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第十三節 面会

――研究室、ゾムビー化した尾坦子が、ガラス張りの部屋で椅子に座っている。


「あの女性との面会だ。今日の分の実験は終わっているな?」


「はい、既に終わっております」


爆破の問いに、研究者の一人が答えた。


「ツトム、この前はバタバタしていて時間が取れなかったが、今晩は1時間程度、時間を与える。しっかり話をしてあげる事だな」


「スマシさん、ありがとうございます」


爆破からの思ってもみない言葉に、目を輝かせて言う主人公。


「睡眠時間の事は気にするな。今日はゾムビー退治もできた事だし、明日の午前中の特訓は休みとする。では、私はこの辺で失礼するよ」


「ウィ――ン」


そう言い残し、研究室を後にする爆破。


(まさか尾坦子さんとまた会うことができるなんて……)


胸を躍らせながらゆっくりとガラス張りの部屋に歩み寄る主人公。


「ん、ツトム……君?」


尾坦子がこちらに気付く。


「尾坦子さん! ツトムです。主人公ツトムです!」


思わず大きな声を上げる主人公。


「どうしたの? そんなに元気な声で」


「ご、ごめんなさい。僕、狩人の方と一緒にゾムビー達を退治することになって……」


「まぁ! ツトム君がそんな危ないことを……」


「大丈夫です。僕、超能力が使えるんです」




 それから主人公と尾坦子の会話が始まった。主人公は様々なことを話した。今、爆破の下で特訓を行っていること、退院してから学校の体育館裏にもゾムビーが出たこと、逃隠サケルという仲間がいること、回避の術も、秘密で特訓して会得していること……二人は時間を忘れて話をし、40分ほどが経とうとしていた。




「それでね、今日、回避の術のおかげでゾムビーを退治することができて……スマシさんは僕が2体倒している間に8体も倒しちゃってて……」


「まぁ! あの人は相当お強いのね!」




「フ――――」




息を大きく吐き出す二人。


「今日はありがとね。毎日実験ばかりで気がめいっちゃいそうだったの。ツトム君とお話しできていい気分転換になったわ」


「いいえ、尾坦子さんが嬉しそうで何よりですよ」


尾坦子のお礼に、そう返す主人公。




「ところで」




ジッと主人公を見つめる尾坦子。


「どうして今日はこんなにお話ししに来てくれたの?」


「そ、それは……」


顔を赤らめる主人公。


「尾坦子さんを元気付けたかったんです。前も言ったように、僕、尾坦子さんがしんどい目に遭っているのをほっとけなくて……だから、せめて元気付けられるように、話でもできたらなぁと思って……」


「どうして私がしんどい目に遭ってるのをほっとけないの?……」


「え? そ、それは……」


(どうしよう。あなたの事が好きだから、なんて言えないし……)


更に顔を赤らめ、汗をかき、目が泳いでいる主人公。


「……そう。私を良く思ってくれているのね」


「そ、そうなんです!」


尾坦子が一言言うと、咄嗟に答える主人公。


「私、もう人間じゃないのよ。ゾムビーと同じで、言ってしまえば、化け物なの。それでも……」


「それでも!」


声を落とす尾坦子に、大きな声で主人公が言う。


「尾坦子さんは……僕の……大切な人だから……」


真剣な表情の主人公。


「そう。お互い、手を触れあう事すらできないのに?」


「構わない!」


尾坦子をジッと見つめ、そっと手のひらをガラスにあてる主人公。尾坦子も主人公を見つめ、手のひらをガラスに当てる。二人の手と手はガラス越しに触れ合っていた。


「尾坦子さん……」


「ツトム君……」


と、その時






「ウィ――ン」






「……ツカ!」




「ツトム、少し早いが時間だ! 面会終了! 部屋へ帰って寝る支度だ!」


扉が開き、爆破が登場した。


「ひゃ、ひゃい!」


面をくらってテンパる主人公。尾坦子は顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。


「ん? 何かあったのか?」


首をかしげる爆破。


「何でもありません!」


焦りながら言う主人公。爆破の方へ駆け寄る。4、5歩行ったところで主人公は振り向き言った。


「尾坦子さん! また今度、お話しに来ます!」


尾坦子は笑顔で手を振っていた。




――主人公と逃隠の自室。主人公が戻ってきた。


「おイ、ツトム! どこ行ってたんダ? 待ってやってたんだゾ」


「ああ、ちょっとね」


逃隠の問いに軽く返事する主人公。


「そうカ、それならいいんだガ……」


「ああ、そうそう。明日の特訓、午前中は休みなんだって」


「ぃやったゼェ――! 半日あの雑用を休めル!」


喜ぶ逃隠。


「じゃあ、お休みー」


「おウ!」


床に就く主人公と逃隠。


「むにゃ……尾坦子さん……」


主人公は笑顔でスヤスヤと眠った。

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