第2話「能力者」
~事件現場の廃墟周辺~
聖哉たちが出発してから数十分後、事件現場である廃墟近くへとたどり着いた。
廃墟の周りでは既に警察がテープで一般人が入れないように規制していた。
聖哉たちは廃墟へと近づいていくが、そこで一人の警官に見つかってしまった。
「あ! 君たち、今ここは立ち入り禁止だよ! さあ、帰った帰った!」
警官は前に立ちふさがり、聖哉たちを追い払った。当然、警官としての仕事を行ったわけであるから聖哉たちはそれを非難したりするはずもない。だが、一度決めたことは諦めないのが彼らの信念である。
「沙良、アレで頼めるか?」
「うん、大丈夫だよ」
沙良が手を上にかざすと先ほどの周りが黒い霧のようなもので覆われた。そして霧が晴れたかと思うと、警官の視線の先に三人の姿はなかった。
これが瓜島沙良の能力、『闇』を操る力である。 沙良は『闇』を操り、『闇』を使って攻撃するのだが、攻撃するときの話はいずれ……。
「入れたな。とりあえず現場へ向かうか」
「ああ」「ええ」
廃墟内へと侵入した三人は、殺害現場と思われる場所へと向かった。
三人がたどり着くと、そこには異常光景があった。
「……すげえ血の量だな」
「ああ、並大抵の切り傷じゃない」
三人が見たものは男の死体があったと思われる場所にある壁一面に付着した血痕だった。
通常、殺人で使用される刃物と言えばナイフというのが主流だが、ナイフで切られただけではこれほどの血痕は残らないはずである。
「これでわかったな。おそらくは能力者か……」
「とりあえず、本部に連絡しよう。犯人捜しはそれからだ」
聖哉は携帯電話を取り出し、電話をかけた。
「はいはーい、こちら本部」
繋がった先から気さくな声が聞こえてくる。
「俺たちだ。昨日あった廃墟内で起こった殺人について仕事したいんだが……」
「まあ、アンタたちならそうすると思ったけどね……どうぞご勝手に~」
「……だそうだ。じゃ、任務開始!」
~都内・街中~
しばらくして、三人は街中を歩いていた。
こうしている間にも犯人は次の獲物を狙っているかもしれない、あるいは既に次の犠牲者が出ているのかもしれない。
「さっきから、聖哉は何を見てるの?」
「ん? ああ、SNSだよ。ほら、つぶやくやつ」
沙良の質問に聖哉は素っ気無く答えた。
つまり、聖哉の考え方というのは周りの情報を頼りに犯人の位置を特定するというものだった。ガムシャラに探し回るよりかはよっぽど効率のよい探し方だ。
「でも~それって誰も呟かなかったら、意味ないんじゃない?」
「まあな……っと、ほら、今日はツイてるみたいだな。ビンゴだ」
聖哉は微笑んだ。彼の見ている画面にはあるユーザーが『さっき何かめちゃくちゃ走ってる人がいた! 何か赤いものが見えたけど……あれって血なのかな……』と呟いていた。
聖哉はすぐ、能力を発動した。彼の能力は『電気』や『雷』を操る能力。使い方によっては様々なことができるようになる。そう、今彼が行っているネットでの情報収集などに……。
彼は能力でその端末から呟いたユーザーの端末の位置を特定してみせた。
「よし、わかったぞ! そんなに遠くない、急ごう!」
聖哉の号令で三人は走り出した。
~都内・『jte』管理局~
『jte管理局』、日本のありとあらゆる『jte』の行いを管理している場所である。
その中でもこの東京本局はかなり大きい。
「では、昨日の殺人事件の件については君が報告員だね?」
「はい。お任せください」
『報告員』とは、jteが何か仕事を終えた際、その現場へ向かい状況をこの管理局へ報告すること人物のことをさす。当然、彼らも『能力者』であることが多いのだが……。
「まさか、本当に君がこんなところに配属されるとはな……只見君」
只見と呼ばれた男性は礼をして部屋を出て行った。