ゴミ屋敷
「これが俺の部屋だけどどうかな? 綺麗でしょ」
女子高生の名前は結局教えもらえなかったが、童貞30歳独身男性の部屋に入ってきた。
見渡す限り萎れた草やカップラーメンが散乱していて、綺麗とは程遠いゴミの山だ。
女子高生は玄関で足を止め、ゴミを見るような目で部屋を見ていた。
「ゴミ屋敷ですね」
その通り。だってゴミ屋敷にあえてしたんだもん。すいません。それは嘘です。ゴミ屋敷になっていました。
「早く入って入って」
部屋に一歩足を踏み入れたら目の前にあるペンペン草をもろともせずにし、女子高生を部屋に入る様に促したが全然中に入ろうとしない。
知らんが女の子は綺麗好きだと都市伝説で聞いた事があるか、それは本当だったと立証すれたな。
「どうぞどうぞ」
と言いめちゃくちゃ中に入るのを戸惑っている女子高生に半ば強引に進めたが、その場から微動だにしない。
「ちょっとどうしたの? 何で中に入らないのよ」
「···ゴ···ゴミが」
当たり前の事をまた言われても、そんな事は分かってるんだよ。
「いいから入りなよ」
女子高生の制止を押しきり俺は腕を掴んで強引に引っ張っり中に入れようとしたが、地蔵のように動かない。
「キャー! やめて下さい」
と大きな声を出されるとそ、その言葉に反応して俺は手を引っ込めた。
手を引っ込めるとその隙を見計らって玄関の扉を開けて女子高生はどこかに消えて行った。
何故だが唖然としてその場に立ち尽くしていたが、扉を開けて全力で後を追いかけた。
いねーな···と辺りを見渡したらどんくさそうに走っていた、ついさっきまで見ていた女子高生の姿があった。
「おい、はぁはぁはぁはぁ」
女子高生の肩を掴み静止させたが、歳をとるとダメだね。すぐに息が上がってしまって。
「ちょっと何するんですか?」
女子高生は振り向きながら喋ると、眉間にシワん寄せていた。
あまりにも不愉快な表情に思わず手を離してしまった。だって本当に怖いんだもん。
「何で急に逃げたんだよ?」
「自分の身に危険を感じてしまったので」
んー間違いではないしむしろ正解何だけど、だって男の子なんだもん。
よく言うだろ。据え膳食わぬは男の恥って。
「ご···ごめんなさい。余りにもムラムラしていたもんでつい」
俺は手をウニョウニョさせて、まさに躍りタコのようになっていた。
女子高生は踵を返しどこかのCMのオファーが来るんじゃないかと思われる感じで、髪をながびかせながら俺の元から離れていった。
終わった。何も出来ないまま終わった。
ペンペン草を食べる日常からやっと解放されたと思ったが、そんな事は有り得ないよな。
次の日の電車に乗る前の俺は妙にソワソワしていた。それは僅かばかりの可能性だが、もしかしたらもしかしたら昨日と同じ車両に乗っている可能性があるかも知れないからだ。
『屋代駅屋代駅』
と録音した機械の声が俺の立っている駅名を伝えると、電車の中からはちらほらと人がまばらに出ていった。
空いたスペースに入ると昨日と同じ女子高生がその場所にいたのと、もう一人中年サラリーマンもいた。
俺に気付いた中年サラリーマンは勝ち誇ったような目線を送り、女子高生は中年サラリーマンの背中に隠れた。
なんだと···あんたら本当に付き合ってるの? 昨日のあれはまさかあれか。
「おい、お前昨日この女子高生を襲おうとしてたそうじゃねーか。おう」
中年サラリーマンは電車に乗っている人を味方につけるように、声のボリュームを落とさないで喋った。
「···いや···それは」
言葉を濁しながら喋ったら中年サラリーマンはそれを見逃さずに一気に畳み込んできた。
「痴漢ですよ! 痴漢!」
その声に反応して近くにいた人達だけではなく、この車両に乗っている人全員がこちらに注目した。
明らかに男女問わず殺意に満ちた目で俺を見ている。どうするって言うかやってないし。だから堂々としていればいいんだがもう遅いような雰囲気が漂ってるしな。
「やったろ?」
中年サラリーマンがトドメをさすかの様な一言を与えた。
「や···やってません」
「いややったね絶対。とにかく次の駅で降りてもらうよ」
本人がやってないって言ってるのに何でやった子供になってんだよ。しかも何か。お前武田信玄公じゃなくて警察か何かか。
周り中の目線は次の駅で絶対に出ろという雰囲気というか絶対に降りろよと感じだ。
つうか俺の方が出たいわ。嫌だわこんなレーザー光線当てられてる電車の中なんて。
『川中島駅川中島駅』
車掌が駅名を言ったら俺達三人は電車から外にでた。
何でまた川中島駅なんだよ。また合戦でもおっぱじめますかい。




