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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

幽霊退治は簡単です

作者: 青葉 尊

聞いたところによると一昔前は幽霊はあまり信じられていなかった。科学的根拠が無いだとか、非現実的であるとか、そんな感じでほとんどの人間が存在を否定していたらしい。


しかし時代は変わったのだ。もしも今、幽霊を信じるかと聞かれたら大半の人間はなぜそんなに当たり前のことを聞くんだと訝しむことだろう。


約10年前、とあるニュースが世間を震撼させた。日本の科学者が魂の存在を実証したのである。このセンセーショナルなニュースはあっという間に世界中に広まった。知らない人間がもしいるのなら余程の辺境に住んでいるに違いない。

今では魂のエネルギーを感知する眼鏡はもちろん、簡単成仏セットも虫除けスプレー並みの感覚で販売されている。ちなみに簡単成仏セットは塩が含まれている飴やタブレットタイプのお菓子などを改良したものが主であるので熱中症対策にもなる優れものだ。憑かれてしまった時に浄化するバスソルトやソルトドリンクなんかも定番商品になっている。


勿論弊害もあった。10年前は人気があったホラー映画やお化け屋敷の需要の激減である。

ホラーが好きだった人ほど幽霊が集まりやすいホラースポットに出掛けるため、偽物では我慢が出来なくなってしまったのだ。本物に手軽に会いに行けるのにわざわざ偽物を見に行くものなどいない。しかも取り憑かれてもすぐに浄化出来るのだから安全に本物独特の冷気や悪寒を楽しめるのである。


そして僕は今、ホラースポットにいる。ここは結構有名なホラースポットで、元々はガソリンスタンドだったのだが改造されてパン屋になった場所である。

このパン屋は元々噂になっていた。

どのような噂かというといつ行っても同じ店員が静かに笑いながら一人佇んでいる。しかも一人しかいない店員はいつもレジにいるのに、なぜか気づかないうちに焼きたてほかほかのパンが並んでいるという噂であった。

実は製パンを担当している人がいて、気づかないうちに並べただけじゃないかとも言われていたが、誰も見たことがなかったので謎のパン屋として静かに囁かれていた。


まあ、それもゴーグルが普及するまでの話である。ゴーグルをつけて見てみたら製パンを担当している奴はいるし、そいつを誰も見たことないのは当たり前だった。だって幽霊が作っていたんだから。


唯一の店員だと思われていた人間は陰陽師と言われる幽霊を使役したり浄化する一族の末裔だった。あまりに幽霊を信じる人が減り、陰陽師としての収入が入らなくなったので使役している幽霊にパン作りを強制して店を開いたのだ。


幽霊は塩に弱い。普通の塩なら触れなくもないが幽霊の動きが鈍くなってしてしまうので効率を考えると使えない。すると、当然味は不評で売れ行きは悪かった。栄養不足に陥った陰陽師の顔色の悪さも噂に拍車をかけたと思う。


今では大量の幽霊に会える上に幽霊が作ったパンを食べることができるとあって大人気ホラースポットになっている。


今日もパン屋には幽霊と人間がいっぱいだ。人間達は、パンを齧りながら調理場と店舗スペースを仕切る壁にへばりついている。

幽霊ブームの訪れを察知し、直ぐさま壁をガラス張りに替えた陰陽師はすごいと思う。

そんな訳で大量の幽霊がたまに重なるくらいひしめき合って生地を捏ねていたり材料を測ったりパンを運んでいる様子をガラス越しに見ることができるのだ。

それにしても人間達は幽霊と違って暑苦しいし重なることができないしガラスにへばりついている様は少し気持ち悪く思える。もうちょっと落ち着けないのだろうか。


そうそう、これから新メニューを作るらしい。基本的に幽霊は陰陽師には逆らえないので言われたレシピに沿って材料を混ぜるしかない。あれ、なんかレシピのタイトルに塩パンって書いてあ …う……ごけ…………な……


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