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女神がさった後で

 女神が去った後のバスは、しんと静まっていた。

 恐怖に呼吸するのを忘れて深呼吸をするもの、まだ恐怖が抜けないもの、現実を受け入れられていないもの。反応は様々。

生徒たちはとにかく、状況把握に努めている。


「みんな聞いてほしい!」


 そんな雰囲気に中、声を上げ座席から立ち上がる生徒がいた。雄大だ。

混乱状態にあった生徒達が一斉に雄大を見る。


「状況がわからないからこそ、みんなで協力していくべきだと思うだけどどうだろうか?」


 雄大はこれまでもたびたびクラスをまとめていて、信頼が厚い。なので今回もうまくまとめられるはずだった。

はずなのだが、今回はそうはならなかった。


「そんなこと言ってお前自分の願いをかなえるために俺たちを利用しようとしているんじゃないのか?」


 反論をの声を上げたのは、木下幸きのしたこう

制服をだらしなく着崩し、校則を完全に無視した黒と赤色がまばらに混ざった髪。他人の迷惑も気にせずバスの座席限界まで倒している。さらに鋭い目つきで、こわもて。誰も寄せ付けない雰囲気をまとっている。一匹狼タイプの不良だ。


「俺は、ただ生きて元の世界にみんなで協力して戻ろうと……」


 予想していていなかった反論にしどろもどろに答える雄大。言葉を探そうとおろおろしている。

 人間不測の事態に強い人などそんなに多くない。雄大は特にこういう話し合いの場で反論を受けてこなかったので、弱点ともいえるぐらいに弱かった。

 

 幸はニヤリと悪い笑みを浮かべてたたみかける。


「お前さー、何焦ってんだよ? もしかして図星なのか?」

「ちがうっ!!」


 焦ってほぼ反射的に強く答えたそれは、生徒の目はやましいことがあるように映った。途端に生徒達の視線は幸に集まった。

 それはこの場の支配者が変わったことを意味する。

雰囲気が変わったことを察した雄大は力なく座り込んだ。



幸は雄大と入れ替わるように、立ち上がった。


「じゃあひとまず、使えるやつとそうじゃない奴に分けるか」


こわもての容姿に加え、場を支配した今の幸に反論できるもはないかった。


「右の窓側から一人ずつ能力を教えてけ」


これにも特に異論は出ず、スムーズに選別は進んでいった。


 徐々に自分の番が迫るにつれて、焦っている生徒がいた。

名を高崎春香という。

今のところこの場において唯一の無能力者だ。


「俺は空間系の能力をもってるぜ」


 前の生徒が能力を言って座る。

ついに来きてしまったと、春香の焦りはピークに達していた。

緊張で喉は渇き、心臓が耳の横でなっているような感覚に陥る。


 女神から能力を授かったほかの生徒は、どういうわけかどんな力があるか把握できているらしい。しかし春香は全くそれがわからない。皆と同じように光を浴びたはずのに何の変化もなかった。つまり能力がないということ。

 

「ならお前はB組な。次」


 幸が前の生徒を振り分けると、次を促す声が飛ぶ。

春香の、緊張は限界を超えそうだった。


「春香? どうしたの?」

「優子っ」


 春香を心配した隣に座っていた親友、南優子みなみゆうこが手を握った。

不意に握られた手に安心感を与えてくれたが、それも一瞬こと。


「おいどうした!! 次だ、次。速くしろよ」


怒気を孕んだ声に身体がビクンと小さくはねた。


「……いです」

「あ?」

「もってないです!!」


春香はどうにでもなれって思いでヤケクソに叫んだ。


「論外だな」


予想していたよりあっさりとした言葉に安心した春香だったが、次の一言で、絶望に落とされた。


「お前はここに残れ」


 春香は言われた意味が分からず、その場に硬直する。

助けを求めるように視線を彷徨わせるが無能力者を助けてようなんて優しい人はいなかった。

隣に座っていた優子と目があったが、申し訳なさそうな顔をするだけで露骨に目をそらされてしまった。どんな人間も他人より自分の方が可愛いものだ。

 もしも雄大がリーダーのままならこんなことにはならなかったかもしれないが、今の雄大にはどうするすることもできない。


(終わった)


春香は素直そう思い座り込んだ。


「じゃあチームごと集まって作戦会議をしろ」


絶望している春香を無視して女神を見つける作戦会議が始まった。


そんな中でも寝続けている少年がいることなど誰も気にせずに。


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