2/2
第一譚 憑
○
工藤圭吾は、屋上で缶珈琲を啜っていた。
BOZZと書かれたそのメーカーの缶珈琲は、圭吾のお気に入りだ。
時刻は、午後六時。
今は放課後である。
一日の疲れをここで癒すのが、彼の日常である。
缶珈琲を飲みながら見る夕日は、格別だった。
「今日も終わり、か……」
今日は、本当に大変だった。
と、圭吾は今日一日を振り返る。
朝は何故か壊れている目覚まし時計を見て愕然とし、
一時間目の授業では指名されまくり、
昼休みには不良に絡まれ、
午後の体育ではボールを頭に当てられる。
――俺、なんで今日こんなに不幸なの?
と、圭吾は大きくため息を付いた。
朝のアナウンサーの話では、今日の圭吾の運勢は最高のはずだ。