70話 妹と姉の出会い
前回のあらすじ
俺はある村に着く
それはゴブリンに襲われてたようだが、どうやら違う何者かが、もう退治していた
そして俺はある魔族の少年と共に流れの急な川が下にある崖までいく
そこに待っていたのは『魔界六柱』のNo,3
その少女は、俺の前世リヤナの妹でもあった
「お前を殺す。我が姉リヤナ」
その少女の声
「・・・またリヤナさん関連なんだけど」
俺のげっそりとした呟き
《なんか悪いね、徹夜。でも・・・妹か~(クネクネ》
いきなり俺の頭に響いたリヤナさんの声
ああ~、話せるんですか
だったら、なんでずっと黙ってたのかな~・・・?
というかクネクネすんな
《私に妹がいるとは思わなかった(キリッ》
キリッ・・・。とかうざったいんでやめてほしいです、はい
そんな文字だけなのにやってもらっても困ります
アッハッハッハッハ・・・めんどくせぇよォ~
なんだよこれ
なんか他人の家庭の昼ドラ並みにドロドロした話に巻き込まれてる気分
なんだよ、俺一応他人だよ?生まれ変わって俺になったからといって
別にお前らの家族って言うわけじゃないよ?
俺にはちゃんと元の世界に親はいるからね?
《いや~、悪いんだが徹夜。あれはお前もわかるようにリシに会う前の私と同じだ
どうやってかはわからんが、どうにかしてあの魔族の少年が言ったように・・・
救ってほしい》
「・・・はァ~」
肩をぐるぐると回しながら準備し始める俺
悪いけど、ここは最初から本気で行かせてもらおう
「死ぬ準備はできたか?」
その少女・・・ミルリアの手に電気が集まり始める
「来なさいな、二人に頼まれちまったんだからやるしかねぇよ」
「どういう意味だ・・・ッ!!」
その言葉と共に複数の電撃が放たれる
俺の命を刈り取ろうとする電撃
それが俺に迫る
「ふんッ!!」
俺はそれを素の拳で砕く
一発目は砕くが次にも攻撃は迫ってくる
俺は2発目、3発目は体をクルリと捻るようにして避けてから
4発目、5発目、6発目をすべて一回の蹴りで砕く
というか、電撃を砕くって凄いよね・・・
「俺はリヤナとは違う、お前とはただの他人だ」
電撃をしゃがむようにして避けた後には
横に転がるようにして3発の電撃を避ける
「そんな事は、知らないッ!!私はリヤナを・・・私からお父様を奪った女をッ!!
殺したいだけだッ!!」
いつのまにかミルリアの手には電気の剣が握られている
その剣はどこまでも伸び、距離をとっている俺を殺すために
横なぎに振るわれる
「・・・ッ!!俺はリヤナじゃない・・・だが、俺はリヤナの記憶を持っているッ!!
リヤナはお前と同じだッ!!」
電気の剣も素の手で砕きながら言葉をつなげる
正直、物理的に倒す事はできてもこいつを救う方法なんてわからない
ただ、なにか大声で言わないといけない気がする
「辛くて、悲しくて、寂しくて、・・・そんなリヤナの人生の記憶をッ!!
俺は知っているッ!!」
・・・はずかしッ!!
俺ってはずかしッ!!もう、やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!
「そんなわけがないッ!!」
ミルリアの叫び
「だったら・・・・だったらなんでッ!!
なんで死ぬときにお姉さまの顔は幸せそうだったんだ・・・ッ!!」
電撃がさらに激しくなっていく
「・・・私にはわからない」
ミルリアが一言呟いた
「わからない、わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない」
それは一言の単語を連呼しているだけだったが
どうにも、なにかが壊れているようで俺は少し怖くなった
「わからないから殺す、わからない事は理解できないッ!!
理解できないものはこの世から消えればいいッ!!」
ミルリアの右腕の服がはじけた
その服で隠された腕には生物には無い物が埋め込まれていた
紫色の小さな水晶。それが3つ埋め込まれている
その水晶から凄い量の魔力が放出されている
「なんだそれ・・・」
思わず呟いてしまう俺
《私が生きてた頃から続いてる実験ですね。人の体に魔法石という魔力の塊を
埋め込んで、存在自体を兵器にしよう。というものでしたが
まさかここまで進んでるとは思いませんでした・・・》
リヤナのそんな言葉
「お姉さまがニクイッ!!私にわからないものを手に入れたお姉さまが・・・ッ!!
理解する事ができないお姉さまがニクイッ!!ニクイニクイニクイッ!!」
それは本当に壊れているようなものだった
「コロスッ!!絶対にコロス!!全てがニクイッ!!
お父様に才能だけで見られたお姉さまがッ!!
