第十七節 引き継がれる能力
――30分後、工場地帯の最初に戦闘があった場所にて、散った一同が一旦引き返し集合する。「皆戻ったか? 戦果を聞きたい、ツトム」
「2体、何とか倒しました」
爆破に答える主人公。
「他は?」
「身体、3体倒しました」
「5名の組、1体です」
「こちらの組は発見できませんでした」
爆破に身体、狩人隊員達が報告していく。
「そうか、私は5体だ。……と、言う事は残り2体だな。しかし、情報に漏れがある可能性もある。実際には何体居るか……この工場地帯は広い、皆、覚悟して探索するぞ!」
「ハイ!」
爆破の号令に返事する一同。再び各持ち場に向けて歩き出す。と、その時、付近の排水口の奥でうごめくモノが……。狩人隊員の一人がそれに気付かず排水口の蓋の上を歩き、通り過ぎようとしていた。瞬間、
「バシュ――」
ゾムビーが蓋の網目のスキマを通り抜けて、飛び出してきた。
「ゾムゥ」
「! そこに隠れていたのか! 隊員、一旦逃げ……」
「グルグル、バシュ!」
爆破の言葉もむなしく、ゾムビーはそのまま隊員にぐるぐると巻き付き、顔面に体液を吐き掛けた。
「ぐあ! あ……ゾ……ゾム」
段々とゾムビー化する隊員。
「くっ、間に合わなかったか、ツトム! やるぞ!」
主人公に話し掛ける爆破。しかし主人公は何かに気が付いた。
「ちょっと待って下さい。何か……様子が……」
いつもは、人間をゾムビー化させるため、向かってくるゾムビー。しかし、たった今ゾムビー化した、元隊員はこちらに向かって持っていた銃器を構えていた。
「まさか…………全員、伏せろぉおお‼」
「タタタタタタタタタタタタ」
叫ぶ爆破。隊員だったゾムビーは銃器を発砲してきた。
「ぐわっ!」
「があっ!」
「うっ!」
次々と被弾していく狩人隊員達。身体は逃隠を抱え、近くの建物へジャンプしていた。
「まずいな……このスーツは運動性を考慮しているため防弾機能は無いのだ」
「マジっすカ⁉」
会話を交わす身体と逃隠。爆破と主人公は、幸いゾムビーが狙った隊員達とは少し離れた場所おり、伏せて助かった。
「ゾムビーが銃を打つなんて……」
頭を抱えながら動揺する主人公。瀕死の重傷を負った隊員達のすぐそばの地面にも、排水口が……。
「バシュ――」
そこからもう一体のゾムビーが飛び出してきた。
「もう一体! そこに居たのか‼」
爆破でさえ想像がつかない事態だった。
「く……来る……な」
「ゾム……ゾム……」
容赦なく重症の隊員達に近寄るゾムビー。
「バシュッ」
体液を吐き掛ける。動揺し、動けなくなった主人公達をよそに、ゾムビーは隊員達を次々とゾムビー化させていく。
「ゾム……」
「ゾ……」
「ゾムバァア……」
銃器を主人公達に向け、構える元隊員達。
「くっ! 一旦態勢を立て直すぞ! 全員! あちらの通路に退避‼」
爆破の掛け声で、一斉に走り出す生き残った者達。
「タタタタタタタタタタタタ」
それを追って発砲するゾムビー達。一同、死に物狂いで走る。
――数分後、小路地にて
「ここまで来れば、しばらくは大丈夫だ」
爆破が口を開く。そこにいる全員がゼイゼイと息を上げている。
「はぁはぁ……スマシさん、あれは一体?」
「私も初めての経験だが、どうやらゾムビー化した人間は、その記憶や能力を引き継ぐみたいだな。あの女性も、その一例だったのか」
「……尾坦子さんと……一緒……」
会話を交わす主人公と爆破。
「出動の際25人居た隊員達も今は9人か……まぁ悲観的になっている暇は無い。作戦を立てるとするか。全員、集まれ」
「隊長、それは一体どのようなもので?」
爆破に問う身体。
「そうだな、副隊長。狩人隊員クラスの射撃能力がある集団となれば、非常に厄介だ。だが、相手は移動スピードが非常に遅い。ここに来るのも時間が掛かるだろう。でだ、戦う際にはまず、距離を置いて十分な準備をし、第一に銃器を破壊することから始める。銃の破壊は主に私とツトムがやる。ツトムは銃器ごとゾムビーを吹き飛ばしても構わないが、私は爆破の範囲を狭め、銃器を破壊することに専念する。エネルギーの節約だな。銃器を破壊できたら、副隊長、お前が突っ込んでいつものようにゾムビーを撃退していってくれ。残りの隊員は援護射撃を頼む。くれぐれも、易々と近付いてゾムビー化してくれるなよ。作戦は以上だ!」
「ラジャー!」
「ハイ!」
了解する身体、隊員達と主人公。と、その傍らで
(…………今回も俺だけスルーなのカァアアア‼)
嘆く逃隠。
「よし、なら少し引き返すぞ。ここより広く動きやすい地点があったはずだ」
爆破の言葉で、一同が動き出す。




