第5話「迫る脅威」
~『清條高校』jte本部内~
只見秀輝からの例の件の報告について聞かされてから一週間ほどが経つが、裏で活動している者たちについての情報については、何も得れていなかった。
聖哉たちは、ここ『清條高校』のjte本部内で考えごとばかりしていた。
『清條高校』は聖哉たちの通う共学の公立学校である。創立からはそんなに年月は経っておらず、生徒数も他と比べて多いことはない。いわゆる普通の高校である。
jte本部内にて三人はあの疑問について現在話しあっている最中だった。だが、進展はなく「あれでもない」「これでもない」とそれぞれ言い合うだけだった。
「アンタらまたあの件について話あってんの?」
そんな聖哉たちのところへ一人の女性が近づいてきた。それは聖哉があの事件で本部に連絡したとき、電話を受けた張本人である。
彼女の名前は堂本 益美という。黒いショートカットの髪形に鋭い目つきから初めてみる生徒たちからはよく怖い先生だと思われるが、そんな人間ではなく、話してみると基本的にやる気のなさそうな大人である。前に聖哉が「どうして先生になったのですか?」と尋ねると、「いや、ガキの相手してるだけで金貰えるっていいじゃん」と返答が帰ってきた。そんな彼女だが、彼女はこの高校の卒業生で、学生の頃は腕の立つjteだったとかで有名だったらしい。そのため、この様にjte本部内での学生たちの活動を管理しておく仕事にあたっているのだ。
「先生はこの件についてどう思いますか?」
「……とにかく、ダルいわね」
聖哉が尋ねると見るからにして面倒くさそうに答える。
「いや、真面目に答えてください」
「ま、やっぱり『能力者』じゃない?」
「やはり……」
こんな教師でも考えることはやはり一緒である。学生の頃の経験がそう思わせているのだろう。
「ま、まだ動きがない以上下手に動くのはやめといたほうがよさそうだな」
「はい……ありがとうございます」
普段は面倒くさそうな顔をする益美だが、学生に注意をするときはいつだって真剣である。本人は「死なれたら教師人生終わるからな」とか何とか言っているが、そういう面を時折見せてくれるので彼女と普段よく話す生徒たちからは信頼されている。
「そういえば先生、『只見秀輝』って人知りませんか?」
聖哉がふとそう聞いたとき、益美は目を見開いた。だが、すぐに普段の表情に戻った。もちろん、聖哉たちはその変化に気づいた。
「……どうしてその名前を?」
聖哉たちは秀輝と出会ったときの話をした。
「なるほどな……アイツは報告員になったか……」
「やっぱり知ってるんですね……」
「当然だ。私たちの世代で『只見秀輝』の名前を知らないjteはいない。そうね……十年くらい前の事件について調べてみな」
「は、はぁ…」
聖哉たちは言われた通り、過去の事件について調べてみることにした。
主にjteのある学校の各本部内にはそれまでの中でも比較的大きかった事件についての資料が置いてある部屋が存在する。三人はその中から十年くらい前のものを探し始めた。
「う~ん……見あたらないね……」
「めちゃくちゃ曖昧だったからな……」
沙良と俊が愚痴のようなものをこぼしながら資料を読み漁っていく。聖哉は黙って資料に目を通していた。
十分くらい経った頃、沙良がお目当ての資料を見つけた。
「あったよ~!!」
それを聞いて、聖哉と俊はすぐに沙良の近くへと寄り、三人でその資料を読み始める。
事件の内容は、jte内部の者であると偽り、密かに生物兵器の研究を続けていた男の研究施設へ秀輝たちが向かい、兵器を破壊し研究を破棄させたというものだった。
もちろん、事件に関わったjteのメンバーの項目に『只見 秀輝』という名前が記されていた。聖哉たちは秀輝以外の名前の人物に目を通すことにしたのだが……。
「ここにシミみたいなのがあって見れない……」
秀輝以外の人物の名前はシミのようなものができていて確認できなかった。
「もしかして……誰かが見られてはいけないという理由で消したのかも」
「……可能性としては考えられるな」
三人はこのシミについて考えてみることにした。
それからまた十分ほど経過した。
「それは私が以前コーヒーをこぼしたからだ」
議論を続けている最中に後ろから益美が現れてそう言い放った。いかにも自分は悪くないと言ったような顔をして。
「何で放ったらかしにしてるんですかあああああああああああああああ!!!!」
聖哉の怒声が資料室に響き渡ったのであった……。
「まあ、落ち着け。その他の人物は私が解説してやろう」
「まったく頼みますよ本当……」
三人が呆れていると益美は解説を始めた。
「とりあえず、名前がわからないメンバーのうち、最も需要なのは只見と一緒のチームだった女だ。名前は『豊川梨恵』。彼女はこの事件が終わり、高校に入ってからは一人でも数々の事件を解決し、全国で最も犯罪者を捕まえたjteになった。強さとしての評価はjteの一流と呼ばれる能力者十人、いや、軽くそんな人数を超えている強さだと言われている。まあ私は彼女と会ったことはないのだが……」
三人はひたすら『豊川梨恵』についての話に耳を傾けていた。そして、自分たちとの功績を比較し若干自己嫌悪に陥ってしまった。そんな三人の様子を見ながらも益美は話を続けていこうとしたその時だった――――。
「先生! 大変です! 見知らぬ人から連絡です!!!」
聖哉たちが本部内に入ってすぐ正面にある大きなモニターを見るとそこには、昨日謎のローブ姿の者と話をしていた金髪ゴスロリのあの女性が映っていた。青い目をこちらへと向け不気味な笑みを浮かべていて何を考えているのかはまったく分からない。
『ふふ……どうも、jteのみなさん。初めまして。私の名前は夜雀沙夜よ。先日は私のお人形がそちらのメンバーの人たちにお世話になったみたいですけど……。私の人形はまだまだいっぱいありますので……。そうそう、我々「インパルス」は邪魔するものは一切容赦いたしませんのでその辺はわかってもらえると嬉しいですね……ふふふ……』
さて、『豊川梨恵』とういう名前が出ました。
只見と同じでOB・OGサイド的なキャラですね。
まだ出すかどうかはわかりませんけど……