表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/22

5 監視する魔物

 遠くから灰色の雨雲が、早めの速度で屋敷に向かってくるのが窓から見えた。じきに雲は森の一部を覆い隠すだろうと推測したシンシアは残り少なくなった紅茶を煽り、カップを静かに置く。そして焼き菓子を口に放り込んでいるカイルに声をかけた。


「雨が降るわよ。かなり荒れそうね」

「ん、そのようだね。でもこの速さならすぐ去るだろう、……っ!」

「どうしたの?」


 軽く目を見開き立ち上がったカイルに、彼と同じく窓の外を見やる。が、風が強くなってきたことしか変わりは見つからず、小首を傾げながら視線を戻した。一向に口を開かないカイルにシンシアは待つことに決め、その姿を観察することにした。


(正反対の色彩よね。髪は太陽のように明るい色をしているけれど、瞳はまるで夜明けのように暗い色をしている。とても綺麗だわ)


 くすんではおらず、透明感のある色。夕焼け色の髪は情熱的だが、灰色の眼はどこか寂しげな雰囲気があった。


「血だ。血の匂いがする。シンシア、君よりも少し下くらいの子供かな。こちらに近づいてきてる。でもどうしてここに……」

「お客様? 珍しいわね。昔は度々来ていた侵入者も今じゃ滅多に現れないから。久々だから楽しみだわ。仕掛けは正常に動くかしら」


 吸血鬼の友人は遠くで香る血の匂いも判別できるらしい。歳までわかるとはと昔は驚いたものだが、元人間と純粋の吸血鬼では格が違うとカイルはシンシアに言った。自分は大体しかわからないが、本物なら全てがわかると。


「またやるつもりかい? 女の子のようだけど泣かないかな」

「そう言いつつ止めないのでしょう? 勝手に入ってきた方が悪いのよ。軽いお仕置きだと思えばいいわ」


 腕がなるとシンシアは笑みを浮かべる。準備をしてくるからと部屋から出ると、丁度よく雨が降り出した。そして枝の間から見え隠れする茶色の髪の少女。深い森の中からは雲など見えなかったに違いない。突然降り出した雨から顔を腕でかばうようにしながら移動していた。


 少女を見て、可哀想にとカイルは思ったがシンシアの言う『進入禁止の所に入ってきた方が悪い』というのも一理あるので止めはしなかった。何もない森の奥で暮らす彼女にとって、少ない楽しみなのだとカイルは思う。


 年頃の女性のくせに友人といえば、男のカイルしかいないのだ。他の人間に対する扱いが雑でも仕方ないのだろう。あとで邪魔になりそうなティーセットを片付けようと、カイルは空になったカップに手をかけた。

今回かなり、短いです

すみません!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