超天下一
女の子が俺の方を見たら時間が少し止まったが、予想以上に口が動いた。
「···リカ?」
リカも驚いてるらしく俺の顔を凝視していた。
あれ、リカでいいんだよ。真正面の顔は前と同じく目は丸くクリクリしていて、鼻はスッとしていて唇は薄くややピンク色。
間違いない。こいつはリカだ。だが何で何も喋らない。俺の顔をジーッとみているだけだ。三歳児が親じゃない赤の他人を見て警戒しているかのような目付きだ。
どうしようかな? もう一度俺の方から話して見ようかな。でもなまだジーッと見てるしな。
あれか。もしかして緊張してるのか。久しぶりに再開したものだから。
「···リカちゃん?」
と言ったらものすごい速さで目を伏せた。
あれなんで。あれか子供扱いしてちゃんを付けたのがいけなかったか。でもこれはあれだぞ、フレンドリー感を出さないといけないと思って言ったんだぞ。
最初のインプレッションミスったかや。でも正確にはあれだけどな二回目だけどな。
「人形」
さらに目の前にいたリカと思われる人間は背中を俺に見せてきた。
もっと心閉ざしちまった。やベーよ。もう修正不可能だよ。無理だよ。
やっぱり若い子は難しいよ。
「あれリカでいいんだよな?」
悟らせるかのように優しい口調で言ったら首を上下に動かた。
あれ今間違いないよな。確実に動かしたよな。
「リカが何で突然いなくなったかは分からないけど、別にその理由も聞かないし探りもしない。もう一度一緒にすまないか」
それでムフフの事をしたり俺の為に一生金を注ぎ込んで食事を提供してくれ。
さすがにこれは言えないけど俺の本音はこれ。
リカは反応して身体全部を俺に見せてきた。
おやこれは好感触という奴か。
「それじゃあもう一度お願いします」
と言い頭を下げてきた。
ゲットしたぜ。リカをゲットしたぜ。ポケモンで言うと伝説のポケモンエンティーかスイクン、ライコウに匹敵する位の珍しさだぞ。
ごめんなさいねどうしても金銀版がまだ抜け出せてなくて。
「それじゃあリカごめんだけどお金貸してくれないか?」
俺は前髪を手の甲で弾き格好つけながら言ったら、リカは呆れ顔をしていた。
「相変わらず甲斐性なしですね」
「ごめんなさいね。もう早くお家に帰って温かいコーヒーを飲みたいんだよ」
リカの金で。
「お金何て無いですよ」
「え、何で? この前お金めちゃくちゃ持ってなかったっけ」
「あの時は持ってましたけど今はありません」
使えねーわ。金のない美少女何てただの美少女なだけかよ。
「え、マジかよ。っつうかどうやってここに来たの?」
「詮索はしないって言ってませんでしたっけ」
「あーごめんごめん」
え、俺が言ったのはこの前家から突然消えた理由でここにいる理由は聞いてもいいと思ったんだけど。
それダメだったら何にも喋れねーわ。
「そんじゃああれか取り敢えず当てもなく歩くか?」
リカは俺の横に立ち歩き始めた。
現在新潟市の街を歩いているのだが、本当に街中ビルだらけで景色が変わらなかった。
何故ビルとビルの間に公園があったのは定かではないが、そのおかげてリカと出会えた事は紛れもない真実なのだ。
「私達一体どこに向かってるんですか?」
「いい質問ですね。それは神のみが知っています」
俺の中で某司会者並みの素晴らしい解答だと自負してしまった。
「つまり分からないって事ですよね?」
横を歩くリカが覗き込むように俺を見てきた。
やっぱり可愛いわ。
あれだな、美人は三日で飽きるって言うけどあれ嘘だな。だって全然飽きないし、それどころか余計に好きになっちゃうぞ。
そんな事を考えていたら鼻腔をくすぐられる匂いがした。
リカもその匂いを察知したらしく匂いがしている方向へ視線を向けていた。
俺もリカが見てる視線に目を向けるとラーメン『超天下一』と書かれた看板から臭いが漂っていた。
「食べるか?」
金もないのにリカに言ったらコクりと頷いた。
俺達はラーメン『超天下一』の暖簾をくぐった。




