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第2章 ★ 審判の星(8)カウントダウン4-②

(8)終末へのカウントダウン、あと4日(Part2)


 ジーンは、コックピットのキャプテンシートに腰を下ろすと、昨日の悪夢が頭をよぎり、得体の知れない胸騒ぎをまた感じた。予知能力は天体消滅の惨状を、夜毎の夢に描いていたのだ。

(昨夜の悪夢はいったい何なんだ。余りにもリアルで、恐ろしかった。爆発した星が惑星アーロンにそっくりだ。)


 いつまで嘆いていても、時は待ってはくれない。ジーンは、いつでも出航できるように、宇宙船の準備に入ることにした。クルー全員をスペースポートへ召集した。


「なあー、みんな。心の準備はいいか? このシルバーファルコムを信じて、宇宙に飛び出すんだ。まだテスト飛行だけで、未知の宇宙船だ。不安な奴は、遠慮なく言ってくれ! 無理に……とは言わんから」

 ジーンは、宇宙船に命を預ける覚悟の程を、クルー達に確かめた。


「チームSSSCは、運命共同体じゃなかったのか? この期に及んで何を言う」

 真っ先に反応したのは、普段は無口なサームであった。


「その通りだ。キャプテン‼」

 クルー全員が声を揃えた。


「よーし、分かった! ありがとうみんな。それでは……、目指すは、宇宙!」


「惑星の人達全員は無理だけど、まだ一緒に行ける人がいないか、確認しましょう」

 冷静なナビゲーターから、優しさ溢れる一言が飛び出した。


「そうだね、さすがはナビゲーター。船の定員は十人だから、一緒に行ける人がいたら声をかけよう。……そうだ、ウィーナはどうだ? ビーオ」


「是非お願い! ボクの助手として、医療班を手伝って貰えたら、ありがたいんだ」

 ビーオは、少し照れくさそうだが、直ぐに答えた。


「それは名案だ。助手だって? ビーオ。……それだけじゃー、ないもんな? お前」

 ジーンは苦笑いを必死で抑えていた。


 早速迎えに行ってくれと、ジーンが頼もうとしたが、ビーオの姿は、既に無かった。喜び勇んで一路病院へと向かっていた。


 父親と二人暮らしだったウィーナは、アラン博士が危篤状態に陥ってから、ずっと病院へ詰めていたのだ。


 つづいてジーンは、ミカリーナのことを気遣った。

「そうだ、王様を是非お誘いしよう、ミーカ? それと、妹さんのノベリーナも?」


「ありがとう。とても有り難いお誘いです。ノベリーナは来てくれると思いますが、父はどうか? 昔気質ですから、国王の名において、この地を離れることは……」

 ミカリーナの瞳が少し潤んだ。


「なるほど、その通りかも知れない。でも、ここは無理を承知で、声を掛けるべきだよ。大事な肉親なんだから……。オイラなんか、そんな肉親など……」

 ミカリーナの強い直感力は、ジーンの少ない言葉から、その心中が読み取れた。


「ゴメンなさい。ジーンの気持ち……。では明日、ご一緒に?」

 ミカリーナの瞳は潤いを増した。


「勿論だよ、ミーカ。明朝一番に、王宮へ向かおう」

「ハイ!」ミカリーナは、二つ返事で笑みを浮かべた。


「さあ! これで決まりだ。点検開始!」

 ジーンは手筒を打つと、歯切れよく号令を掛けた。


「ラジャー‼」全員の声が一つに重なり合って船内に響き渡った。



☆そのころビーオは、ウィーナのいる病院に

――――――――――――――――――――

 急患でも入ったのだろうか、夜間の病院がやや慌ただしかった。

 ビーオは、少し不安を感じながら、アラン博士の病室の入口に立った。


 最初にビーオの目に映ったものは、肩を落としたウィーナの後ろ姿。言葉を交わすより先に、彼女の深い悲しみが伝わってきた。ウィーナの奥には、アラン博士が静かに横たわっていた。


 惑星中央病院の倫理規定では、引き取り確認ができない遺体は、冷凍保存される決まりがあった。博士の顔には白い布が掛けられ、その準備を医師たちが行っていた。ウィーナとは会話ができない医師たちは、とりあえず保存措置をとっていたのだ。


 ビーオは、テレパシーでコンタクトを取った。宇宙船のスタッフに、ウィーナを誘いたいことを告げた。

 彼女は、嬉しい誘いだが一つ願いがあると言う。それは、父も一緒に宇宙に連れて行って欲しいという。アラン博士には幼い頃から宇宙旅行の夢があった。冷たくなってしまっても、父に夢を叶えてあげたいという健気な乙女心だ。


 ビーオは、彼女のそんな気持ちを益々愛しく思った。

「何とかしなくては。でも今の生物学の力では、奇蹟でも起こらない限り、命は取り戻せない。……ボクにできることと言えば、……うーん分からない」


 ビーオは、思い悩んだ末、遺体引き取りの条件を医師たちに尋ねてみた。

 主任医師の話によると、特例として冷凍保存が出来る低温設備があれば引き取り可能だという。早速ビーオは、シルバーファルコム号に連絡を入れた。


 事情を聞いたジーンがクルー達に相談をすると、宇宙船はさすがに惑星一の航空宇宙工学エンジニアの設計だ。将来の恒星間飛行に備えて、人工冬眠装置として『低温カプセル』が設置してあった。それを使えば問題ないと、サームは即座に答えを出した。


 引き取り条件の問題は、最短時間にして最善の方法で解決された。

 この後ウィーナは、冷たくなってしまった父をお供に、宇宙船クルーの一員となった。

 

 


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