69話 世の中にはまだ救われない者がいる
前回のあらすじ
徹夜は『黒い十字架』のボスを倒し
学園と闇ギルドの戦いは終了する
そしてエミリィと別れを告げ
また旅に出る
─ 魔界 ─
これは数日前のこと、徹夜たちは戦ってはおらず
まだ会議の途中のときである
戦闘から二日前の事である
それは徹夜が覗いた勇者の記憶
その二代目勇者の記憶の世界
そこは記憶の映像のほかに徹夜がいた
そして・・・
徹夜のほかにある少女が徹夜に気づかれずに忍び込んでいた
その少女の名はミルリア
『魔界六柱』のNo,3『魔雷』と呼ばれる重要な立場の魔族
その魔族の少女の目の前では
「リシくん!!」
「「「勇者様ッ!?」」」
「大国『サラスム』に転送の魔法で送ったのか。
それでいいのか?傷の負ったお前では到底私にはかなわないぞ?」
「いいんだ、これで・・・」
これはあのときの映像
少女も見るのははじめて、これが我が姉の最後の記憶
「俺ごとお前を殺し切る!!」
600年前の人物、二代目勇者のリシから光が周りを包む
「お前その魔法は・・・ッ!!お前の命と替えてまで私を殺すつもりがッ!!」
我が父である、魔王が叫んでいた
「・・・『生命最後の輝き』!!!」
勇者が強大な魔法を放ち
「・・・ッ!!『最強の闇の盾』!!」
それにたいして我が父は防御魔法を張っていた
光がそれ後と周りを包む
そこで映像が終わった
なにもない、真っ暗
「もう何も残っていない・・・か」
ミルリアはそれを呟くと徹夜はわからなかったが
意図的にこの世界から抜け出す
ミルリアは父である魔王がこの世界に、自分が抜け出した後来ていたことを知らないが
魔王が介入できたように、その娘である自分だって介入する事は可能だ
記憶の世界は勇者リシと我が姉リヤナを中心に構成されていた
属性は違うものの同じものから生まれた姉と私では、魔力などには似てるものがある
だからこそ介入し、見ることができた
「リヤナのせいだ・・・」
ミルリアはぽつりと呟く
それには憎しみと言う感情が染み込んでいる
「リヤナのせいで、お父様は私を見てくれないのだ・・・」
それは勘違い
あの記憶のあとにあったことを聞いていたのならば変わっていたかもしれない
「お父様が私を向いてくれないのは、リヤナの・・・あのお姉さまの
才能、力、実力・・・そして、最後の裏切りのせいだッ!!」
彼女は今自分の部屋にいて
その部屋には自分の部下である魔族の少年が黙って立っている
「殺す・・・あの徹夜という人間を、あの女の生まれ変わりを
絶対に殺す。ロシアン・・・あの実験を私に使用する。準備をしなさい」
ミルリアは歩き出しながらそんなことを言った
「ですが・・・」
魔族の少年・・・ロシアンという少年が口を開いた
当然後ろについていっている
「今の私では届かない、あのお姉さまには絶対に届かない
だから、無理にでも底上げをする」
「あの実験には危険が・・・」
「いいから、早く準備をしなさいッ!!」
「・・・ッ!!」
ロシアンは苦い顔をしながら唇を噛む
「あなたはいつまで苦しむのですか・・・」
ロシアンがそんな事を問う
「・・・わからない。そんな事は私にはわからないッ!!
