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第1章 ★ 科学の星(12)自由への闘い②

(12)自由への闘い(Part2)


 ジーン達は、ひとまずPLCCを引き揚げて、アラン博士の容体を見舞うことにした。


 チームSSSCがセンターの出口に差しかかると、メタリックなガングレーの制服に身を包む、体格のいい男たちが十人ほど、出口を塞いでいた。


「このレジスタンスども、ここから一歩も出さんぞ!」

 ゴウドンの太く低い声が轟いた。極太の腕を無理やり組んだその姿は、まさに仁王立ち。


 緊急連絡を受けた惑星防衛隊が駆けつけたのだ。怖くなって逃げ出したものと思われた受付係は、強かに時間を稼ぎ連絡を取っていた。


「そこを退いてくれ! 我われは、PLCCに危害を加えに来たんじゃない」

 ジーンは、毅然として立ち向かった。


「何を言う、政府に歯向かうレジスタンスどもが」

 ゴウドンの太い声がトーンを上げた。


「今のPLCCの実態は、大変なことになっている。奥の所長を見れば分かる。詳しい話をしている時間はない。緊急だ……(退いてくれ)」

 言葉も終わらぬうちに、ゴウドンがジーンの肩を掴もうとした。


「何をするぅ?」

 ジーンはひらりと身をかわした。その身のこなしは、そよ風に舞う蝶のように、華麗なる軽やかさ。


 ジーンは、抜群の運動神経と高い身体能力があると思われたが。運動能力に関しては、片腕欠損のハンデキャップもあり、せいぜい人並みだ。

 優れた身のこなしの元は、持ち前の予知能力からくる鋭い直観力を有する頭脳に由る。それは何よりも、相手の動きをかなりの確率で予測できる能力なのである。


 ハンデを持つ身体とは思えぬ俊敏なるジーンの動きに、ゴウドンの士気も上がった。

 ゴウドンの次の言葉が、二人の闘争心に火をつけた。


「シダーヒル殿。なかなかできますな? 相手にとって不足はない。二人だけの、シングルマッチと行きましょう。どちらかが『ギブアップ』と言うまで」

「おう! 望むところだ」


「周りは、絶対手出しをするな! これは男の名誉に懸けたタイマン勝負だ。VIPといえども、手抜きは致しませんぞ。さあー」


 この後、二人だけの素手と素手の勝負が続いた。

 防衛隊は非常事態に備えて、神経を麻痺させる携帯用フェイザーガンを所持している。しかし、ここはノアーの教えを守る絶対平和主義の惑星。武術に猛る精鋭部隊は、そんな武器など使う筈もない。二人の勝負は技と技との戦い。まさに格闘技であった。


 剛腕のゴウドンの体力は、惑星でもトップクラスの存在だが。そんな剛力に対するジーンの動きには、まず無駄がない。それはてこの原理など、力学の基本原理を忠実に活かし、力のモーメントの効果まで計算している。


 10分ほど過ぎても決着が着かない。ジーンの軽やかな身のこなしに、豪腕のゴウドンも手を焼いた。周りの者たちは声援を送るどころか、曲芸のような二人の立ち居振る舞いに、声も出ず見惚れていた。


