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初めてこの能力の存在を知ったのは、人を殺したいと憎んだ時、憎んだ相手が死んだ時だった。噴き上がる血しぶきを全身に浴びながら、その時の私には何が起こったのか分からなかった。この惨劇が自分が引き起こしたことであることも、自分に宿っていた忌まわしい能力のことも・・・。
私、遠藤結奈は、その日までは自分を普通の高校生だと信じて疑ったことなどなかった。顔は整っているほうだと思う、自分で言うのもなんだけどかなりもてていたし、色素の薄い茶色がかった髪と、出るとこ出てて締まるとこは締まったスタイルは、友達に羨ましがられていた。151センチの身長だけが微かなコンプレックスで、もうちょっと欲しいなと思っていた。
少し特殊だったのは、うちは8つ離れた悠里と言う姉と2人暮らしだということだけ、両親は私が中学生3年生の時に飛行機事故で揃って死んでしまった。暫くたって周りが落ち着いてきたころ、親戚が私を預かってくれるというのを、当時既に一流企業に勤め、それなりにお金を稼いでいた姉が、頑なに拒み自分が育てると押し切った。
「結奈、よく聞いて。これから、おじさんおばさんたちがたくさん結奈に、うちにおいでって言ってくると思う・・・。お父さんとお母さんが死んだことで、航空会社から多額の賠償金が支払われることになったの・・・。だから、結奈を手元に置いてあわよくばって思ってる人がたくさんいるの・・・。悲しい事だけど、お金は人を変えてしまうわ。だから、おじさんおばさんたちに何を言われても、お姉ちゃんを信じてついて来て欲しいの。お父さんとお母さんの代わりに、これからはお姉ちゃんが結奈を守るから。」
姉は真剣な顔で、私にそう言い聞かせた。その時の私には、親戚たちが今までと違ってしまうなんて、思えなかったけれど、それから日をおかずして、入れ替わり立ち替わりうちに来ては、あの手この手を使い、私を言いくるめ自分のところに来させようとする親戚たちの姿を見るうちに、姉の言っていた意味が痛いほどにわかり、自分を守れるのは自分自身と姉だけだと思うようになっていった。
そんな環境の中で育ったので、私と姉は普通では考えられないほど強い絆で結ばれていたと思う。2人で助け合い、お金の匂いを嗅ぎつけた他人と親戚から、身を守ってきた。それでも、2人で暮らす生活は楽しくて、笑いが絶えなかった。
そして、卒業を間近に控えた2月に、それは起こった。