表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

第八節 生体実験

「尾坦子さん!」






ガラス張りの壁に駆け寄る主人公。


「ん? ツトム君? ツトム君じゃないの! どうしてここへ?」


こちらに気付いた尾坦子が椅子から立ち上がり、近寄ってくる。


「ああ、尾坦子さん……」


壁に手を当てる主人公、涙ぐんでいる。


「無事……だったんだね。尾坦子さん」


「全っ然元気よ。ゾムビー化しちゃったけどね」


全身紫色をした尾坦子が話す。


「私ね」


「うん」


「ここで対ゾムビーの研究の手伝いをしているの。ゾムビー達を怯ませる電波だとか、ゾンビ―達をいち早く発見するための電波だとかを浴びて、その結果を調べられているわけ」


「それって生体実験じゃないか! 大丈夫なの⁉」


「うん。平気よ」


淡々と話す尾坦子。


「しんどい時もあるけど、殺されるほどの電波を浴びるわけじゃないわ。私ね、誰かを助けたい、誰かの役に立ちたいってずっと思いながら生きてきて、それでナースになったの。だから今、ゾムビーを退治するための役に立ててとっても幸せなの」


「それでも! 尾坦子さんがひどい目に遭ってるのを! 僕は見過ごせない‼」


涙ながらに叫ぶ主人公。しかし――、


「小僧、次の実験が始まる。邪魔をするな」


研究者に腕を掴まれ、尾坦子から遠ざけられる主人公。


「尾坦子さん‼」


ガラス越しに笑顔で手を振る尾坦子。


「よし! 始めるぞ」


尾坦子は椅子に座る。部屋の両サイドから電波を出すらしき機械が出てくる。


「電波放射5秒前、4、3……」


研究室内にアナウンスが流れる。


「あぁ。尾坦子さん……」


「2、1……」


「ゆんゆんゆんゆん」


電波が尾坦子に向かって放射され始めた。






「ああ――――ん!」






体をのけ反らせ悶える尾坦子。


「…………嬉しそう」


唖然とする主人公。涙は乾いていった。


「再会の時間があまり取れなくて済まなかったな」


爆破が主人公に向かって話す。


「あの、……本当に尾坦子さんは大丈夫なのでしょうか?」


主人公が問う。


「生命維持に支障は無い程度の電波だ。これくらいは、こちらとしても協力してもらわなければならない」


「そうですか……」




「あ――ん!」




相変わらず叫んでいる尾坦子。


「……」


主人公の涙は完全に乾いた。




「ここを出ようか」


爆破が話を切り出す。


「えっ。次はどこへ?」


疑問を浮かべる主人公。


「ウィ――ン」


研究室を出る3人。逃隠がひそひそ声で話す。


「ツトム、なんか中学生が見てはいけないモノを見てしまったナ」


「……うるさいよ」




ラボの廊下を歩く3人。爆破が口を開く。


「会わせたい人がいると言って君を呼んだのだが、本題はそれではなかったんだ」


「どういうことですか?」


主人公が問う。


「あの女性をダシに使って悪かったのだが、ツトム、君に頼みたいことがあってな」


「?」


「一緒に、ゾムビー達と戦ってほしい」


「!」


「ゾムビー達は世界各地に出現し、人々を襲っている。このままでは人類の存亡に関わってくる。我々、狩人は強い。だが、特殊な訓練を耐え抜いてきた部隊だけあってその数は僅か、人手不足なのだ。この間の体育館裏の時も出動が遅くなってしまっただろう? それは随所に基地と隊員が少ないからなんだ。今、一人でも多くの強力な人材が欲しい」


「はぁ……」


「そこでだ。超能力が発現した君に、ぜひ協力してもらいたいのだ」


「そう言われても、僕、超能力を上手く使いこなせるかどうか……」


「心配しなくていい」


「ツカ……」


爆破が足を止める。そこには大きな扉が。


「君にはここで、1カ月間訓練を行ってもらう!」


「ガッ……ゴゴゴゴゴゴ……ガシャン」


大きな扉が開く。


「この、第2訓練場で超能力を! 完全にマスターしてもらう‼」




「!」




広い部屋になっていた。そこにはゾムビーをかたどった的のようなもの(サンドバックに似ている)が無数に有り、何かを測る7セグメントの大きな表示器のようなものも存在した。


(何かしら、訓練をするには充分な設備だ……でも!)


「僕、まだ中学生ですし、学校生活とかに支障が出たら……。今、夏休みといっても宿題もあるし……」


最後は小声になったが、主人公が反論する。すると、声高に爆破は言う。


「はっはっは。なぁに、宿題、勉強なんてものは受験の年の夏休みからすればいい。君はまだ2年生だろ? それと、自分の友達や家族、恋人をゾムビー達に奪われてしまってもいいのかい?」


「友達、家族……恋人……」




友出、両親、尾坦子が頭に浮かぶ主人公。




(もう、誰も尾坦子さんのようにはしたくない!)


「……分かりました。あまり……自信はありませんが、やってみます」


少しばかりではあるが決意を固めた主人公。


「よろしい」


爆破が頷く。


「俺もやってやるゼィ!」


逃隠が右手を上げながら声高らかに宣言する。


「そうだなぁ、君は……ツトムのサポートを頼む。器材運びとか」




「ガ――――ン」




爆破の言葉にショックを受ける逃隠。


「まぁ最初の方は、器材運びも必要ないと思うが」


「?」


爆破の言葉に疑問を持つ主人公。


「まあいい、始めるぞ!」


ゾムビーをかたどったサンドバックが無数に現れる。表示記が灯り、0が表示される。


(やるぞ! コガレ君を、家族を、尾坦子さんを! 守るんだ‼)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