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第1章 ★ 科学の星(11)自由への闘い①

(11)自由への闘い(Part1)


 チームSSSCはデモの最終段階として政府の重要施設へ乗り込んだ。ドーム都市の中心部には、アンモナイトの殻のように渦を巻いたアイボリーホワイトの建物がある。ドームの丸天井の頂点に呼応するように聳え立つPLCCだ。


 雨上がりの虹のようなアーチ型に、ぽっかり口を開けた正面入口で、ジーンは正々堂々と受付窓口に申し出た。

「所長に面会したい! 確か、ボルグ所長だったな? 取り次いで欲しい」


 ジーンの気迫に押されたのか、受付係は恐る恐るインターホンの受話器を取った。

「所長に面会のお客様です。正面入口までお願いします。……少々お待ちください」


 数分後、ボルグ(Borg)所長はのっしのっしと肩を揺らしながら現れた。銀色でピカピカのスーツに、頭にはフルフェイスのヘルメットで、表情は捉えることができない。


「皆様ようこそ。当センターへ。今日は、どのようなご用件ですか? このような大勢で来られたからには……、何か重大な問題でも?」


 所長は感情のない単調な声で喋り出した。その口調は周到に訓練された営業マンのようで、如何にもマニュアル的な対応だ。


 ジーン達は、一斉に抗議文を、叫んだ。

「PLCCはすぐに廃止を!」

「我われ人間はモルモットではない!」

「人々に自由を!」

「国民は政府の奴隷じゃない!」

「俺等はロボットじゃない!」

「人間は生物本来の生き方を……」


 大勢の怒号の前に、ボルグ所長の様子が急変する。

「イホウデス、アナタタチノコウイハ、マチガッテイマス。タイキョシナサイ……」


 カタコトの喋り方をするボルグは、声のトーンが益々上がった。

「キソクデス、シタガワナケレバ、ボウエイタイホンブニ、レンラクスル」


 ボルグは、ロボットのように身体を左右に揺らしはじめた。

 アーンがいきなりボルグの腕を掴み引き寄せた。幼少の頃から様々なスポーツで鍛えたアーンの腕力は凄い。何とボルグの太い右腕がもぎ取れてしまった。


 すると驚くなかれ、切り口から出てきたものは、真っ赤な血でも乳白色の骨でもなかった。コンピュータのネットワーク・ケーブルのような配線が、パチパチと音を立てている。


 ボルグは痛がる様子も見せず、更に変なカタコトで喋りだした。

「ヤメテクダサウイ、アノタタチハ、イホウラ。ヤメノケレバ、ボウヘイタイヲ、ヨビマス。ヨービマス。ヨウビムス。ヨ・ウ・ビ、ム……」


 徐々に声のトーンも下がり、とうとうフリーズする始末。ボルグ所長は、何とアンドロイドだったのだ。


「こんな機械、話にならない。研究主任、呼んでくれ!」

「はい! すぐに博士を呼んで参ります」

 蛇に睨まれた蛙のようになっていた受付係が、ここが勝機とばかりに、博士を呼びに研究室へと走った。


 しかし、なかなか博士は現れない。受付係は逃げてしまったのか、それとも博士が逃げたのか。10分過ぎても出てくる様子はない。


「キャプテン、ワテが見に行ってきまっせ」

 痺れを切らしたローンが、急に研究室に向かおうとすると。


「ちょっと待って……」

 アーンが持ち前の遠隔透視の超能力を生かすようだ。


「今、廊下の奥を覗いてみるね。……誰か、右奥の通路からやって来る。まだよく見えないけど、背は低く髪の毛が長い人よ」


 間もなくして、正面通路の奥から近づく小柄な人影が、ジーンにも分かった。

 そして現れたのは可憐な美少女だった。少女には声がなく表情の変化だけが分かる。何だか狐につままれたようで、ジーンたちはお互いの顔を見合わせた。


 そんな中で、声は聞こえないが、ビーオが少女と向き合い何かを喋っている様子だ。

◆テレパシーでのコンタクト◆

《研究主任をお呼びということですが。あいにく父は、急病で倒れて休んでおります。あたしはウィーナ、ここの研究員です。このあたしで分かることでしたら、受け賜ります。あたしは声が出せないので、テレパシーでお話しします。》


「どうした? ビーオ。何をやってる」

 ジーンは、背後からビーオの肩を叩いた。


「キャプテン、今このPLCCは大変です。重大な危機を迎えているようです。博士が急病になって、娘のウィーナさんも困り果てていたところです」

 振り向いたビーオは、神妙な面持ちで答えた。


 惑星の人々の極一部には、テレパシーでの会話ができる超能力者がいる。ウィーナ(Wena)とビーオはその数少ない超能力の持ち主だった。

 ウィーナは、PLCCの研究員として、父アラン博士の下で働き始めた若き生命工学研究者。彼女は幼い頃の事故が原因で声が出せない障害を持っていた。


 心優しいミカリーナは、ウィーナに近寄るとカウンセラーらしく問い掛けた。

「ウィーナ、心配しなくてもいいのよ。わたくし達は、危害を加えることはないから。あなたの、お役に立ちたいの。詳しい事情を話して? どんな事でも遠慮なく」


 ビーオがミカリーナの言葉をテレパシーで伝えた。

◆テレパシーでのコンタクト◆

《ウィーナ、ボクらのことなら、怖がらなくてもいいよ。君たちのことが心配で、役に立ちたいから聞いているんだ。センターの現在の状況を、詳しく教えてくれないか? そして、お父様の容体と、急病の原因についても。》


 ウィーナの目は赤くなり、涙を滲ませながらぽつりぽつりと説明を始めた。


 父アラン博士の急病とは、生命制御の投与薬剤の大量摂取が原因で、意識不明の植物状態にある。博士は、PLCCで行っているホルモン抑制剤の使用に疑問を持つ人間の一人で、薬学的な方法に代わるものを研究していた。


 そんな折、政府が抑制剤の使用量を更に増やすよう圧力をかけてきた。それは新政府の人口抑制策はエスカレートし、現在の惑星総人口を、近い将来半分に減らす計画を打ち出した。


 博士は、抑制剤の多量摂取に関する人体実験を自ら行い、その危険性を訴えていた。その博士が誤って大量摂取した理由は、ボルグ所長が政府の圧力に負け、通常使用する薬品濃度の二倍のものを博士に黙って用意したからだ。


 ボルグの考えは次の通りだった。

 人口を半分にするのだから、薬品の摂取量は逆に2倍の量が必要。

 2倍の量では投与時間も2倍になるから、現行の収容定員では間に合わない。

 同量で薬用効果を2倍にするためには、薬品濃度を2倍にすればよい。

 よって、薬品量も投与時間も今まで通りで済む。

 といった具合に、如何にも機械的で短絡な発想だ。


 ボルグの考えは当然の事と言ってしまえば然り、その正体はアンドロイドなのだ。悲しきかな、機械人間には、所詮、機械的にしか考えられないのだろう。


       * * *

 

 


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