表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

第五節 逃隠(にげかくれ)サケル

「なんだなんだ?」


「ゾムビーを駆逐するって言ったな」




ざわつく教室。


(まさか……一人でゾムビー達を倒す気なの? そんなの無理だよ)


動揺する主人公。




「てか、中二臭くないか? 言ってる俺たち中二だけど……」


「なんだよ、あの身長でどうにかできるのか?」


「シカトだシカト。ハブろうぜ」




ひそひそ話が徐々に罵声に変わっていく。赤くなる逃隠。


「こらー、あんましからかったり、ちょっかい出したらダメだぞー」


担任がそう諭す。


(それどころか、逆に誰も相手してくれないよ)


心の中でツッコミを入れる主人公。


「とりあえずー、ツトムの後ろの席、空いてるからそこに座ってくれー」


そんな担任の言葉を聞き、歩き出す逃隠。まだ顔を赤らめ、下を向いている。


(うわぁ、僕の後ろかぁ。ちょっと変わった子だけど、大丈夫かな?)


少し不安に思う主人公。逃隠が自分の席に腰掛ける。




「トントン」




すぐさま、主人公は肩を叩かれた。振り返る。


「よろしくナ。前の奴」


「よ……よろしく」


逃隠のそっけない言葉に、思わず言葉数少なく返す主人公であった。




1週間後――2年4組の教室で、小テストが行われている。集中し、問題を解いている主人公、すると




「トントン」




後ろから軽く背中を叩く者が。


(まただ……もう、仕方ないな)


主人公は答案用紙を自分の体からずらし、後ろから見えるようにした。


「グッ」


ガッツポーズする逃隠。






テスト終了後――




「今日も助かったゼ。ツトム」


「もう止めにしない? サケル君」




逃隠が話しかけ、返す主人公。


「何言ってやがル。俺は勉強というものが苦手なんダ。よってツトムは俺を助ける義務があル!」


「助けるって、カンニングでしょ。悪いことは止めた方が……」


諭す主人公を無視し、続ける逃隠。


「この前の小テスト、ツトムのお陰で助かったゼ。ツトムも間違いがある方だが、助けてもらったから16点も取れたゼ。」


「僕も20点で、50点満点のテストだからお互い半分行ってないよ。病み上がりで当然勉強に遅れをとってしまっている僕だけど、サケル君は転校してきただけだから自分で勉強した方がいい点が取れるんじゃない?」


「いいヤ、そんなことは無イ。このままでいイ」






どうやら、この二人のカンニングする、される関係は継続するようだ。






「そう言えば」




切り出す主人公。


「サケル君、世界中のゾムビー達を駆逐するって言ってたけど、一体どうやってそうするつもりなの?」


ニヤリと笑う逃隠。


「知りたいカ?」


コクリ、と頷く主人公。


「逃隠家に代々伝わる奥義、『回避の術』! この免許皆伝の俺はそいつを使いゾムビー達を駆逐していク‼」


「おお!」




「避け、飛び避け、連続避け、回転避けetc.……様々な避けを駆使し、ゾムビー達に立ち向かウ!」




「……て、アレ?それって単に逃げてるだけじゃあ……?」


「チッチッチ、甘いナ、ツトム。避けた後には日々鍛えた強靭な肉体から放たれる体術で、ばっさばっさとゾムビー達をなぎ倒していくんダ」


「その体術っていうのは?」


「……まぁ、色々あル」


(避けるまでは何とかなりそうだけど、その後が不安でしかない……)


逃隠に不信感を持つ主人公。


「なんダァ、その顔は。信用していないナ? よし、それなら見せてやろウ。回避の術の数々ヲ」


提案を持ち掛ける逃隠。


「体育館裏にちょっとしたスペースがあっただろウ? そこへ行って華麗なる術の数々を見せてやル。来イ」


主人公の袖を引っ張り、体育館裏へと行こうとする逃隠。


「ああ、ちょっと」


慌てる主人公。






――「着いたナ」


体育館裏に到着した。


「まずは『避け』から行くカ。そうだナ。ツトム、俺を殴ってみロ、思いっきりだゾ」


「えっ? いいの?」


コクリと頷く逃隠。


「分かった……えいっ!」




「ぽむっ」




主人公は力なく逃隠の腹を殴った。


「おいおイ、思いっきりって言っただロ。そんなんじゃあ話にならなイ。8割以上、いや、全力の10割でいイ、殴レ」


「ホントにいいんだね。じゃあ……たぁ!」


さっきとは違い、全力で逃隠を殴りに行く主人公。瞬間、






「ブンッ」






主人公の腕は逃隠に全く当たらず空を切った。


(避け、られた……!)


そこにはさっきとは1メートルくらい離れて立つ逃隠がいた。


(絶対当たるって確信してたのに……さっきまで、手の届くところまでの距離に居たのに……)


興奮して逃隠に話し掛ける主人公。


「すごいよ! サケル君! どうやったの?」


逃隠に駆け寄る主人公。


「フッフッフ、聞きたいカ? 教えてやル」


話し始める逃隠。


「まず、鍛え上げられた動体視力で敵の攻撃を見切リ、ギリギリのところまで引き付けて避けル! 避ける際には鍛え抜かれた強靭な下半身を駆使し、目にもとまらぬスピードで移動するのダ!」


「ホントすごいよ! これなら確かにゾムビーの攻撃や体液を避けて反撃できる!」


更に興奮する主人公。


「まぁ落ち着けヨこれは基本の『避け』で、まだ飛び避け、連続避け、回転避けなどがあってだナ……」






「うるせぇよ」






「⁉」


誰かの声がした。振り向くとそこには友出の姿が。


「何ダァ、お前ハ?」


「……コガレ君」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