努力したのに結果を出せずに見てもらえなかった私がッ!!全てがニクイッ!!」
ミルリアの手の水晶がパキパキ…と音をたてながら大きくなっていく
それは手を完全に覆っている。
その腕は大きな紫色のグローブでもつけてるんじゃないか、と思うほどのもの
紫色の水晶に覆われた右腕
あれは・・・
《完全に暴走してるね・・・あの状況はヤバイよ》
リヤナさんの言葉
「人殺しの才能だけを見られてるなんて普通は家族とは呼べないな・・・
どんだけ腐ってるんだか・・・魔王は」
俺のボソリとした呟き
元の世界で普通の家庭に生まれた俺にとってはこんなものはわからない
こいつの気持ちはわからない
少なくとも俺はわからない、リヤナならわかるだろうが俺にはわからない
「ゼッタイニコロスッ!!」
その言葉と共にその紫色の水晶から
100以上あるじゃないかと思うほどの数の電撃が放たれる
「こわっ!!」
闇を出してすべてを食らう、闇は電撃も例外ではなく飲み込んでいく
正直な所、今のミルリアは暴走していて完全に壊れている感じだから怖い
あんなのは初めて見る
ここで考えるべきなのは
「・・・どうやってあれをミルリアの体から引き剥がすか、だな」
救ってほしいと頼まれた。だから、絶対に殺さない
その間にも、何百と言う数の電撃が放たれ、それを一つ残らず闇が食らい尽くす
「闇は中に入れた物体を意識すれば、分解した後、再構成することで
鉄が別の新しい物質になるように、異質なものを与える事ができる・・・
・・・ということは「分解」の部分でやめたらどうなる・・・?
もし細胞にまで影響を与えてるんだったら、分解の後に「再構成」の時点で
工夫をすれば取り除ける・・・はずだと思う」
だけど・・・あれに近づくのは少し大変そうだ
闇で分解するときにはそれに集中しなければならない
そのときには攻撃が俺の体を貫く事は必然的だろう
「・・・コ・・・ロス」
完全に理性がない・・・ッ!?うわぁぁぁぁッ!!
怖いとしかいえねぇッ!!でも、やるしかねェッ!!
《徹夜、少し体を貸してもらおう・・・》
「は・・・?」
俺が何か言う前に、俺は脚が動けなくなり、体全体が動けなくなる
何故か、体の皮膚が黒くなっていく、闇を使って黒くでもしてるんだろうか・・・?
「アレに近づくのには、攻撃を食らう覚悟が必要だからね
そんな痛みまで徹夜に受けてもらおうとは思わないよ
徹夜の体ではあるが、痛みを感じるのは私だけ、決して徹夜は痛くないさ
体を返したときには治療は完璧にしとくから、痛みを感じる事はないと思う」
それは完全に女性の声
どうやったのか知らないが完全に声が変わっている
徹夜の体の手が動き、乱暴に髪を払う
払ったときに髪を縛っていた紐が切れて髪が広がる
その姿は完全にリヤナさんの生前の姿そのものだ
《髪を縛る紐をわざわざ切れる様にしなくて良いじゃないかッ!!》
ちなみに俺のツッコミ所はそこだ
わざわざ買うのはめんどくさい・・・あ、金属製のがあったんだった
後でそれを使おう
「悪いね、大雑把な性格だから
・・・悪いけど、この体。ボロボロになるまで使わせてもらう」
・・・勝手にしてくれよ、もう・・・
その次の瞬間にはリヤナさんは動き出している
電撃を闇で防ぎながら、どんどんと近づいていく
「ふふ、妹と会えると思わなかったし、まさかいるとも思わなかったが・・・」
どんどんと近づいていく
もう、ほとんど近距離で
今手を伸ばせば届きそうなぐらいだ
「・・・まさか、妹にハグしてやるときが来るなんて思わなかったよ♪」
え・・・?
その言葉と共にミルリアに抱きつくリヤナさん
俺の体なんだけどぉぉぉッ!!はずかしいじゃないかァァァッ!!
