第十六節 工場地帯の戦い
「リジェクト‼」
「ドゴォッ!」
主人公達がラボに来てから、2週間が経とうとしていた。今まで通り訓練場で特訓を続ける主人公。表示記は408kgを表示していた。
「ツトム! 特訓を始めてからしばらく経つが、平均して400kgオーバーを出せるようになってきたな!」
「ハイ!」
爆破の呼びかけに答える主人公。
「それに、どこで覚えたかは知らんが、不思議な体術を使って実践でも活躍できている」
「へへッ」
爆破の言葉に、主人公よりも得意気になる逃隠。
「この調子なら、初めは夏休みの1カ月間と言ったが、特訓の期間を3週間くらいに短縮できるかもな」
(良かったぁ……絶望的かと思われた、夏休みの宿題、終わらせられる)
「グッ」
爆破の言葉に、涙ながらに喜ぶ主人公。逃隠は小さくガッツポーズ。
「狩人の一員と言っても、まだ中学生だ。少し短いが夏休みを十分に満喫してくれ」
と、爆破。
「ハイ! ありがとうございます」
心の底から喜ぶ主人公。
「礼はよせ。ツトム、お前の頑張りが……」
爆破が言葉を続けようとしたその時、
「ビ――ビ――ビ――」
ラボ内に警報が鳴り響く。続けてアナウンスが。
「港の工場地帯で、ゾムビーが発生。隊員は直ちに現場に急行せよ。繰り返す……」
「……来たか。ツトム! サケル! 行くぞ‼」
力強く言う爆破。
「ハイ‼」
「おウ‼」
続く主人公と逃隠。
――工場地帯、ゾムビー発生現場。狩人の隊員達、爆破、身体、逃隠そして主人公が専用の車で到着する。
「情報によると、従業員達はほぼ非難が完了しているらしい。火災時などの避難訓練を、よっぽど徹底している企業なのか? まぁいい、これで狩人の隊員達は存分に戦える。敵は20体だが、何とかなるだろう」
と、爆破。
「ゾム……」
「ゾ……」
「ゾムァ……」
前方から6体のゾムビー達が姿を現した。
「姿を現したな。よし! かかれ!」
「ラジャー」
「ガチャ、タタタタタタタタタタタタ‼‼‼」
爆破の号令で、銃器を用い発砲する狩人隊員達。
「ゾ……ゾ?」
「ゾム……」
「ベシャベシャ! グシャ!」
ゾムビー達が被弾し、みるみる崩れ落ちていく。
「ゾ……ゾ……」
「ボッ」
残ったゾムビーの残骸を爆破がバーストで爆発させ、処理する。
(すごい……! スマシさんもだけど、狩人の人達は超能力も使わず、銃器だけでゾムビーを……よっぽど訓練されてるんだな。僕が必要無いくらいだ)
主人公が感心する。
「よし、この調子だ。ん?」
爆破が横を向くと数十メートル先に、1体のゾムビーがいた。
「1体か……副隊長、行けるか?」
「はっ、お任せを」
爆破の問いかけに口数少なく答える身体。そして陸上選手が走り出す様な体勢をとる。1秒後、
「ダッ」
走り出す身体。ゾムビーに近付く。
「……ゾ?」
ゾムビーが身体に気付く。攻撃の射程圏内に入った身体は右手を振りかざす。そして、
「ドゴッ」
渾身の右ストレートを放つ。
「ベッシャアアアア‼」
顔がはじけ飛ぶゾムビー。続いて左拳
「ドゴッ」
再び右拳
「ドゴォッ」
連打でゾムビーの腹部を攻撃していく。体の各部位がはじけ飛んで、下半身だけになるゾムビー。身体は最後にローキックを放つ。
「バシャアアアア」
下半身もはじけ飛び、ほぼ残骸だけになるゾムビー。そして、
「ボッ」
先ほどと同じ具合に残骸を処理する爆破。
「見事だ。副隊長」
「お褒めに預かり、光栄です。隊長」
会話を交わす爆破と身体。
(強い! 身体さん、特殊スーツと肉体のみでゾムビーと戦うって話、本当だったんだ……)
思わず息をのむ主人公。その横で、
(すげェ……超能力を使わずに、ゾムビーが倒せるのカ……お、俺モ……)
身体に強い憧れを抱き始めた逃隠。爆破が口を開く。
「残り13体か……ここからは隊を分散させて戦う!」
「ハ、はイ! 俺は身体副隊長に付いて行きまス!」
手を上げ、志願する逃隠。
「副隊長、問題無いな?」
「はい、問題ありません」
爆破と身体の会話によって、身体と逃隠が行動を共にすることが決定した。
(イエス!)
ガッツポーズする逃隠。
「よし、なら副隊長とサケルの組、隊員5名の組を2組、私一人の組と……ツトム、一人で行けるか?」
「ハイ、何とかします」
爆破の問いに答える主人公。
「よし、しかし無理はするなよ。危なくなったらここに戻ってくるんだ。残りの隊員はここで待機! いいな?」
「ラジャー」
隊員達が爆破に返事する。
「それでは、散!」
一斉に動き出す一同。それぞれの持ち場に付き、ゾムビーと交戦していく。




