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第2章 ★ 審判の星(5)カウントダウン6

(5)終末へのカウントダウン、あと6日


Countdown, 6 days left

 首都ニュールウトに戻ったジーンは、惑星の重大危機という事実を政府に進言しようと思った。翌朝、ミカリーナと共に大統領公邸を訪ねた。


「いらっしゃい、ジーニアウス様、お元気でしたか?」

 義母の仰々しい社交辞令が出迎えた。


「大統領に会わせて欲しい。緊急の一大事だ」

 ジーンは、いつもの素っ気ない態度を取る。


 ジーンが接見を迫ると、義母のミレーニアはいつもの気取り口調で続けた。

「お父様は、奥でお休みですの。大国の大統領ですから、毎日お疲れですのよ。あと一時間ほどで、連邦会議に向かわれますので、その時にお会いになられて」

「……でも急ぎです」


「先日も、慌ただしくお帰りになってぇ、今日は、ゆっくりしておいきなさいな……」

 義母は、ジーンの返答を無視するかのように、マイペースで話を進める。


「さあ、中にお入りになってお茶でもどうぞ。……それに今日は、お噂のミカリーナ様と、仲良くお出ましとは、お父様もきっとお喜びになりますわ」


「突然お伺いして、すみません。どうかお気遣いなく」

 ジーンの後ろに控えて、困惑した様子のミカリーナが、遠慮がちに挨拶を入れた。


「まあ、ミカリーナ様は、とても控え目な方ね。遠慮なさらないで、さあ、中へどうぞ。まずは近況報告でも、母であるこのわらわにも、お聞かせくださいな?」

 いつも素っ気ないジーンの態度に対して、義母は皮肉交じりに答えた。


 自分に対する態度が何時もよそよそしく、幾つになっても子ども扱いをする義母を、ジーンは好きではなかった。そんな義母に対して、必要最小限の言葉を伝えた。


「分かりました。一時間後ですね? 大統領には、そのころ議事堂で面会します。……では、失礼いたします。母上」

 ジーンは、ミカリーナの手を引くと、足早に大統領公邸を立ち去った。



 二人は、動く歩道に乗って議事堂へと向かった。人が走るより速い動く歩道からの眺めは、街並みが流れるように去って行く。


 動く歩道に乗ると間もなく、ミカリーナがそっとジーンの手を取り尋ねた。

「ジーン、お母様に、いつもああなの? もう少し優しく答えてあげても?」


「いいんだ。あの人の心は、少しも傷ついちゃいないから。気にしないで! あの人の言葉は、いつもの社交辞令だから。あの人にとって、オイラはただのお荷物さ」

 ミカリーナは、返す言葉もなかった。


 やがて二人は、惑星連邦共和国議会の議事堂前に到着した。

 正面入口前の広場では、惑星アーロンをそのまま模ったモニュメントが二人を出迎えた。球体の表面を撫でるようにアクアブルーの水が流れ、周りには無数の水柱が噴き出している。

 二人は噴水を眺めながら待つことにした。


 昨年新設された議事堂は、円錐形に広がった屋根が巨大な翼を広げ、眩い黄金色の輝きを放っていた。まさに時の権力の象徴のようだ。


 暫らくすると、議事堂の前にピカピカのサテンホワイトのリムジンが到着した。ジーンが公邸を訪問した時刻から、きっかり一時間後だった。


 後部ドアが開くと、白一色に正装した制服姿のスタイン大統領が現れた。その制服の胸には沢山の勲章が輝いている。


「暫らくだな、ジーニアウス。無事であったか? 昨日まで何処へ逃れていたのだ?」

 スタインは開口一番、太く低い声でジーンをたしなめた。

「うむ……」ジーンは声が出せなかった。


「この前のPLCCの件で、そなたを逮捕し尋問するはずだったのだが、防衛隊主将のゴウドンからの進言もあり、今回だけは逮捕が保留になった」

「あの主将が?」


「もちろん、大統領の息子ということで、補佐官たちも大目に見てくれてな。有り難く思うがよい。立派な父親をもって、そのお陰の特権であるぞ」


 ジーンは返す言葉を喪失した。

 呆れて言葉もないとはこのこと。怒りとか反抗心とか、そんなものはとうに超えていた。

 ジーンは、心の奥でゴウドンに感謝した。

(ありがとう! 主将。防衛隊は、やっぱり市民の味方だ。)


「今日は政府にお願いがあり、参りました。ハリー博士の説は真実。重大事です! 巨大な彗星が、この星目掛けて接近しています。国民に一刻も早く、詳しい報道を」

 多言は不要とばかりに、ジーンは用件だけを簡潔に伝えた。


「政府としては、科学庁の調査が終わるまで、報道する訳にはゆかぬ。いたずらに国民の不安を煽って、大勢がパニックにでも陥ったら、それこそ政府の信用は失墜だ」

 スタインは、我が子を睨むと、荒い息と冷ややかな口調で答えた。


「ええっ? 信用の問題?」

「勿論、政治とは支持率だからな。昔から、触らぬ神に祟りなしと言うではないか。今騒がなくとも時機に分かる。まだその時ではないのだよ。分かるであろう、賢明なる我が息子よ」

 スタインの冷ややかな口調は、輪をかけて冷たく感じた。


 ジーンは返す言葉もなく、怒りと言うよりも、大きな嘆きと深い悲しみを覚えるのであった。

(政府など当てにしたのが間違いだ。残された時間は僅かだというのに、貴重な時間を無駄にした。)


 ジーンとミカリーナは、無言で議事堂から立ち去った。このときジーンは、共和国政府と大統領の父に対して、心の底から完全に失望した。

 

 


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