第8話「決戦開始」
~決戦日・聖哉サイド~
先日、沙夜と約束をしていた日曜日になった。
聖哉たちはこの時までに秀輝と連絡をとり、『インパルス』との接触について話した。秀輝はある程度予想できていたのかさほど驚いた様子はなかった。
聖哉たちは今日までに体の調子を整え、約束していた場所へと向かう。
たどり着いた廃墟は少し街中から抜け出したため、人が近寄らないような場所にあった。
入り口に近づくと付近に少女らしき人影が見える。そこには悠然と立っている沙夜がいたのだった。沙夜は聖哉たちを見つけると妖しげな微笑みを浮かべた。
「ようやく、来たわね。逃げずに来たことは褒めてあげるわ」
「ふん、相変わらずの口だな。その余裕がどこまでもつか楽しみだぜ」
挑発的に言葉をぶつけてくる沙夜に対し、聖哉も挑発的な態度で返した。しかし、沙夜はまだ妖しげな笑みを浮かべ続けている。沙夜は後ろを向き歩き出した。
「今から私はこの廃墟内のどこかに隠れるわ。あなたたちは私を探してみなさい。ただし、この廃墟内には既に私の人形がいっぱいいるけどね」
そう言ってから沙夜は廃墟内の奥へと消えていった。それと同時に聖哉たちは廃墟内に入った。
中は少し薄暗いが、視界にはそれほど影響はない。しかし、漂う雰囲気だけはいつもとは異なっていた。そう、聖哉たちが入ってすぐ、中には四人ほどの男がそれぞれ刃物や鈍器といった物を持って待ち構えていたのだ。
「ふふ……楽しみだわ。あなたたちがどこまで戦えるか」
どこからか沙夜の声が大きく響き渡った。
「聖哉、どうするの?」
「決まってる。やってやるさ。二人とも、くれぐれも殺すなよ? 一応操られてるだけの一般人なんだから」
「わかってるさ」
~秀輝サイド~
秀輝は自分の椅子に座りながら昨日郷子と話していたことを思い出していた。
~渡瀬川事務所内~
「れ、連絡がとれないってどういうことなの?」
「ああ、なんかこっちから電話しても『電波の届かないところにある』とかメールだと『メールが受け取れない状況にある』とだけしかな」
秀輝の言葉を聞いて、郷子の表情が曇った。
「二人とも喧嘩したわけでもないんだよね? だったら何で……」
「俺にもわからねぇ……。連絡くらいは……欲しいよな。いつかまたあったら拗ねてやる」
「ふふっ……只見君らしいね。私も、梨恵ちゃんは大丈夫だと思うよ。だって私が知ってる限りで一番強い子だもん」
~現在~
「一番強い子……か」
秀輝は携帯の画面を見る。そこにはまだ高校生だった頃の秀輝と黒い髪のポニーテールの美しい少女が写っていた。
秀輝は再び仕事に取り組み始めた。
「頼むから死ぬなよ……みんな」
~聖哉サイド~
しばらくして、三人は別の場所に移っていた。三人とも体の一部に擦り傷や軽い切り傷のようなものがある。だが、三人の息はあがっておらず、まだまだ戦えそうにも見える。そんな中、俊が話し始めた。
「なぁ、闇雲に探し回ってもアイツがいる場所は見つけられなさそうな気がするんだ」
「ほえ? でもそれならどうやって探すのさ」
「まあ、俺に考えがある」