超チャレンジ辛さ百倍ラーメン
超天下一の中に入るとカウンター席とテーブル席があり、僅かだが畳がある場所が数席完備されていた。
俺達は取り敢えず店員さんに言われないまま勝手にテーブル席に腰を下ろした。
腰を下ろしたものはいいものの、さてこの後どうすればいいんだ。
そんな事を考えていたらアルバイトだと思える恰幅が良く年齢が若いと思われる兄ちゃんが水を運んで来て「ご注文が決まりましたら、備え付けてあるブザーを鳴らして下さい」といいメニューを置き俺達の元から厨房へ帰って行った。
そんな注文しろって言われても金がないんだから注文出来ねーよ。まぁラーメンの良い匂いに誘われて入ったこっちに非があるんだけどな。
そんな事を微塵と気にしてないのか、リカはメニューを立てにらめっこしていた。
「おい金無いのに見てもしょうがないだろ」と言いながら俺はリカが見ているメニューを机の上に倒した。
その行動に腹を立てたのかリカは鋭い眼光を俺に向けてきた。
その鋭い眼光に耐えきれず俺は再びメニューを立てリカの手元に戻すと、満足したのか視線をメニューに戻した。
って何で俺がここまで気を遣わないといけないんだよ。そもそも金がないっての。
お店に入る前に嗅いだ匂いが突然鼻腔をくすぐった。
その匂いの原因はカウンター席でおっさんが頼んでいたラーメンが原因だった。
見ているだけで涎が出てきそうなどんぶりの器にベースは味噌で麺の上には溢れんばかりのもやし、チャーシュー、メンマ、コーンが乗っていた。
ヤバい、めちゃくちゃ旨そうだわ。
おっさんに近付いて一口頂けませんかねっていいたい気分だ。
時間は数分経っていたが一向にメニューが決まらない。お店の中に入って三十分以上何も頼まないって、俺史上初新記録何だけど。しかもさっきから店員さんがチラチラ俺達を何度もチラ見してんだよ。
そんでリカはいつまでメニュー見てるのよ。
リカはメニューをガタンとテーブルに置くと『超激ウマ味噌味噌ラーメン』に指を差して俺の顔を見ていた。
止めろよ。見るなよ。そんな可愛い顔で。
いかんいかん。思わず流れで注文しそうになっちゃったけど実際は注文出来ないんだよ。
俺は冷静差を取り戻すと『超激ウマ味噌味噌ラーメン』と書かれた上の方に『超チャレンジラーメン』と小さく書かれていた。
何々詳細は
『超チャレンジラーメン総重量は器を除いて十キロ、一口食べればここが現実世界なのか幻の世界なのか訳が分からなくなる味。結論は無双的に美味しく、食べたら病み付き間違いなし。そして完食出来たらお代は無料とラーメン一杯無料券配布します』
これやるしかねー。出来るのか俺に。でも入ったからには何か頼まないと失礼だよな。
「す···すいません!」といい俺は店員さんを呼んだ。
店員さんがドシドシと重い身体を揺らしながらこちらに歩いてきた。
「はい。ご注文お決まりでしょうか?」
「超チャレンジラーメンをお願いします」
店員さんは急にここが極寒の地の様に身体をガタガタと震えだした。
おいおいどうしたんだ急に。何か変な物食べて当たったんじゃないだろうな。
「お客さん本当にいいんですね?」
店員さんが真剣な眼差しを俺に向けてきた。
「はい。後この超激ウマ味噌ラーメンを一つ」
「超チャラ超激二丁入ります!!!」と店員さんが超チャレンジラーメンと超激ウマ味噌ラーメンを略したいい方をしたら厨房から「はいよ!!!」と威勢のいい声が返ってきた。
これでもう後には引けねーぞ。
恰幅の店員さんが二人でお盆を持ちその上には湯気が立ち登っている超チャレンジラーメンだと思われる物が。
「へいお待ち」といいその物体は俺の目の前に置かれた。
目の前にはグツグツと沸騰していて、それでいて赤い色をしていた。
あれ俺頼んだもの間違えたかな。
「あのー俺頼んだの超チャレンジラーメンであっていますか?」
持ってきた店員さんに思わず不安になり聞いてしまった。
「はい。超チャレンジ辛さ百倍チャレンジラーメンです」
完全に間違えとるやんけ。
「あのーすいません。超チャレンジラーメン頼んだんですけど?」
「はい。分かっていますよ」
店員さんはメニューを俺に見せてくると『超チャレンジラーメン』の横に辛さ百倍と表示されていた。
ただの詐欺じゃん。
「こんなの食べれる訳ないので下げて下さい」
「お客さん食い逃げですか?」と言われ店員が俺に睨みを効かしてきた。
「いやだってまだ食べていませんけど」
「お客さんあれを見て下さい」
店員さんが首をくいっと向けた方向を確認するとリカがズルズルと音を立ててラーメンをすすっていた。
「おい、本当に何やってんの?」
「な···な、なゃに」
ラーメンの麺をすすって食べてるもんだから言葉がかみかみになっているじゃねーかよ。
しかも俺の大好きな猫召還しやがって。ムカつくはずなのになんちゅう可愛い表現してやがる。
「店員さん超チャレンジ辛さ百倍ラーメン挑戦します」




