表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/33

第2章 ★ 審判の星(7)カウントダウン4-①

(7)終末へのカウントダウン、あと4日(Part1)


Countdown, 4 days left

 彗星は日増しにその姿を顕わにした。誰が見ても一目瞭然、星座の顔とはまるで違う。その大きさも輝きも。全天で衛星セレスに次ぐ明るさは、夜空の主役に伸し上がった。


(うううーっ! ミーカ、あの閃光、見ちゃダメだぁー! 急げー……。)

 今朝もジーンは、悪夢にうなされていた。


 もう映画のワンシーンなどと言うレベルではない。ジーンは奇妙な手応えまで感じていた。大爆発を起こすのは氷に覆われた純白の星。傍には青白い悪魔のマントをひるがえす天体が。両者は、衝突寸前のところまで大接近……。夢はここで途切れ、日増しにリアルになって行く。


「これは、ただの夢じゃない!」

 天才遺伝子は確信した。


 この日の街頭運動を進める中で、人々の危機感の希薄さを感じ、ジーンはずっと考えていた。やはり国民はマインドコントロールされている。最早これは、洗脳だ。


 平和維持という謳い文句の隠れ蓑で、全てが政府に管理されている。人々の危機感までも麻酔にかけられている。残念なことだがこれ以上呼び掛けても無駄だ。ここまで来ては自分の行動は自己責任、個人の判断に任せるしかない。


 あれほど巨大な彗星は見たことがない。おそらく人間の力では太刀打ちできない。考えられる最善の方法を取るしかないとジーンは悟った。

 大爆発の悪夢に、巨大彗星の大接近。信じたくはないが、惑星アーロンに重大危機が迫っているのだ。ひとまずこの星を離れるべきだ。

 ジーンは、新型宇宙船に運命を託すしかないと結論付けた。



☆その日の夕方

―――――――

 ジーンは、ミカリーナを誘いサンライズ・スペースポートに向かった。SPODを飛ばし、ものの数分程度で宇宙港に到着した。するとそこには、シルバーファルコム号の勇姿が夕闇に浮かんでいた。


 辺りは黄昏時特有の灰色闇に包まれているのに、宇宙船は銀白色に光り輝いていた。まるで宇宙船が自ら光を放ち、宇宙へといざなっているように思える。それは正に、命を宿した怪物『宇宙ファルコン』の勇姿であった。


 ジーンは、シルバーファルコム号の勇姿をSPODから眺めながら、自分の考えをミカリーナに伝えると。なぜか彼女は悲しげな目をして黙ってしまった。

 いつもと違うミカリーナの態度が、ジーンはひどく気になった。


「どうかした? ミーカ。オイラ、何か、気に障ることでも?」

 まるで腫れ物にでも触るかのように慎重に尋ねた。だが、ミカリーナは何も答えない。沈黙が迷える二人を、夕闇の中に暫らく閉じ込めた。


 ジーンは気が短くせっかちなところがある。何も喋らない彼女に、とうとう堪りかねた。

「ホント、どうしたんだ、ミカリーナ? 何も言わない、そんな君は、嫌いだ?」


 今まで喪に服していたように、沈黙を続けていたミカリーナの口元が小さく動いた。

「ジーン。わたくし達、惑星を見捨てるの? この星の人達は救えないの? そして、わたくし達だけで、逃げ出すの? そして、そして……」

 彼女の声は弱々しく沈み、ジーンの胸を掌でパタパタと叩きながら涙した。


「ゴメンよ! ミーカ。嫌いだなんて言って。こんなにも、惑星の人達のことを思い、悩んでいたなんて……。気づかなくて、ホントごめん」

 ジーンは、ミカリーナの肩を両手で優しく包み慰めた。


「(ジーン)……」声にならないミカリーナは俯いたままだ。


「辛いのは、オイラだって同じだよ。でも、あの巨大さ! 今の科学力では? 大宇宙では、人間の力など、無に等しい。オイラだって、できるなら救いたいさ」


「じゃ、頑張ってみてよ。救えるかどうか、やってみましょう。こんなわたくしでも、役に立てるなら、何でもやるわ。ジーン、ジーン、ジー(ン)」

 ミカリーナは、ジーンの胸に頬を埋めると、溢れ出る涙で訴えた。


 まるで少女のように心を痛める彼女を、ジーンは、心から愛しい宝物だと思った。その宝物を抱き寄せながら、冷たい夜空を見上げた。

 そこには色褪せた星たちが蒼白く瞬き、いつもの煌く星空とは明らかに違う。不気味に輝く巨大彗星に侵され、ミカリーナの悲しみを投影したかのような、凍えた夜空が広がっていた。


「あれを見てごらん。夜空を覆い尽す、悪魔の輝きを……」

 ジーンは、悩める愛しい宝物を諭しはじめた。


 ミカリーナは、大きな瞳を(うる)ませながら、無言でその悪魔を睨みつづけていた。


「あの巨大さでは、どんな強力なプラズマ砲だって、新開発の反粒子ビームだって、歯が立たない。本当に無念だけど。ごめんよ! 本当にごめんよ、ミーカ!」


 ジーンは、人間の無力さを改めて痛感した。ミカリーナの慰め役として堪えていたジーンであったが、堰き止めていた涙のダムは、とうとう決壊してしまった。

 瞳を潤おした二人は、頬と頬をぴったりと寄せ合って、巨大な悪魔を睨みつづけるのだった。


       * * *

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