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~誰かのヒーロー~

週一更新してます。

アドバイスや、ご指摘等よろしくお願いします!

ではごゆっくり、

 そこから数日、何もせずに時間を送った。

 何もする気が起きなかった。

 ただ食べて寝るを延々と繰り返した。

 野外でレベルアップなんてする気もないし、剣術の修行なんかもしたくなかった。

 本当に、何もしたくなかった。


 そんな堕落した生活をしてしばらく


コンコンコン、


 誰かがドアをノックしている。いつもの清掃だろうと思い、ドアを開けると例のイケメン青年がいた。


「ジュ、ジュール?どうしてここに? 」


「いやあ、ツバサさんたちが一向に帰ってこないから、迎えに来ちゃいました、あはははは 」


 いや、そんな仲良かったか?


「なにかあったんですか? 」



「いや、特には何も。ちょっと長めの旅行みたいなもんだ!すぐ帰るから気にすんなって! 」




「嘘ですよね 」



 ジュールの鋭い声が胸に刺さる。いつもとは違う雰囲気が伝わってくる。真剣な表情でこちらを見つめている。その眼差しが痛かった。逃げたかった。


な、なんで……


なんで分かるんだよ…………



「話してくれませんか?きっと力になりますよ 」


 いつもの顔でジュールは微笑んだ。


あ、もうだめだ………………


 彼のいつもの柔らかい笑みは今まで我慢してきたものを吐き出させてくれた。自然と涙が溢れ出た。

 高校生にもなってこんなぐちゃぐちゃに泣くだなんて思っていなかった。恥ずかしかった。でも涙はごく自然に、まるで赤子に戻ったように流れ出た。


「大丈夫ですよ。落ち着いてからでいいですから 」


 俺は全てを話した。今までの辛かったこと、我慢していたことを全て吐き出した。自分の無力さも、情けなさも全て話した。

 俺が話している間、ジュールは黙って優しい笑顔で聞いてくれた。


「俺が……弱いから……誰も助けられないんだ…… 」


 全てを打ち明けた。なんだかスッキリした。話すだけでこんなに楽になるとは思っていなかった。


「辛かったですよね……でも、ツバサさんは弱くなんてないです!! 」


「弱いんだよ……誰も助けられない。誰の役にも立てない。ただ生きてるだけの弱虫なんだよ…… 」


「だって、この前街を救ってくれたじゃないですか。あんな魔法見た事ないですよ!あの時のツバサさん、すごくかっこよかった。だから僕も、あんなふうになりたいって思ったんです。自分の力で人々を救いたいって。ツバサさんは僕のヒーローなんですよ!!! 」


「あれは……俺の力でもなんでもないんだよ……

この世界に生まれて、ただ運良く強いスキルが貰えただけ。あれは……俺の力じゃないんだ……ごめんよ…… 」


 ジュールには申し訳ない気持ちでいっぱいだった。俺の事をヒーローのように思ってくれてたなんて思ってもみなかった。

 同時に、ジュールの期待を裏切ってしまった罪悪感が襲ってきた。このまま失望されるのかな……


「違います!僕はあの魔法に憧れたんじゃありません!翼さんの"勇気"に憧れたんです!あの状況で、あんなでかいモンスターに立ち向かえる人なんてそうそういません!だからあの時、こんな人になりたいって思ったんです! 」


 正直、驚いた。みんな俺のスキルを褒めていた。

 宴会の時も、

「あの魔法凄かったよ! 」

 とか、

「あの魔法どうやったの?! 」

 とか、俺のスキルだけを見ていた。実際、スキルでモンスターを倒したのだから、そうなるのも仕方ないのかもしれない。

 でも、俺自身を見てくれる人は、ジュールが初めてだった。俺のスキルだけでなく、俺自身の能力も見てくれるやつなんてこいつと親父ぐらいだろう。

 なんだか、それが嬉しかった。

 認められた気がした。この世界に居てもいいんだって思えた。心の中のわだかまりがすうっとなくなっていった。

なんでこんなにも彼は、俺を泣かせに来るんだろう…………


 ここ数日の虚無感はすっかり無くなっていた。


「ありがとう……ありがとう、ジュール 」


「どういたしまして」


 澄み切った笑顔だ。


 こんどこそ、俺にできることが分かった。

 幸運にも自分には仲間がいる。やれることはやってみよう。



 それから数日、町での聞き込みと、フィールドでのレベルアップに時間を費やした。

 聞き込みは、マヤの悪行や悪い噂がないか聞くものだった。

 レベルアップは順調に進んだ。なにせ最強クラスのスキルをもっているから、親父と協力して簡単にレベルを上げることが出来た。


-----------------------


Level UP!


125→126



-----------------------


「ふぅー、結構堪えるなあ 」


「ちょっと休むか 」


 俺と親父は、近場の木の下に座った。


「しっかしこの剣よく出来てるよなあ 」


 自分のレベルアップのために、武器を買った。

 自分はロングソード、親父はレイピアを買った。


「すげえ軽いし、なんか綺麗だよなあ 」


 親父がうっとりと自分のレイピアを眺める。

その姿で言われるとなんだか様になる。


「さすが鍛治の町だよなあ 」


 今頃、アナトリスさんは聞き込みをしているだろうか。3人で交代しながらレベルアップと聞き込みを繰り返している。だが、聞き込みが難航していて、なかなか有益な情報が出てこない。

 今日こそなにか情報があればいいが。



~その日の夜~



「アナトリスさん遅いなあ 」


 親父がつぶやく。

 確かにそうだ。毎日夜8時には3人で集まって作戦会議や情報共有をするのだが、もう9時になりそうだ。


その時、


ダン!!!!



 扉が勢いよく開いた。

 開いた先には、満面の笑みのアナトリスさんがいた。急いできたのか、息が切れていた。


「情報!ゲットしましたよ!!! 」


「おおおおお!!! 」


「ナイスです! 」



 それから、作戦会議は深夜まで続いた。

 興奮して、全然眠れなかった。








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