だけど、絶対にお姉さまを殺せば、絶対にお父様は私を見てくれる
だから、ロシアンは私についてきてくれますか?」
「我が主はあなたです。着いていく事は当然の事です
ですが・・・」
ロシアンという名の少年はそこからなにも言わなかった
「・・・(ですが、あの魔王様はその程度では見てくれません
いつまであなたは苦しまされるのですか?何故あなたは他を見ようとしないのですか?)」
ロシアンはミルリアよりも魔王のことを理解していた
ミルリアの部下となり、もう何年もすごしている
それは魔王のことを理解するには十分の時間だった
「さぁ・・・いこう」
ミルリアがさらに足を早く動かす
「・・・はい
(・・・誰か我が主を助けてはくれないだろうか?僕にはそれは不可能なのか・・・?)」
少年の言葉の裏には
リヤナやミルリアが求めている暖かいものがあるに違いは無かった
・・・だが、ミルリアは気づかない
─ ─
この日は学園から離れて二日
その間は、王都から学園に行くまでの道は使わず
遠回りをして行っている
いろいろと遠回りをして、観光などに行こう、という感じだ
「む?あれはなんだ」
ラルドさんのそんな声
その目の前には煙
「業者、急いでくれ。あれが気になる」
『はいッ!わかりました』
馬車の業者をせかす
そして律儀にもスピードが上がる
それはすぐにわかった
村だ、村がなにかに襲われて煙が出ていた
村では緑色のぶよぶよとした生物の死骸が多い
「・・・ゴブリン」
ライルがその生物の名前を言った
緑色の気持ち悪い生物はゴブリンらしい
そしてすぐに村に着く
村の中は荒れていて、人の死体もあった
そして奥に進んでいくと
村人達が見えた
どうやら一番頑丈な建物に逃げ込んでいたらしく
ボロボロの体だがそれなりの数が生き残っている
ハクは馬車の上に乗って、まわりを警戒していてラウは馬車の中にいるように言っておいた
「どうしたのですか?」
ラルドのそんな問い
村人達が立てこもっていた建物の前では異様にゴブリンの死体が多い
どうやら、気づかれてしまい、扉をこじ開けようと集まってきていたゴブリンだろう
「・・・ゴブリンたちに襲われたのです」
村長のような男性がそんなことを言ってきた
「このゴブリンたちはあなた達が・・・?」
俺が誰でも疑問に思うようなことを聞いた
ゴブリンの死体のことを質問しているのだ
「いいえ、誰だかわかりませんが殺していきました
私達は外を見ることができずに扉を押さえていたのですが、突然
外が静かになったな、と思いました、一応警戒したので30分ぐらいはそのままだったのですが、おかしいと思い外に出てみると村に侵入してきていたゴブリン共が全て死んでいた、
というわけでございます」
訳がわからなかった
ゴブリンたちを殺して、そのまま去る冒険者・・・?
だが、冒険者はだいたいは金にがめついのが多いから
あまりそんな事は考えられない
ラルドさんと村長などが話してる間
おれはなんとなく周りを見てみることに
「こっちにも死骸があるな」
俺の目の前にはゴブリンの死骸
その体からは緑色の液体が流れ出ている。人間でいう血というやつだろう
ゴブリンの傷はまるで焼き斬られたようなものだ
すると、服をひっぱられた。そちらを見てみると
少年が一人いた
「我が主がお前に会いたいといっている。おとなしく来て貰おう」
その少年の肌は黒く
完全に魔族だ
「従わないのならば、村人を殺す」
「・・・いいだろう」
少年が歩き出す
それについていく俺
「どこまでだ?」
「ここからまっすぐ行く所に、下に流れの急な川のある崖がある。そこだ」
ふむ、と短い相打ちをする
「それにしても、お前・・・。とても楽しくなさそうだな」
少年はどこか悲しそうな顔がしてるのが気になる
「仕事をしているのだ。楽しいわけがあるまい」
「いや、そういうわけじゃないんだけどな・・・?」
確かに仕事で楽しそうにしてるのもおかしいと思うが
これは何か違う気がする
「・・・」
「・・・」
少年は黙り込み
俺も黙ってしまう
「・・・」
「・・・」
そして静寂の時間は続き
それを、少年が壊す
「・・・我が主を」
「?」
「我が主を救ってほしい・・・」
「ん?」
「我が主は物心ついたときからずっと苦しんでおられる
それを救えるのはあなただけだ・・・」
「なんでそう思う?」
この会話の間にもどんどんと歩いていく
この会話にはまるで重いものが込められているように
ゆっくりと進んでいく
「・・・それはあなたが姉だからだ」
「は?・・・俺は男だぞ?・・・(髪の毛を縛らなければ間違えられるけどな・・・ハハ・・・ッ)」
「いや、姉であっている
あなたは自分の妹を救わなければならない。これは絶対だ
・・・もう着くか。どうか、我が主をお願いします」
最後にペコリと頭を俺に下げると、表情を戻し姿勢を戻した後
そのまま歩いていってしまう。俺はそれについていくと
その崖にはある少女がいた
「私は『魔界六柱』No3、『魔雷』のミルリア。私が私のためにあなたを殺す
・・・我が姉、リヤナよ」
その少女はそんなことを言った
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