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生きるために  作者: kiki
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ババサマと一緒に生活してビックリした事がある。

毎日体を拭かれて、歯ブラシの木で歯磨きを強制され、敷布やら着替えやら天気が良ければ毎日交換される。

かなり綺麗好きな事が驚いた。


ご飯も美味しい。子供達と食べる雑多なご飯とは違い、ほんのり甘い木の実を砕いて固めた焼き物や、肉が入ったスープも驚いた。


家族にも食べさせたいくらいだ。


「これは何の肉?」


「野ネズミだ。」


「えっ?野ネズミ?こんなに美味しいの?猪より臭くなくて美味しいよ!じゃあ、木の実は何の実?」


「木の実ではない。豆だ。乾燥させたのを粉にして団子にして焼いた。知らないのか?」


お腹の傷が痛むし、何故か足がジンジンして動けないが、ご飯をしっかり食べたら1人でお椀をもてるようになったし、元気だ。


怖いババサマは質問には口調はキツイが根気良く答えてくれる。


「料理が上手だね、俺こんな美味しいの初めて食べた。」


「ああ…子供達のご飯は粥がほとんどだからな…固い食べ物も食べてるか?」


「たまに固っい干肉や、自分達で採った木の実を炒ったりして食べてる。ヤゴとかも捕まえて食べてるから、固い食べ物も大丈夫!」


ババサマは聞いたらなんでも答えてくれる。他の大人達のように、誤魔化したり邪険にしない。

もしかして、村一番の知恵者じゃないか?


体が動かない俺はババサマに字と言う物を覚えろと言われた。

本と言う村で見たこともない色んな模様が書かれたものを手渡された。


「なんでこんなの習う?村に字なんかないし、字なんて必要なくない?」


ババサマがギロリと睨む。


「お前は当分動けん、退屈だろ、ずっとお前の相手を私は出来ない、なら字を覚えて本でも読めば暇潰しになる。」


「えー!俺当分動けないの?なんで?傷がそんなに深かった?」


苦い薬を飲むからか、腹の痛みもマシだ。足がジンジンするのは変わらないが…


「・・・・傷自体は深くない、内蔵も傷付けてはなかったが、場所が悪かった。

普通死ぬ、生きている事が不思議なくらいだ。お前は生きるなら賢くなければならん、バカならすぐ死ぬだろう」


「俺はバカじゃない!皮剥ぎだってすぐ覚えた!」


俺はバカにされたと感じ、カッと頭に血がのぼった。

まだ10才だが、体が大きく、器用で皮剥ぎに関しては子供達のリーダー的存在だと自負してる。

後5年で成人だし、もう何も出来ない子供とは言えない。


「お前は成人の儀式に耐えられない。」


ババサマの表情はバカにした顔ではないとは思えない、どちらかと言うと無表情だ。

だけど、意地になる。


「何でだよ!俺は他の奴より強い」


確かに危険な儀式らしく、儀式で毎年人が亡くなっている。

儀式を覗きに行った子供も巻き込まれ死んだ事もあるらしい…

そんな儀式なんて無くなれば良いのだが、儀式を終えた成人後の姿を見ると、反対も言えない。

大人しかったヤードやラルドの成人の儀式後の様子を思い出す。

儀式後の姿は子供とは言えず、眼光鋭く、いっぱしの狩人のように怖かった。


成人の儀式の後、女はあまり変わらないが、男はかなり変わる。

儀式は怖いけど、あの姿を見たら必要だと感じてた…


俺も変わらなくては狩人の中で生きていけない…

自分の父親以外、男達はとても怖い…ギラギラしているように見える。


変わらないと生きていくのは無理だと理解しているから、儀式を今でも受けたいくらいだ。


平気なふりして、大人達を見る…

狩りが終わった大人達をキラキラとした尊敬の目で見る他の子供達には、狩人達が怖いなんて絶対に言えなかった…


臆病な自分は理解しているけど…


だけど他の子供達が出来た儀式に、参加が無理だと決め付けられるのは絶対に許せない。


「次の満月に成人の儀式がある。もし、お前が文字を全部覚えてこの本を読めれば儀式を見せてやる。そして、考えろ。字を覚える事も出来ないなら、諦めて安穏と死を受け入れろ。」


「なんだよ!バカにするな!字なんかすぐ覚えてやる!」


「書くのもだぞ」


そう言って、表面が滑らかな木の板と白い枝を渡してきた。

見たこともない物が多い…なんなんだ?

本当に儀式を見れるのかは疑問だが、字を覚えてやると意気込んだ。





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