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~情報屋エデン~

まだまだ続きますよー

アドバイス等ございましたら、よろしくお願いします!

~50年前~



 暑い夏の夕方、カタルバ メイソンは、父と一緒に夕飯の買い出しに出かけていた。


「あら〜エデンのご主人じゃなあい

いつものお礼で、安くしとくわねぇ おほほほ 」


「いやあ、おばちゃん優しいねえ、いつも助かってるよ 」


 メイソンの父がニカッと笑う。

 カタルバ家はスラム街で唯一の情報屋だ。スラムだと、情報の需要が高いため、近所で知らないものはいなかった。

 近所の恋愛事情から、この地の伝説まで、幅広い情報を提供していた。

 無論メイソンは、父のことを大尊敬していて、いつかエデンを継ぎたいと、情報屋になるための修行に励んでいた。



「お父さん!魚買いに行こ! 」



「おう! 」


生活こそ質素なものの、幸せだった。







 数十分後、メイソンの父は死んだ。



 スラムの過激派組織に路地裏でリンチにされたのだ。実の父が殴られ蹴られ、細い喘ぎ声を上げているのを、メイソンはただただ見ていた。

 涙で視界がぼやけていても、父の姿は鮮明に映った。ただただ怖かった。スラムに住んでいると、暴力や喧嘩は日常茶飯事だった。

 だけど、自分の家族、ましてや自分の憧れの人が痛めつけられているのを見ると、恐怖は何倍にもなる。

 そして、情けなかった。メイソンは、足がすくんで動けない自分に腹が立った。ただ涙を流している自分が本当に嫌になった。





 ただ、ただ見ていた。





 終わったのはいつだろうか。永遠とも思われる時間が終わり、組織の奴らが去って行く時に発した言葉をメイソンははっきりと覚えている。



「あ〜カリアル家も悪趣味だよなあ、こんなジジイ殺させるなんてよォ 」


「しっ、殺されるぞバカ 」



 カリアル家…………


 情報屋の息子だから直ぐにピンと来た。



 この地の実権を握っている家族だ。

 メイソンは頭に血がのぼった。

 絶対に復讐してやると誓ったのはこの時だった。


 雨が降っていた。父の冷たい頬に手を当てながら、自分の顔を濡らした。







-----------------------




「ダメだ 」


 カタルバ メイソンは鋭い声を上げた。



「どうしてですか?なんでも教えてくれるんじゃないんですか? 」


 その通りだ。情報屋ってそういうものでは無いのか?



「そう簡単に教えられるものでは無い!

用がないなら帰れ! 」


 さっきの笑顔はどこに行ったのだろうか。

まさか怒声を浴びせられるとは。


「おっさん、こっちは真面目に言ってるんだ。

この情報次第でたくさんの人が救えるかもしれないんだよ!頼むよ………… 」


 親父が説得する。しかし、メイソンの表情に変化はない。ぐっと口をつぐんでいる。


「おねがいです、何でもしますから………… 」


 アナトリスさんも精一杯のお願いをしている。



「何でもするのか? 」


「はい!なんでもします!! 」


 おい、こいつ変なこと考えてるんじゃないだろうな?


「じゃあなあ〜 」


 おいニヤニヤしだしたぞ。怪しすぎるだろ、この変態野郎。


「じゃあ、サラル地方のネルマン洞窟のボスを倒してきたら教えてやるよ 」



 へ?なんだこいつ。あんなニヤニヤしてた割には随分簡単な要求だな。変態野郎とか言ってすみませんでした。



『やります!! 』


「おう、いい返事だ。証拠にボスが落とす【紫紺の鱗(ネイビーパール)】を持ってこい 。こいつの鱗は良い値になるらしいんだよ 」


『了解しました! 』


 元気よく返事をして、エデンを出た。


 意外とあっさりに交渉できたので、ちょろいなとか思ってしまった。


 洞窟のボスなんてチャチャッと片付けられる。

 ここ数日のフィールド修行でも、時々洞窟に潜った。まあ、地上のモンスターよりも若干強いくらいで、大したことは無かった。


 しかもまあまあ経験値が美味しいときた。


 まあ、レベルアップがてらに倒しますかあ。


「どーする?親父、いつ行く? 」


「まあ、明日とかでいいんじゃね? 」


「そーだな、明日行くか 」


「あ、あの!私もついて行ってもいいですか?

修行での成果を発揮したいんです!これでもちょっとは強くなったんですよ! 」


 アナトリスさんが笑顔で言う。うっ……不意打ちの笑顔には勝てない…………


「い、いいですよ、一緒に行きましょ 」


「やったー! 」


 意外とパワフルなんだよな……この人。最初は気が弱い人だと思っていたが、元気いっぱいの女性だったようだ。


「アナトリスさんって何の武器使ってるんですか? 」


 実は、アナトリスさんにもお金を寄付して、武器を買ってもらっているのだ。


「あ、私は短刀使ってます!二刀流っていうんですかね?2つ持ちですよ! 」


「おおお〜すごい! 」


 中々マニアックなところを突いてくるなあ。

 短刀の二刀流なんてあまり聞いたことがない。


 まあ、でも俺らのレベルには及ばないだろうなと内心思っている。何せこっちには最強スキルがあるのだ。いくら無MP幻惑スキルとはいえ、流石に俺らのスキルには及ばないだろう。



「じゃ、明日門前集合でー 」


「あ、はい、また明日ですー 」





-----------------------


~情報屋エデンにて~



「ふっふっふっふっふ 」


 メイソンは、一人で不気味な笑みを浮かべていた。


「あいつらも馬鹿だ、あのネルマン洞窟(・・・・・・・・)のボスに挑むなんて 」


 そう、ネルマン洞窟は、世界屈指の高難易度ダンジョンだった。自分の能力を過信した冒険者を容易く葬り、世界ランカーの冒険者でも、なかなか生還出来ず、今までこの世界で生還出来たのはたったの5組だというのだ。


「あんな何処の馬の骨かしれない奴らにカリアル家の情報やってたまるかよ 」


 メイソンは、自分の手でカリアル家に復讐しようとしていた。父親を殺した元凶を、悪をこの手で潰そうと、日々生きてきたのだ。


「父さん、俺、がんばるからね 」


 無機質な天井に向かって呟く。



「ごめんくださーい 」


 ガラガラガラと、戸が開いた。どうやらお客さんが来たようだ。

 メイソンは、無理やり笑顔を作り上げ、いつものように言った。



「いらっしゃいませー 」



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