高速を超えた音速
空ってこんなにも綺麗だったのか。
さすがは武田信玄公と言った所か。歴史の通り俺は完膚なきまでに打ちのめされ、仰向けになっていた。
雲が一つのない晴天にヒラヒラとスカートが俺の視界に写った。
「クマのぱんつ」
「ちょっとどこ見てるんですか」
といいながら両手でスカートを押さえていた。
「あれ何でこんな所にいるの?」
俺はパンツを見ないように上半身を起こしながら喋った。
「私を助けてくれた人だしお礼位は言っとかないと思って後付けて来たんです」
「あーそうなんだ。でも早くしないと学校遅刻しちゃうんじゃないの?」
「別に大丈夫です。言った所で誰も私を待っていませんから」
女子高生は何やら浮かない表情をしていた。
「それよりもお仕事の時間は大丈夫何ですか?」
その言葉であっと慌てるように立ち上がったが身体中がきしみ、またその場に座り込んだ。
「今日仕事休みだな」
というか無理だ。立てねー。
仕事に行く所か今日この場所で野宿の可能性も充分に考えられるんだけど。
「それじゃあ私も横にいよ」
といいながらスカートを両手で持ち上げてペタリと体育座りをした。
「ちょ···え何? どうした?」
突然横に座るプラスため口になるで俺は999ダメージ受けた。
俺の残りヒットポイントは1。
可愛すぎるぞこの野郎。女子高生を前にして欲情している俺は端からみればかなり気持ち悪いと思う。
だがしょうがない可愛いのだから。
しかも胸には小さめのリボンが施しており、そのセーラー服姿を横目で見るとさらに3割増しになり俺のヒットポイントは0になった。
「どうしたんですか? 急に」
その声で俺は無意識に仰向けになっていた事に気付いた。
「何でもない。それよりも···」
って一体何を話せばいいんだよ。
リカとは喋れたがあれが高校生なのかも最終的に分からなかったしな。
「···それよりも?」
女子高生が上から俺を見下ろしていた。
「それよりも名前何て言うの? まだ聞いてなかったから」
俺にしちゃあいいアドリブが出たと、自画自賛したい位だ。
「名前はちょっと···まだ怖いので」
女子高生は顔を戻し俺の視界から消えた。
おいー。何でそこはダメ何だよ。教えてくれよ。別に何もしやしないよ···多分。
「そんじゃあ好きな人とかいるの?」
上体を起こして女子高生の表情を見ると明らかに暗くなっていた。
やべー。学校の事はタブーだった。話題ねーから言っちまったよ。
「いるよ」
いるんかーい。
しかもほんのり頬っぺが朱に染まってるやん。本気で恋してるやん。
「あーそうなんだ。めちゃくちゃ青春してていいね」
俺もしたかったな青春。青春とはかけ離れ過ぎていて、今はリア充している人を撃ち殺す為のスナイパーになってるがな。
「そ··~そんな事ないですよ」
絶対あるだろ。俺の目を見ないで視線をおとして喋っているのがいい証拠だよ。
「だったら尚更学校に行った方がいいんじゃないの?」
「だから今日はいいんですよ」
女子高生は俺の声を遮るようには話してきた。
「そうか。だいぶ体も良くなったから俺はそろそろ帰るよ」
立ち上がったらそこまで痛みもなく帰れるぶんまでは回復していた。
まったくあの中年サラリーマンも敵に塩を送って欲しい位だぜ。
女子高生を見ずに『川中島駅』に向かっていたら声をかけられた。
「あのー私今日暇だから一緒に帰ってもいいですか?」
これは神のお告げか。それともノストラダムスの大予言か。とにかく今飛んでもない言葉を発していたのが聞こえた。
「今何て言った?」
「時間があればですけど」
俺は無意識に高速で首を上下に動かしていた。いや高速ではないな、音速だ。




