美少女の顔は少しひきつっていた。
何故俺が『漢達の殴り合い』を買ったかというと理由は簡単。
タイトル的に男の主人公が幼なじみとキャッキャ、うはうはする奴でろ。
そんなリア充の映画観てたら間違いなく今日熱出るわ。
今日出るのは間違いないから高熱出るわ。
『漢達の殴り合い』はタイトル通り、漢達が過激な発言をしながら乱闘するという、観ていて何が面白いんだと分からない映画だった。
続いて向かった先は長野県民なら誰もが知っている場所『善光寺』にやってきた。
横で歩いている俺はすれ違う人から「どういった関係なんだろ」「金で買った女だろうな」と陰口を囁かれていた。
まぁそれも無理ないだろ。
年齢15歳の美少女の横には30歳のおっさん。端から見ればどういった関係が気になる。
ただ一言だけ伝えたい。
残念でした。金で買ったんではなく拾ったんです。残念でした。
俺は心の中でガッツポーズをしながら堂々と胸を張って歩いていた。
『善光寺』の門前に立つと中は人が多く、地元民だけではなくキャリーバッグを持た人やカメラで記念撮影をしている人が多くみられた。
人混みの中に入るのでここは男として手を繋いでいい場面だよな。
ダメでも力尽くで繋げばいいか。
所詮は女。男の力には敵うまい。
俺はそんなゲスな事を考えながら勢い良く美少女の手を繋ぐと、俺の指に激痛が走った。
「いてー!!!」
あまりにもの激痛で悲鳴をあげ、直ぐ様手を離した。
美少女の顔を覗いたらニヤッとしていた。
「私空手やってるから不用意に触らない方がいいわよ」
おいおい蘭ねーちゃんかよ。