「・・・作業を開始する」
闇がミルリアの右腕を覆い始める
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」
ミルリアはそんな言葉を繰り返しているだけ
何をされているかわからない
ただ、自分の憎しみの相手が近くにいる事だけはわかるんだろう
ミルリアの体から電撃が流れ始める
「ぐぅッ・・・!!・・・・がァっ!!!」
その電撃はリヤナさんを苦しめる
その間にも作業はやめないようで、ずっとくっついている
「ふふ・・・お前も私と同様・・・ぐッ、
家族というものを、暖かい温もりを知りたかっただけだろう・・・ツッ!!」
さらに電撃の光が強くなる
「私も同様だったから・・ッ・・な・・・。よくわかる・・・ッ!!」
それにたいしてリヤナさんはさらに強く抱きしめている
「あんなクソな父親しか・・ッ・・いなかったんだ、辛かったね・・・ッ」
さらに、強く、強く抱きしめる
もう、闇の作業が終る。完全に水晶という異物が取り除かれる
ハッと我に返るようにミルリアの目に光が戻り、電撃が止む
「・・・これからは私を頼るといい、いつも徹夜の体の中で眠ってはいるが
・・・お前が私を呼べば徹夜の体に乗っ取りをかけてまで出てきてあげるから」
《おいコラ、その発言は何だ》
俺には聞き逃せないものが聞こえた気がする
「う・・・ん・・・。」
ミルリアの声が聞こえた
「・・・ごめんなさい」
涙をボロボロと流しながら謝っているミルリア
「大丈夫、許すよ」
リヤナさんは優しく言っている
「お姉様に会えて・・・嬉しい」
はっきりとした意識の声。さっきの暴走時の声とは違う
「私も会えて嬉しいよ、可愛い私の妹」
《生でドラマを見てる気分だ。李氏の時といい、このミルリアの時といい
なんでリヤナさんの時にはドラマになるんだ・・・?》
俺の疑問は無視された
「私もお前も鈍感だ・・・。近くにいる人の気持ちを考えれば、すぐに良い事があるさ」
チラリとリヤナさんは魔族の少年のほうを見る。少年はとても心配そうな顔で見ている
ミルリアの放っていた魔力は相当なものだったので、
近づきたくても近づけなかったのだろう
「・・・?。ロシアンがどうしたの?」
そのリヤナさんの視線を追って、ミルリアもその少年を見るが
意味がわからないようで疑問の顔を上げている
むぅ~・・・あれって一応俺の体だよね?
俺の体がめちゃくちゃ恥ずかしい事に使われてるよ
俺としてはとても恥ずかしいよ
なんでまだ抱きついてんだよ。しかもお互いに
「こういうのは自分で気づくべきだからね、私は何も言わないよ」
そういってニコリと笑うリヤナさん
「お姉様、私は・・・なッ!?」
ミルリアが途中で驚きの声をあげる
そして、いきなりリヤナさんを突き飛ばす
リヤナさんとミルリアの間の地面にはなにやら変な矢のようなものが突き刺さった
その変な矢のようなものが爆発した
二人とも爆発には巻き込まれなかった
だが、ミルリアは川の流れる崖のほうに立っていたため
爆発の勢いで川に落ちる感じになってしまった
「ミルリアッ!?」
リヤナさんが大声で名前を呼ぶ
ミルリアは気絶してるようで何も言わなければ、こちらを向きもしない
そして川に落ちた
そこで、リヤナさんが一緒に川に飛び込もうとして
それを、魔族の少年・・・ロシアンがリヤナの肩をつかむようにして止めた
そして、リヤナさんではなくロシアンが飛び込んでいく
「我が主の苦しみを取り除いてくださり、ありがとうございます
徹夜殿と我が主の姉君。いつかまた会えますように・・・」
ロシアンは空中で器用にもこちらにペコリと頭を下げる
次の瞬間にはミルリアを追うように川に落ちていった
「フハハハハハハハハハハハッ!!なにが『魔界六柱』No,6にも叶わないだッ!!
私はNo,3を排除したぞッ!!ざまぁみろォォォ、リーシ・トルゥマア!!
後は手負いの一人の敵を排除すればッ!!この私が『魔界六柱』の座にッ!!」
横からそんな声が聞こえた
リヤナさんがゆっくりとそちらをみると
魔族の大群。その先頭では大声で笑っている魔族がいる
徹夜とリヤナはわからないが、それは『魔隊』と呼ばれる部隊。300人ほどの部隊だ
そして先頭に立っているのは、そのリーダーを務める『魔隊筆頭』ゴルド
ゴルドと魔隊をあわせると301人だ
そのリーダーのゴルドは
前の魔界の会議でリーシ・トルゥマアに威圧され顔色が悪くなっていた男
あの時の会議でかいた恥を同じ『魔界六柱』であるミルリアに向けて発散したのだ
「・・・悪いね、徹夜。まだ体は返せそうに無いよ」
リヤナさんの・・・俺の体だけども・・・足元から闇が広がっていく
《・・・》
俺は何も言わない
「ひぃッ!?」
そのゴルドと呼ばれた男がリヤナさんから放たれる威圧により
気持ち悪い声をあげた。その顔には冷や汗が滝のように流れている
「私が600年前・・・『黒鬼』と呼ばれた力を見せてあげよう・・・」
その声は冷たく、なにも感情はこもっていない
ただ残酷に、容赦はなく、闇が動く、その魔族の部隊を一人も生かすつもりは無いように
その様子に、ゴルドも、そして『魔隊』の300人も怯えるように後ろに下がる
「ひ、ひるむなぁ!!相手は一人だ、殺せェ!!」
ゴルドのそんな大声
完全にひるんでるのはお前もだけどね
怒りに満ちた黒い鬼と魔隊と呼ばれる301人の魔族の部隊がぶつかり合う
それはリヤナさんの一人舞台。戦いと言うものよりも虐殺だった
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