救世主?
テーブルの上にはグツグツとマグマの様に煮えたっている『超チャレンジ辛さ百倍ラーメン』が目の前に。
恰幅のいい店員がストップウォッチを手に持ち「準備ふいいですか?」と聞いてきた。
俺は緊張しているのか口の中に広がった唾を飲み込みゴクリと音をならしなが小さく頷くと、店員は30分と表示されていたストップウォッチボタンを押した。
スタートダッシュと同時に割り箸をパキンと割りどんぶりの中に箸を突っ込み中から適当に麺を数本持ち上げ口の中に運んだ。
「う···うめえ~!!!」
「うるしゃい」
目の前でちょうどいいサイズのラーメンを食べているリカに注意されたが、思わず雄叫びを上げたくなる旨さだ。
「か···から~!!!」
「うるしゃい」
リカにまた注意を受けたが、何だこの旨さの後に以上に押し寄せてくる辛さは。
ダメだ水、水。
テーブルに用意されていたコップの入った水を一口で飲み干した。
それでもまだ口の中のヒリヒリ感は軽減されてなく、備え付けてあった1リットル位の容器の水をコップについで、また飲み干した。
ダメだ。正直食べれた物じゃない。
超チャレンジ辛さ百倍ラーメンの汁はいまだにぐずぐずと煮え立っていた。
一応レンゲで汁をすくいあげ飲もうとしたが、レンゲを下向きにし汁をラーメンの中に戻した。
麺でこの辛さなら間違いなく、ほぼ確実に死ぬな。
ふとタイマーを見たら時間は確実に進んでおり5分は経過していた。
やべー、迷っている暇なんてなかった。
「いくぞー!」
気合いを入れ直しラーメンの麺を箸ですくい、そのまま一気に口の中に方張った。
「ブッふ!」
口の中の麺が半分リバースしそうになったが何とかもちこたえて、そのまま胃の中にいれた。
額からは大量の汗が吹き出しもう身体中が汗でびちょびちょの状態だ。
もう一度チャレンジしようと麺を持ち上げ口の中に···運べなかった。
もう食えない。本当に無理だ。
さすがはチャレンジラーメンという名に相応しい事だけの事はある。
「ギ···ギブアップ」
俺はコップの水を飲み干し項垂れる様に負けを認めた。
食べたラーメンの量10分の1。残り時間15分。
「お客さん超チャレンジ辛さ百倍ラーメンのお代ですけど、1万円になります」
ややややべー。どうしよう? 辛さの汗じゃなくて冷や汗が出ちゃってるんですけど。
「超チャレンジ辛さ百倍ラーメンを一杯お願いします」
ふと俺と馬鹿げた言葉を言っている奴を確認すると、そいつは俺の目の前にいた。
「止めとけ死ぬぞ。さっきの俺の状況見てなかったのかよ」
「見てたけど」
リカは自分の頼んだラーメンを平らげ、俺に余裕の表情を見せてきた。
「っつうかお前腹一杯だろ。そんなに食べれるのかよ?」
「だから余裕ですよ」
恰幅の店員さんが二人係りでお盆を持ち、地獄の様な食べ物が俺達の目の前に置かれた。
「それじゃ始めます」
「ちょっと誰が一杯だけって言ったんですか。二杯持ってきて下さい」
「ば···ばかやろー。マジで死ぬぞ。お前のその細い身体に入る訳ねーだろ」
俺の粗っぽい言葉にムカついたのか、鷹が獲物を捕るかの様な鋭い眼光を向けられた。
「す···すいません」
何故だか謝ってしまったが、そんな事をお構い無しに気付いたら超チャレンジ辛さ百倍ラーメンがテーブルに並べられた。
恰幅のいい店員がストップウォッチのボタンを押すと超チャレンジ辛さ百倍ラーメン対リカの戦いの火蓋が落とされた。




