第十四節 真相
――翌日の午後、狩人ラボの廊下。爆破、逃隠そして主人公が歩いている。
「ツカ……ツカ……」
「スマシさん!」
「何だ?」
主人公が爆破に話し掛ける。
「どこへ行くんですか? 今日の特訓は?」
「まぁ待て、今日はまず話しておきたいことがあるんだ」
主人公の問いに爆破が答える。
「ツカ……」
「ここだ」
爆破が足を止める。そこは第4会議室と書かれた部屋の前だった。
「入るぞ」
「ウィ――ン」
扉が開く。そこは楕円状の机と数個の椅子、壁にはモニターらしきものがある部屋だった。
「まぁ座れ。これから重要な話を始める」
爆破の正面に座る主人公と逃隠。続けて爆破が話を始めた。
「我々が戦っているゾムビーだが、その成り立ちを知っているか?」
爆破の問いに答える主人公。
「確か、若返りの医学薬品『ワカヤグ』の実験による事故によって発生したとか……」
「それは俺もテレビで聞いたことがあるゼ」
逃隠も口を開く。
「そうだな……一般的にはそういう認識が広まっているが、そうではない」
爆破はその説を否定した。
「真実は、ゾムビーの発生源とは宇宙からやってきたウイルスによるものなのだ」
「!」
「⁉」
爆破の言葉に驚愕する主人公と逃隠。
「それってどういうことですか⁉」
「まぁ聞け、ツトム」
そう言って爆破が話を続ける。
「火星移住化計画を知っているか? MASAが数年前から行っている、人類移住計画だ。人類が地球の環境を破壊し続け、居心地が悪くなったら地球を捨てて火星に移ろうだなんていう結構なお話だ。その計画の最中、何度かMASAは宇宙にロケットを飛ばした。そして宇宙にある物質をサンプルとして採取した。その中に、人をゾムビー化させるウイルスが潜んでいたのだ」
「そ……そんな事が」
爆破の告げる真実に驚きを隠せない主人公。
「まぁ俺は薄々そんな事なんじゃないかと勘付いていたけどナ」
一方で知ったかぶりをする逃隠。
「でも、なんでそんな話を?」
爆破に問う主人公。
「そうだな、これは狩人と政府の一部機関しか知らないトップシークレットだ。それをお前達に教えたという事は、私はお前達を認めたという事だ。ツトム、そしてサケル。今日をもってお前達を部隊狩人の正式な一員とする!」
「な、なんですって⁉」
突然の爆破からの言葉に驚愕する主人公。
「で……でも何で僕達を認めてくれたんですか?」
続けて主人公が問う。
「ふっふっふ、昨日の戦いを見て、だよ。まだ力不足な部分はあるが、充分にツトムは戦ってくれた」
(…………俺ハ⁉)
爆破の言葉に、逃隠が心の底で突っ込む。
「本来ならばゾムビーを30体倒せば理事会に認められることとなっているが、私の許可があれば特例で何とかなる」
「30体! スマシさんは30体もゾムビーを倒して、その後狩人に入隊したのですか?」
主人公が興味津々になって爆破に問いただす。
「ん? 私は趣味でゾムビー狩りをしていたことがあってな。その頃、80体倒して理事会に認められたのだが、それ以降は面倒で数えるのをやめたよ」
(……80……僕なんて、たった3体しか倒してないのに……スマシさん、スケール違いすぎますよ……)
ぐわんぐわんと頭を重くし、自信を無くす主人公。
「どうしたツトム、顔色が悪いぞ」
「いえ……何でも……あり……ません」
心配する爆破の言葉に、力なく答える主人公。
「そうか、ならいいんだが。それと、今日は紹介したい人物もいる。もう着いている頃か?」
そう言うと、携帯電話を取り出す爆破。
「私だ。爆破だ。もうラボには着いたか? ……ああそうだ、第4会議室だ。……何? もう部屋の前に居るだと? お前はいつも手が早いな。いいぞ、入れ」
「ピッ」
携帯を切る爆破。
「ウィ――ン」
ほぼ同時に会議室の扉が開く。
「紹介しよう。身体スグル副隊長だ」
そこには、軍服を着た、大柄で筋肉質な男が立っていた。
「お久しぶりです。隊長」
「おう、久しぶりだな。アメリカ視察はどうだった?」
「はい、問題無く終わらせてきました。現地で有能なサイキッカーを7名確認、アメリカに発生するゾムビーも彼らによって処理されるでしょう」
「分かった、では詳しい話は後で聞こう」
爆破と会話する身体。身体の持つ威圧感ある雰囲気に、圧倒される主人公と逃隠。
「この二人は?」
身体が二人を見て言う。
「ああ、新しく狩人に入った、主人公ツトム君と逃隠サケル君だ」
爆破が答える。
「……こんな子供が」
「ははっ。見た目で判断するのは良くないぞ、副隊長。ツトムはサイキッカーで、サケルは……アレなんだアレ」
(またこんな扱いかヨ!)
爆破の言葉に心の中でツッコミを入れる逃隠。
「……フン」
主人公、逃隠の二人から体ごと顔を背ける身体。
「あの……」
主人公が身体に話し掛ける。
「よろしくお願いします……身体……スグル……さん?」
身体が顔と目線だけ主人公に向けて言う。
「俺のことは副隊長と呼べ」
「ハッ、ハイ‼」
再び顔を背ける身体。
(……うまくやっていけるかな?)
主人公は不安に思う。




