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灰かぶり令嬢の物語  作者: 朋 美緒(とも みお)
2/15

2;記憶

夢を見た


そこは空まで届くような高い建物が建ち並んでいた、その間の整備された道をお揃いの服に身を包み笑いながら数人で歩いている私。

卒業後の話をしながら春からの新しい環境に、わくわくとした気持ちを話していたのを覚えている。


平凡だけど、幸せな環境だった。

私が7歳の時に母は病死、5年後後妻として父と結婚した母はとても優しかったし

半分だけ血のつながった幼い妹は私を慕ってくれてとても可愛かった。

幸せな家族だった・・・・本当に・・・


今とは大違い・・・


・・・・・大違い・・・・


迫る大きなトラック、ぼーとして一歩遅れて歩いていた私


『キャー!』


友達の声と鈍い痛み・・・・











目を覚ますと薄汚れた天井が見えた。

「・・・あれは・・・」

夢の内容を思い出していた。

体を動かそうとしたら背中に激痛がはしった。


「うぐっ・・・・」


粗末なベットの上で、目を覚ました私はそう・・・前世の記憶を思い出したのだった。


「くそっ痛ってぇ・・・生きてるよ・・・死んだかと思った・・・」


口調が変わっていることに自分で気が付かないでいた。


「!え?」


ベットの横に心配そうに座っていた人間に気がついて

「あっ・・・・ロザリー・・・」

「灰かぶり・・・口調・・・・」

「何かしら?・・・えっとどうしたのだったかしら・・・体が痛い・・・・」


記憶が混乱していた、ロザリーのことは 解る。


「奥様に戦闘用の鞭を打たれたのよ、覚えてる?」

「ああ・・・そうだったわね・・生きてるわね」

「マライシア様が奥様を止めたのよ、マリゼラ様が低ランクだけど治癒ポーションをくれて・・・」


そうマリゼラは継母と上の姉マライシアと少し違っていた、同調はするが二人のいじめに積極的に参加せず、自分を立ち位置を客観的見ている気がした、そして私が鞭の痕を痛そうに見ていたりすると、傷薬をこっそり持ってきてくれたことがあった。あれは本当に助かった。


マライシアは暴力は振るわず、基本暴言のみ。

二人とも家庭教師のおかげでそこそこ学力はあるらしい・・・・

魔法適正はそれほど高くないらしいが無い者もいるのでましだろう。


私はもちろん家庭教師などあてがわれる訳もなく、独学でどうにか簡単な読み書きと計算ができる程度だった。

魔法は使えると思う・・・そんな状態だった。


しかし、覚醒した私は不思議なことに難しい文法も今なら読めるし書ける事を自覚していた、そして・・・・


魔法が使えることも解っていた。


その中の一つ、【治癒魔法】それは今まで散々苦しめられてきた痛みからの解放だった。

でも表面の傷は残しておいた、消えたらさらに酷いことをされそうで怖かったからだ、表面だけだが痛みは残る、でも随分ましだった。


後で、ロザリーに聞いたら継母が私を戦闘用の鞭で痛めつけたのは、その日行った隣の領地の侯爵夫人のお茶会で、元男爵家の身分を馬鹿にされたからだったらしい、伯爵家の私が憎くなったとか。


「八つ当たりもいいところだわ!」


そう呟きながら、まだ少し残してある背中の傷、それをかばいながら朝食の準備をしている。

それから、ロザリーの口癖が「あんたも、不憫よね」になった。









そして記憶が戻ってから、準備を始めた・・・この家を、父を捨てる準備を・・・


























舞踏会の準備は淡々と進んでいた。

お姉さまたちは新しいドレスを新調し、ダンスのレッスンにも力が入る。

広間で二人が練習しているのを端で眺めている私、目で見て、後でこっそり自分も練習していた。


(この世界は例のおとぎ話に似ている・・・けど妖精のおばあさんは居ない、おとぎ話では、死にかける仕打ちも無かった、でも・・・あこがれるよね舞踏会・・・行ってみたい)


ゴミ箱に捨てられていた招待状、魔法が付与してあって、ちぎることができなかったのを悔しがっていたお継母様、くしゃくしゃになっていたカードをこっそり拾ってしまってある。


「王子様の目に止まるように、着飾っていかなきゃね」

「お姉さまならきっと目に留まるわ!」

「お肌もしっかり手入れするのよ二人共、さあ練習よ」


手を叩いて二人に檄を飛ばすのはお継母様だった。





王都までは伯爵領からは馬車で3日かかる。

屋敷の前に停められている馬車に荷物を運んでいると

ロザリーと共にお継母様に呼ばれた。


「これを道中身に着けなさい、くれぐれも自分はメイドだと言うことを忘れないように」


私には茶色いかつらと、2人に新しいメイド服が渡された


「・・・・はい」


屋敷は臨時に頼んだ管理人に任せ、2台の馬車は王都に向かって走り出した。


「荷馬車に3日も乗って移動なんて、鬼畜だわあのおばさん!」


文句を言うロザリー

大きめの荷馬車、荷物の隙間に二人押し込められ移動する私たち、

お継母様とお姉さまの3人はそこそこ豪華な馬車に乗り旅路を楽しんでいるようだった。

御者2人、護衛6人、護衛は皆騎乗している。

道中は魔物が少し出たが、王都までの道は定期的に魔物退治がなされているため大きな問題はなかった。


私は生まれて初めて伯爵領を出るのでウキウキしていた。

だが忘れてはいない、家を出る準備をしながら道中痛いお尻をさすりながら、3日間耐えた。




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