~命の重み~
ご指導、アドバイス等ございましたら、よろしくお願いします!!!!
「ねえ、カタール、あの男殺してくれない? 」
「いけませんよ、お嬢様。すぐに人を殺すのは 」
「だってぇー、ジロジロ見てきてきもいんだもーん 」
騒音が2人の物騒な会話を包んでいる。
今日はカリアル家主催のパーティーの日だ。
豪華なドレスや真っ黒な黒服、煌めく宝石類がそこらへんに散らばっている。世界屈指の貴族が揃い、談笑をする。お高い食物をさも当たり前かのように頬張っている。そのパーティーが終わると、大量の食物がゴミ箱にいくという。
「マヤお嬢様〜!冷たくしないでくださいよ〜!!
僕と一緒に海水浴にでも行きましょ!絶対楽しませますから!! 」
高そうな服を着た若者がマヤに近づく。
「おほほほ、少し御遠慮させていただきますわ。
その日は大事な用がありましてよ 」
マヤは器用な愛想笑いでその場を乗り切る。しょぼんとした様子で男が去っていくのを怪訝そうに見つめる。
「カタール、やっぱりあの男、殺して 」
「お嬢様、ですから………… 」
「あああー!!!!もう!!!!疲れたの!!なんで私が愛想笑いなんてしなきゃいけないのよ!! 」
「お嬢様、我慢してください。我慢しかないですよ 」
「殺せば済む話でしょ!!殺して殺して殺してー!! 」
カタールは、はあとため息をつく。これで何度目だろうか。パーティーの度にこの会話をしている。実際、マヤに言い寄ってくる男は沢山いる。しかし、大体は金と地位目当てだ。かの有名なカリアル家に婿入りでもしたら、莫大な金と世界を支配できるくらいの地位は手に入る。だから言い寄ってくるのだ。
しかし、マヤはとっくに気づいている。自分を素直に見つめてくれる人ではないことに。みんな自分の後ろを見ていることに。
カタールは、何度か人を殺めたことがある。無論、マヤに命令されたからだ。先程のような貴族も、屋敷に務めていたメイドも、スラムの住民も殺したことがある。その度に、カタールはとてつもない吐き気に襲われる。ひとつの人生を潰す罪悪感に苛まれるのだ。
カタールは、時々畏怖を覚えることがある。マヤの目に、目の前の人の命がどれほどの重さに映っているのか。彼女の頭の中で、どれほどの人が死んでいるのか。マヤの黒い目を見る度、冷や汗が出る。
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「広い………… 」
一つの大広間のようなエリアに来てしまった。天井には瑠璃色の鉱物がぶら下がっていて、この部屋を照らしていた。
「もしかすると…………【最下層】? 」
「!!! 」
「まじかよ…… 」
【最下層】、つまりラスボス発生エリアという事だ。雑魚敵でこんなに強いとなると、ラスボスの強さは計り知れない。そればかりか、事前情報も何もないわけだから、特殊攻撃をされようものなら、あっという間に全滅だろう。
「でも、やるしかないんだよな 」
「おう、やってやるぜ 」
「やりましょう!みんなの為に!! 」
『グォォォォォォォォォォォォォ』
「なんだ?どこから来る? 」
『グォォォォォォォォォォォォォ』
「上です!!気をつけて!! 」
アナトリスさんが叫ぶと同時に、天井が大きな音を立てて破壊され、巨大な体が落下してきた。
ドンッッッッッッ
「うわっっ 」
急に地面が揺らぎ、立っていられなくなる。三人同時に尻もちを着いてしまう。直ぐに持ち直し、構えをとる。
「デカすぎだろ………… 」
思わず息を飲んでしまう。こいつを今から倒すのか…………
俺たちの何十倍もある巨体の威圧感は、言うまでもない。
例えるなら、巨大なゴリラだ。黒い体毛、厚い胸板、野太い腕、どこを取っても強そうな体。
ゴリラと違うところといえば、二足歩行であること、武器を持っていることだろうか。右手に棍棒を持っている。あんなのに当たったら一溜りもない。
『グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ』
「うっ 」
この雄叫びを至近距離で浴びると耳が崩壊する。
分かっていてやっているのか?
「わ、私が前線に出ます。お二人共、協力しましょう 」
「分かった。やってみよう 」
アナトリスさんがありえない速度でゴリラとの間合いを詰める。
「とりゃあああああぁああああああああああああ 」
力強い跳ね。ゴリラの腕を駆ける。狙うは眼球。視界さえ奪ってしまえば勝機はある。跳ぶ。体を捻り、瞳を刺………
その瞬間、鈍い音がした。
「アナトリスさん!!! 」
アナトリスさんは、地面にぐったりとなっている。ゴリラは、まるでハエでも叩くかの様に彼女を地面に叩きつけた。
「ダメ…………まだ死んじゃダメだ!! 」
「うう………… 」
指先がかすかに動いている。
「良かった、まだ生きてる…… 」
とはいえ、このゴリラをどうにかしないと!
唯一の戦力である、アナトリスさんが戦闘不能……
俺がやるしかないじゃないか!!
「親父、いくよ 」
「おう 」
「 『龍王の息(Dragon King's Breath)』!!!!」
我が掌から紫色の炎が放たれる。炎はゴリラに一直線、熱い胸板に届く。
爆発。
轟音と、黒い煙に包まれる。
「やったか? 」
正直、手応えはない。
煙が晴れる。跪く巨大ゴリラが見える。下を向いて、まるで石像のように動かない。
動いて……ない?
「おいおい!!やったんじゃね!? 」
「ま、まじ! 」
『グ…… 』
グ??
『グォ…… 』
グォ?????
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ 』
ですよねー…………。
「親父!もう一回だ!!!! 」
「おう!!!! 」
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