「父の寝顔」
家にいることが多くなった父。
比例して、母の小言が増えた。
いつもの夜。
晩酌を終えた父が、いつものように居間を陣取り、布団を敷き始める。
いつも、1日の最後に言うことは、ただ一言。
「寝る」
あおむけで1分もしないうちに眠りにつき、いびきをかき始める。
時折、フゴッと息が詰まり、真上に向けた顔が、眉をしかめ、険しい表情に変わる。
寝返りを打つと、何やら口をモグモグさせている。
スゥー、と息が静まり、顔が再びおだやかな表情になる。
母曰く、その表情、振舞いの1つ1つが腹立たしい。
しかし、その1瞬1瞬は、普段の父とは別人だ。
何の夢を見てるかわからないけれど、今日も、お疲れさん。
ちょっとした1瞬1瞬を収め、文字に固定し、1つ1つ残す。
難しいね