第十二節 繁華街の戦い
「うわぁあああああああああああ! ゾムビーが出たぁああああ‼」
「うわぁああ! 食券買ったばっかりなのにぃいい‼」
逃げ惑う人々。その向こう側にはゾムビー達が10体。
「こっちです! 前の人を押さないように! 冷静に、転ばないように!」
道を作り、民間人を誘導する狩人の隊員。一方で、ゾムビー達を確認する三人、爆破、主人公そして逃隠。
「10体か……まぁ余裕だな。何体増やしたかは知らないが、これ以上は犠牲者は出さん!」
「2体……これまでに、一度に倒せた数は1体……でも、やるしかない!」
意気込む爆破と主人公。
「そうだ、サケル。お前は……」
逃隠の方を見る爆破。しかし、そこに逃隠の姿は無い。体育館裏の時と同じく、当たり前の如く姿をくらます逃隠。
(……まぁ良い)
「サッサと片付けるぞ、ツトム!」
「ハイ! スマシさん!」
走り出す爆破と主人公。
「きゃあああああああああ‼」
迫り来るゾムビーに座り込み、声を上げる女性。
「ゾム……ゾム……」
(集中……)
少し離れた場所で、右手手袋の星に意識を集中させる主人公。右手が光り出す。
「キッ」
ゾムビーを見つめる。
「リジェクト‼」
「ドッ……ベチャベチャ‼」
ゾムビーは腰より上がふっ飛ばされ、破片が飛び散った。
(良かった、ゾムビーの破片はあの女性に当たらなかった……次だ)
また少し離れた場所の、もう1体のゾムビーを見つけ近付く主人公。
(よし、この距離なら……!)
「リジェク……」
主人公の手は僅かにしか光らず、その光はすぐに消えてしまった。
(まずい! リジェクトは何発も連続しては打てない……!)
「ゾム……」
ゾムビーと対峙する主人公。
「スゥ――ハァアア」
(深呼吸だ。落ち着いて、力を回復させるんだ。20秒くらいあれば、次のが打てる!)
「ゾム……ゾム……」
主人公にじわじわと近付くゾムビー。その距離はゾムビーの体液の射程圏内に入った。
「ゾム……ゾムバァアア‼」
ゾムビーから体液が吐き出される!
(見える! ……まるでスローモーションだ)
上体を低くし右足を一歩斜め前へ踏み出す主人公。足を俊敏に動かし体を回転させる。と、同時に
(これ以上、ここにいる人達を犠牲にさせない!)
主人公の想いが両手を光らせる。ゾムビーの後ろをとる主人公。
「リジェクト……!」
主人公の両手がゾムビーを大きく光らせる、そして
「ドガァアアアッ!」
吹き飛ばされ、バラバラになるゾムビー。
「ゾ?……ゾ……」
「ボムッ」
顔だけになったゾムビーを、爆破が超能力で爆発させる。
「随分と時間が掛かったが、やったな! ツトム」
「スマシさん……」
安心する主人公。
「こっちはもう終わらせたぞ」
「⁉」
そこには、ゾムビーの残骸すらなく、只々爆発によって焦げ付いた痕が地面や壁に残っていた。
「見てたゾ! ツトム! 回避の術が役に立ったナ!」
ヒョコっと逃隠が顔を出す。
「やれやれ、君は……ちょっとはツトムを見習って、戦ってみたらどうだ?」
呆れた様子の爆破。
「なにおウ! 次こそハ、我が体術による華麗な戦いっぷりを……」
反論する逃隠にハイハイという様子の爆破。それをよそに主人公は考え事をする。
(あの間に、8体を倒すなんて、やっぱりスマシさんは強い! 僕ももっと強くならないと……!)
「ツトム! サケル!」
爆破が二人に呼びかける。
「後片付けが済んだら、ラボに帰るぞ。帰ってしっかり休息だ。あと、ツトム。お前は祝勝報告でもしておくか?」
「?」
何のことかさっぱりな様子の主人公。
その後、現場は狩人達によって騒ぎの鎮静化、ゾムビーの残骸等の処理が施される。
――狩人ラボ、研究室前。主人公は爆破に連れられて扉の前に来ている。
「ここは、前に来た……」
「フフ、そうだな、入ってみるといい」
爆破が扉を開ける。そこには、前にあった光景が。研究者たちがコンピュータや実験器具の前で作業を行っている。部屋の奥には、ガラス張りの一室があり、その奥には一人の女性のようなゾムビーが。
「尾坦子さん……!」




