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生きるために  作者: kiki
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字を覚えると意気込んだが、結果として、かなり苦戦した。

最初はクネクネしている模様にしか見えなかったし、本を呼んでみて、ババサマとのお手本とは全然違って聞こえた。訛り?があるらしい。


「違う。ジィじゃない、ち!」


「ジィ ジィ ジ ジ ジィ クソ!」


「舌をつけん!発音は難しいか、発声からしないとダメか・・・まあ、字はどうにか読めるし、汚いが書けるようになった・・・・バカではなかったな。」


発音に苦しむ俺にババサマは笑う。

発音が必要かは疑問だが、俺には出来ないと言うから、悔しくてやっている。

ババサマとの会話は、なにかとカチンとくる。


「五月蝿い!バカでないって言っただろ!」


俺が口が悪くても、怒らないババサマは偉いと思う。

今はなんでババサマが怖かったのか分からないくらいだ。


ニヤニヤ笑う、何回も俺を小馬鹿にする意地の悪さに辟易するが、気を使わず何でも言える今の環境は意外と心地好い。


自分の親でもこんなに口悪く言った事がない。

怒る事も少ないが、大人達にギロリと睨まれると何も言えなくなる。


子供同士だとイタズラとか甘えたりする。

親兄弟より世話をしてくれた年長者達が好きだった…

成人したら別人みたいになるのがショックなのか、もう大好きだった気持ちもボンヤリして誰が世話をしてくれたか分からない…


家族でも気軽さはない、子育ても子供達が交替で赤ちゃんから育てる。

ヤギの乳で、交替で年長者が世話をする。

世話をすると、ヤギの乳のおこぼれを貰えるので、俺も世話をしたいのだが、俺はガサツだと、女子の年長者からダメだと言われて妹の世話さえも出来なかった。


母親が世話するのは夜だけだ。

だから寝るときは嬉しいがくすぐったい。

冬の寒さを理由に母親に近づけるのだ…兄弟が多いと取り合いなんだろうが、二人兄妹なんで取り合いはない、母親は寝返り出来ないとブツブツ言うが、払いのけず寝ている時に抱き締めてくれたり、優しく撫でてくれる。


何故か起きている時には、抱き締めても撫でてもくれない…何度かわざとらしく起きたり、会話を試みたが、無言になる両親に諦めた。


瞼を閉じたらすぐ寝てしまいそうになるのを堪えて、毎日のように会話が始まるのを待っていた。

俺達が寝てる時だけ優しく話し掛けてくれる、父親も近づく気配があり、母親と他愛ない話でクスクスと笑いながら会話をする。

俺はその会話で安心して毎日熟睡出来てた。


朝になれば、子供達にはよそよそしい。

夜の会話を気付かなかったら俺は親を嫌いになってたかもしれない…


きっと他の親も子供達に優しくしてないのだろう、他の子供達の様子を見ても、家族と居るときは畏怖に近い表情に見えるのは気のせいではないと思う。


子供達が食べるご飯も動ける老人達が作る。

病気や怪我で動けない時だけ、寝床で薬を飲み、ご飯を親が運んでくれる。

それが嬉しくて、子供達は一度はわざとらしく、しんどいと訴えるが…そんな時は苦い薬を強引に飲まされるので、みんな早々に回復する。


だから、大人達と子供達の間には境界線がくっきりとある。


だけど、それが当たり前で、両親が俺や妹を大切に思っている事を何故自分達にも隠しているのかは分からない…怖くて聞けない大人達の態度…


妹はどう感じているかは、妹と二人きりなんて場面もないし、聞くに聞けない…


ババサマと一緒に住み、話していると、余計に不思議に感じる。


ババサマは他の大人達とは全然違う。


からかってくるが反論しても大丈夫だし、色々世話をしてくれて、字も教えてくれて、色々教えてくれる。


目元は隠れて表情が分かりにくいが…口許は笑ってくれる。

他の大人達とは違う反応に、何だかほっとする…母さん達もこんな風に意地悪でも良いから構ってくれたら良いのに…


「ところで、今日が赤の満月だ。お前は行くか?」


ぼんやりしてたら、ババサマが何気無く聞いてきた。


えっ嘘だろ?って焦ったのは仕方がないと思う。

だって、まだ足がジンジンして、歩くのが儘ならないのに無理だろ…




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