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プロローグ
今日もいつもと同じ日になると勝手に思っていた。
呑気にそんな事を考えていた自分を殴りたい。
子供達の悲鳴が響き渡る…
少し離れた場所に鼻息が荒い、山のような大猪はどう見ても幻ではない。
回りの音が小さくなり、自分の鼓動が激しく響く。
村と森の間にある里山には滅多と猪は出てこない、男達が毎日のように狩りに行くおかげだ。
それなのに今目に写る猪はやたらと大きい。
こんなヤツが村近くに来るなんて…
男達が担いで帰ってくる猪よりも、子供と大人くらいの差がある。
どう見ても、大猪は震えて動けないでいる小さいミーナに飛び掛かる為に勢いを溜めているように見える。
大猪は人を食べるのか?
猪の牙で何人も狩人が死んでいる。
狩人が死んだ時は遺体は村に連れ帰られてこないから、実際の被害は分からない…
いや、それより俺より小さいミーナを助けなくては…
俺は近くに落ちていた石を拾うと、大猪に石を投げた。