第二節 ゾムビー、襲来
「尾坦子さん、院内は走っちゃいけないって……」
「ツトム君、今はそれどころではないの‼ ゾムビー達が西側入り口から侵入してきたの‼ ここは一階だからすぐに奴らに襲われるわ!」
「ゾムビー⁉ あの、ニュースで有名の?」
驚く主人公。
「なんだなんだ?」
「ゾムビーが来てるってよ」
ざわつき始める患者Aと患者B。
「皆さん、ここにいては危険です! 早く南の出入り口へ行って非難……」
「ブシュウウゥゥウウ‼」
尾坦子がそう勧告するのもつかの間、デイケアルームの壁が溶け出す。
「を……」
そこには、8体のゾムビー達がぞろぞろと不気味に姿を現して来ていた。
「⁉、あれが……ゾムビー……」
初めてゾムビーを目の当たりにし、恐怖を感じる主人公。
「ぎゃあああああああ‼」
恐怖でパニックに陥る患者A。走り出し、廊下から逃げようとする。
――しかし、
廊下への扉はゾムビー達が溶かした壁とほんの2,3メートルしか離れていない。
「ガタッ‼」
「うわっ!」
「すてーん‼」
椅子に躓く患者A、こけてしまう。不気味なうめき声を上げながら患者Aに忍び寄るゾムビー達。
「ゾム……ゾム……‼」
「うわぁああ‼ 来るなぁああ‼‼」
手を振り回し、ゾムビーを追い払おうとする患者A。しかし、
「バシュッ」
ゾムビーの口から緑色の体液が患者A目掛けて飛び出す。
「避けて‼」
叫ぶ尾坦子。
「ベシャッ」
しかし緑色の体液は患者Aの頭頂部から顔の右半分を覆うほどに降りかかった。
「ぎゃあああああああ‼‼」
「患者A――――――――‼」
患者Aを思い、叫ぶ患者B。
主人公が問う。
「尾坦子さん、あれは……?」
尾坦子が答える。
「ダメよ。……あの体液にかかったら最後。あの人はもう、助からない」
「ジュウゥゥウウウ」
患者Aの、体液がかかった部分がみるみるうちにゾムビー達と同じ色、つまりは紫色に変色していく。
「あああぁぁぁぁ‼‼ …………ぅ……ぅ……む……ム。ゾム」
数秒も経たぬうちに患者Aはゾムビー達と同じ姿になってしまった。叫ぶ患者B。
「患者A――――――――‼ 畜生‼ なんてこった! 患者Aが、患者Aが……」
9体となったゾムビー。皆に呼びかける尾坦子
「廊下から逃げちゃダメ! 窓を開けてそこから逃げ……‼ そうだわ……ここは精神病棟‼‼」
精神病棟の窓は、患者が脱走しないために風が通るすき間しか空いてなかったりするのだ!
ほうきを手にする尾坦子。
「患者さんは、私が守る‼ やぁああああ‼‼‼」
ほうきを振り下ろす尾坦子。ゾムビー1体の頭に当たり、怯むゾムビー。
「ゾゾォ……」
(イケる、時間を稼ぐくらいならできるかもしれない)
少しばかりの希望を見出す尾坦子。
「ゾム……ゾムバァアア‼」
「バシュッ」
殴られたゾムビーの後ろにいたゾムビーの口から体液が。
「サッ……タタン‼」
横に飛んで避ける尾坦子。恐れのあまり叫ぶ患者C。
「ひぃぃいい! 終わりじゃあ‼ この世の終わりじゃぁああ‼‼」
「落ち着いて下さい! 体液は服に着いたくらいでは何ともありません! 体に当たりさえしなければ何とかなります! それに体液はある程度乾けば無害です‼」
ゾムビーを攻撃しつつそう叫ぶ尾坦子。ほうきを振り上げる! 瞬間、
「ツルッ」
手が滑り飛んでいくほうき。思いを張り巡らせる尾坦子。
(そうだ、アタシって、おっちょこちょいだった……)
迫りくるゾムビー達‼ 叫ぶ主人公。
「尾坦子さぁあ――――――――ん‼」
「ゾム……ゾム‼」
「バシュッ」
尾坦子に飛びかかる体液。
(だめ……避け切れない……)
「バッシャアアアアア」
尾坦子に降り掛かるゾムビー達の体液! 主人公は更に叫ぶ。
「ああ‼‼」
尾坦子の体がみるみる紫色に変色していく……。動かなくなる尾坦子。激しく動揺する患者達。
「うわあああああああああ‼ ゾムビーに対抗できる人がいなくなった‼ 逃げ場もない‼‼」
「そんな……尾坦子さんが……。……‼」
この状況に絶望していた主人公が何かに気付いた。
「ひた……ひた……‼」
裸足の足音。ボロ雑巾のようなジャージ。そこには一人の男の姿があった。
「排便……さ……ん……?」
排便タレオ、見参‼‼‼