~強敵~
大晦日ですね。ちなみに私はガキ使派です。
どうでもいいですね笑
アドバイス等ございましたら、よろしくお願いします!!
それではごゆっくり、
「『妖精の擁護』(Defending the fairy) 」
親父は1しかない俺のMPを唯一回復できる、【特別回復者】だ。目を瞑り、スキル名を唱える。
「よし!これで回復したはずだ。ぶっとばせぇ!!! 」
「了解! 」
見ると、巨大ゴリラは肩を上下に揺らしている。
やはりさっきの攻撃が効いている?
だとしたらこちらには好都合だ。このまま何度もスキルを当てれば、勝機はあるかもしれない。
「 『龍王の息(Dragon King's Breath)』!!!!」
派手な彩色を伴い、業火がゴリラの胸にヒットする。
『グゲェェェェェェエエエエエエエ 』
業火に包まれた奴は、間抜けな声を上げた。よろよろとよろめき、膝を着いた。
やっぱり、効いている!!!
よし、この調子だ。
「親父!!もう1回よろしく!! 」
「分かった 」
親父は再度祈りを捧げるかのように目を瞑り、唱える。
「『妖精のよう……ぐえゃっ 」
俺達は、ほんの少し油断していた。
相手も攻めてくることを忘れていた。
次の瞬間、親父の体は宙を舞った。小さな体が天井に届き、鈍い音を立て、跳ね返る。
「ゴボッッッ 」
親父は、人の体から出る音とは思えない音と共に、大量の血を口から吐いた。落下した地面は陥没し、その威力を物語っていた。
「親父!!!!!!!! 」
嘘だろ…………親父が……親父が………?
死ぬ…………?
「親父!!!死ぬな!!!! まだ死んじゃダメだ!!! 」
親父の横で、巨大ゴリラが顔だけを動かす。
その顔は、ニタニタとした気持ち悪い笑みを映し出した。
何かが込み上げてくる。
気持ち悪い。反吐が出る。頭が痛い。息が苦しい。手足が震える。体が熱い。
気色わりい!!!!!!!!!
「うぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!! 」
頭の中が真っ白だった。何も考えられない。ただ、我武者羅に地面を蹴った。剣の重みなんて感じなかった。クソゴリラの間抜けな顔が近づく。
バンッッッッッッ
棍棒が地面を叩く音がする。
バンッッッッッッッ
バンッッッッッッッ
バンッッッッッッッ
何度も何度も近くの地面が揺れる。
クッソ!あいつの懐に入れさえすれば……
とにかく走るんだ!俺!
「うぉぉぉぉぉぉぉ 」
数多の棍棒の雨をすり抜け、ゴリラの懐に入ることに成功した。
勝ったな。
「とりゃああああぁああああああああああああ 」
今まで生きてきた中で、最大の跳躍。異世界のステータス制度の手を借り、ゴリラの身長分の高さまで跳んだ。
「暴れんなよ、クソゴリラ 」
ゴリラの頭頂から下半身まで一筆書き。肉を斬る手応えが、剣を伝って感じられる。
こいつに対しての、憎悪、憤怒、鬱積、怨念の全てを剣に込める。
『グエギャアアアアアアアアアアアアアアア 』
ゴリラが、悶え、苦しむ。
目も当てられないような姿を晒している。顔から股にかけて一直線。血塗れの線を残し、暴れ狂っている。
「暴れんなって言ったろ。早く死ねよ 」
おそらく心臓があるであろう部位を、なんの感情もなく刺した。恐らく死ぬだろう。
予想は的中した。ゴリラは、不意に動かなくなったかと思うと、大きな体をゆっくりと倒し、うつ伏せになった。そして、他のモンスターと同様、分解されるように、天に召された。
「きったな 」
ふと我に返る。
「親父!!!!!!!!!!!!! 」
すぐに親父が頭に浮かんだ。
生きていてくれ!!!頼む!!
「親父!!まさか死んでないよな!?こんなとこで死んでんじゃねえぞ!! 」
しゃがれた声が喉から出てしまう。
死んじゃ……イヤだよ…………
「……バカ、死んでるわけねえだろ 」
親父は目をゆっくりと開け、にやりと笑った。
全く人騒がせな親父だ。
「ったく、生きてんなら手伝えよ 」
「さっきまでは死んでた 」
「バカがっ 」
二人の中で笑いが起きる。いつもの、無防備でいて、豪快な笑い方。やっぱり遺伝なのかなあ。あのデカブツを倒して数分後とは思えないよなあ。
「全く、うるさくて眠れませんわ 」
『アナトリスさん!!! 』
そこには、衣服がズタボロになりながらも、何とか生きているアナトリスさんが立っていた。
二人とも、ズタボロなのは明らかなのに無理して……
とりあえず二人には持っていたハイポーションを惜しみなく使った。
「おお!普通のポーションとは大違いだな!! 」
「すっごい!!傷も塞がるのになんだか元気が出てくる!! 」
「元気が出る効果なんてないですけどね 」
元気だよなあ。さっきまで死にかけてたのにな。
「さ、帰りましょ、もうこりごりですよ、こんなとこ 」
「そうだな 」
「待って!倒した証拠にドロップアイテム持っていかないと! 」
「あ、忘れてた。なんだっけ?【紫紺の鱗】だっけか? 」
………………ん?
ちょっと待て。
【紫紺の鱗】????
嫌な予感がする。
さすがにそんなの……ないよな??
さっきまで巨大ゴリラが倒れていた場所には、確かに一つのアイテムが落ちていた。
しかし、それは、紫紺色でもなく、ましてや鱗でもない、ただの【真っ白な歯】だった。
嘘だろ…………
「おい、これって………… 」
「あんなに頑張ったのに……? 」
三人に流れる絶望の空気。黒く、淀んだ、重々しい空気だった。死にそうになってまで倒した奴は、全くの見当違いのモンスターだった。
今考えれば、当たり前だった。ゴリラから鱗が落ちるわけがないのだ。
それなのに……俺達は…………
「最悪だ……………… 」
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