 勝負が始まってから既に20分が経過した。『柔よく剛を制す』という(いにしえ)からの諺があるが、とうとうゴウドンが口を割った。


「参りました。シダーヒル殿。ハーッ、ハーッ、ハー。話をお聞かせくだされ! フー」


 ジーンのしなやかな身のこなしについて行けず、体格といい腕力といいジーンの倍もあるゴウドンだが、先に音を上げた。一方ジーンは、息の乱れもなく答えた。


「アーン、さっきの所長を持って来てくれ」

「ハイ!」アーンは二つ返事で向かった。


「ヨイショ、ヨイショ、ヨイショと。……こいつホントに重いんだから、まったく機械人間め。ジーン、ここに置くよ。フウー」


「ありがとう! アーン」

 ジーンは、横たわるボルグの惨めな姿を防衛隊の前に曝した。


 ゴウドン主将はもとより後ろに控えていた隊員たちは、アンドロイドの配線むき出しの腕を覗き込んで唖然とした。


「ええーっ、これが所長なのか? いつも偉そうに、PLCCを仕切っていたのが、機械だったなんて……。政府は機械に管理させていたのか。まったくひどい話だ」


 見かけによらず気の優しいゴウドンでも、その表情には怒りが見え隠れしていた。


「どうだ、分かっただろう? これが今の、PLCCの実態だ。我われは、これを改革したい。どうか力を貸してくれ、ゴウドン主将」


「うんむ……」ゴウドンは顔を歪め苦虫を噛んだ。


「惑星防衛隊の役目は、この星の平和を守ることだろう? 市民の安全を考えるのが第一だよな? 今日はもう時間がない。大事な急用だ。ここから早く出してくれ」


「先程から、大事な用とは何ですか? 気になります。遠慮なくお話しを」

 ゴウドンは、その風貌に似合わず極太の眉を下げ神妙な面持ちで尋ねた。


 ジーンは、また時間を気にしていたが、ここは防衛隊としての面目もあるだろうし、今のPLCCの実情を知らせる好機と思い、説明をすることにした。


「実は、ここにいるウィーナのお父さん、研究主任のDr.Alanが急病なんだ。だからすぐにその容体を確かめたくて、病院へ見舞うところさ」

「ええっ? あの元気なアラン博士が?」


「それに、博士の急病の原因は、こいつのせいなんだ……」

 惨めに横たわる配線むき出しのボルグの腕を、スペースブーツのつま先で軽く突きながらジーンは続けた。


「このアンドロイドの奴、博士に、黙って薬剤を大量に与えてしまった。可哀そうに何も知らない博士は、その大量摂取の副作用で、今でも昏睡状態だとか?」

「それは、酷い話だ」


「所長は、政府の命令でやったらしい? おそらく人口抑制策が絡んだ裏工作だ。そうなると、博士は病気というより、薬害で倒れたことになる」


「それは益々酷い!」

 強面のゴウドンは、説明を聞けば聞くほど怒りを顕わにした。それは鬼の形相だ。


「これで分かったかい? もういいだろう」

 ジーンはまた時間を気にした。


「ハイ! 承知致しました。このゴウドンにお任せください。惑星防衛隊主将の名に掛けて、あなた達の安全を守ります。さあ! 行ってください」

 ゴウドンは頬を緩めて、いつものお人好しな奴に戻った。


「ありがとう‼ ゴウドン主将」

 ジーン達は声を揃えた。


「惑星防衛隊。ホンマ、市民の味方やなぁ!」

 出口に差しかかったところで、ローンの言葉がトリを飾った。


 不意を突かれた感の惑星防衛隊だったが、いつの間にかジーン達の思いを汲み取っていた。


 この後ジーン達は、アラン博士の容体を見舞うため、惑星中央病院を訪れた。


 ニュールウトの南西、閑静な郊外に建てられた病院の建物は、ピラミッド型だ。このピラミッド型には、生命力を活性化させるピラミッドパワーなる神秘のエネルギーがあるという。


 惑星アーロンでは『ピラミッド学』なる学問が研究されている。サイエンス分野の一つで、医学生理学、物理学、そして天文学をも融合し、それらを超越したものだという。


 集中治療室の中にはベッドに横たわるアラン博士がいた。ガラス越しであるため確かなことは分からないが、どう見ても病状は回復の見込みはなさそうだった。

 担当医に尋ねても、「今のところ何とも……。経過観察中です」の一言。

 この日は面会を許可されず、ジーン達は病院を去った。


 帰り際、ウィーナの気持ちを察したビーオは優しく手を差し伸べた。

◆テレパシーでのコンタクト◆

《ウィーナ、ボクらと一緒に来ないか? 君のことが、とっても心配なんだ。一人にしては行けないよ!》


 ウィーナは、いつの間にかビーオと手を繋ぎ、俯いたままついて来た。テレパシーという特別なコミュニケーションの方法は、普通の音声会話よりも親密で、心の深部で交流があるようだ。二人はすでに心と心が通い合い、互いを慕うようになっていた。


 病院を後にしたジーン達は、『動く歩道』に乗った。普通の人間が走るより速い移動手段で、共和国議会議事堂完成を記念して新設された。首都の幹線道路沿いに網目状に設置され、それまでのモノレールに代わる都市交通の中核を担う。あくまでも歩道であるから、自由に好きなところで乗り降りできる便利な交通システムなのだ。


 ジーン達は、フォーレストの緑地帯を抜け首都の中心街へ向かった。すると、ビル街で突然あるものが目に留まった。ニュールウトの中央に建てられた紡錘形の青白いシンボルタワー『惑星センタービル』にそれはあった。


 ビルの壁面に張られた巨大スクリーンには、デカデカと映し出された臨時ニュースの大字幕が。ジーン達が目撃したものは、予想もしない一大事件であった。


 【天文学者のハリー博士の発表によると、本日未明・・・】

 

 

 

 


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