126話 終盤フラグ回収!
やばい、これ12月になる前に終わらせられない。
…計画通りに進められない俺に対して、いつもイライラしてるのは秘密です。
「…終わりましたね」
栞が、ふぃ~…という感じで息を漏らし前へと掲げていた手を下す。
すると栞の前の台に寝かされていた少女……要がすんなりとした様子で起き上がり立ち上がる。その顔には今までの苦痛の表情とは違い、楽そうにしている。
「治してくれて、ありがとー!!」
「……痛いですから、手を振り回さないでください」
振り回される手からは栞自身の血もまき散らされているわけでして。
ちなみに栞の体には包帯を巻かれてはいるが、やはり治療魔法で完全に治療しているわけでもないし止血しているわけでもないので、それなりにいい姿とは言えない。
「…治療するわよ、えっと……」
「栞です…景山 栞。
私の治療は魔力の無駄になるのでいいですので、堕勇やらの始末をお願いします。あなたのペットの二匹の怪我を治して、すぐに掃除に行ってくれると助かります」
「そう? 止血だけでもしておいた方が…」
「本当に問題ないです。こんなことで魔力を使わせるわけにもいきませんので……どっちにしろ、私はもう魔力もほとんど使って戦えませんし。
できたらほぼ絶好調の状態のあなたに、これを終わらせてほしいです…私は、早く家に帰ってぐっすり寝たいです」
「……わかったわ」
栞の言葉に要は頷き、虎光とサンの方へと走っていき治療魔法で傷を癒す。
要は治療魔法は結構得意な方だ。
そのおかげか、虎光とサンの傷はすぐに治っていく。完全に治療し終わると二匹とも元気に立ち上がる。虎光もサンも今まで苦しんでいた要を見ていたので、嬉しそうな表情だ。
「……虎光とサンには少し負担がかかるけど、せっかく治してもらってお願いされちゃったからね。最初から飛ばして行こう」
どこから取り出したのかナイフを手に持った要は浅く手のひらを斬る。
その血は…二匹の獣を狂暴化させる。
─ ─
「…ッ!!」
ジュチャチャチャァ…(気持ち悪い音)と共に地面に着地する中年(?)…その名は勘島 得。
略してカントクだ。
カントクは折れた自分の剣を捨て、そばに転がっている死体の剣を拾う。
「十年ぶりにあなたとは会いますが…なかなか斬新な変身をしましたね。
いや、十年よりも前でしたかな? たしかあなたが一番ご執心だった妃様がお元気に生きていた時代でしたので…」
カントクが見つめる先には一人の男。
「ほう…お主と会ってから、そんなにも時間が経っていたのか」
その男はジパングの王。
だが…泰斗があった時とはその姿は違う。髪は白くなり、老いておいても普通であった肌は白くところどころがひび割れている。
そして……カントクに切断されたらしき腕が、気持ち悪い音を立てながら再生した。
「本当に変わられましたね……その腕の現象を見る限り、人をやめたとみていいでしょうから」
「…これは、本当はアイツを生き返らせるために研究させていた魔法だったのだがな……何をどう間違ったのか、こんな愉快なモノが生まれたのだ。
なかなかのモノだろう?」
「……私にはわかりませんな、そういうのは」
次の瞬間にはカントクがジパングの王に斬りかかるが、それをジパングの王は腕で受け止める。それは当然腕に食い込み、骨まで切り裂いたところで王は持っていた刀をカントクへと振り…それを後ろに下がる形でカントクは避けた。
「これではなかなか…終わりが見えないな」
カントクがボソリとそんなことを呟いているときには、ジパングの王の腕は再生して何事もなく立っている。
それに対して王がにやりと笑った瞬間に…
…その視界は反転し、空中を舞っていた。
「んん?」
不思議そうな声を上げた王の視線の先には首のない自分の体とこちらを見上げて驚いているカントクが見えた。
そして…その首は砂のように崩れてなくなり、首のなかった体にはしっかりと首がついていて未だに王は不思議そうな表情になっている。
「首を切断しても死にませんか……本当に厄介ですね」
そんな少女の声。
「やっと来たか…ニィ」
それに対してカントクは声の方を向き…そちらにはニィがナイフを振り回し空気の斬る音を鳴らしながら立っている。
その後ろ…詳しく説明すれば、その後ろの空には魔族のモノと考えられる飛行艇や戦艦が空を占領している。
それを目を見開きながら見上げているジパングの王の体が十字に切断された。
それでも次の瞬間には元の体へと戻っている。
「……ですが、なかなか面白いですね。どうせなら、どのぐらい切り殺せば死ぬのか試してみましょうか」
ニィは不敵に笑いながらジパングの王を見つめる。
「それにしても……痛みは感じるのでしょうかね? 痛みを感じるのであれば悲鳴ぐらいあげてくれてもかまいませんよ?
まあ、白髪の老いた男の悲鳴を聞いたところで何も嬉しくありませんが…」
ニィさんは……ドSです。
─ ─
「くっそ、いってぇ~ッ!!」
奈菜が刺さったであろう体の箇所を抑えながら、そんな悶絶の声を上げている。
「うわぁっ」
「ッ!!」
今まで上にあげていたツタを奈菜が切ったせいで、落ちた美月は俺が発生させた闇で受け止めるが、その闇は美月に触れた瞬間に消滅する。
まあ、まともに落ちないようにのための闇なので問題はない。
「けふっ」
血が口からぁ…。
「おいコラ、奈菜!! ちゃんとツタを切断してからのことも考えてやれよ!」
「あ~、ごめん徹夜くん」
俺の言葉に対して奈菜は本当に申し訳なさそうに誤ってくるが…なんか反省はしていなさそうだね。
「お前…なんで生きてる? しっかりと心臓を貫いたはずだが?」
「ん~?」
里稲の問いに奈菜は改めてそちらを見て、何かをゴソゴソと探し取り出した。
それは可愛いとは決して言えない不気味な人形。
その人形の胴体には二つの穴が開いていた。
「これはね~…ボクが作り出した魔法具の中で一番のモノなんだよ。だって、一回限りではあるけれど、死を無効にできるんだもん。
まあ、作るのに時間も魔力もかかりすぎて三つしか作れなかったけどね」
これぞご都合チート魔法具!
「まあ、死んだ理由になった傷をなくす…というだけだから、ボクは心臓を貫いたツタで死ぬ、のではなく心臓と他の体の場所を貫かれて穴が開き、それでの大量出血で死ぬということにしないと…消えるのは心臓を貫かれた穴のみで面倒だから、死なないように一人で頑張ってたんだけどね」
誰も心配して近寄ってきてくれなかったけど…という寂しそうなことを呟いたのは気のせいだと思う。
「それに、これは痛みを消すわけじゃないからね…そうっとう! 痛いんだよ!
そのおかげで他の二人も結構な時間を痛みで動けずじまい……まあ、痛みでショック死しなかった分、いいと思うけど」
「何を言ってるんだ? お前…」
「ん? ああ、ボクが言ってるのはね……ルルと炎の二人のことさ」
どうせ、この展開も読者様には読まれていたさ…そう考えてしまう、今日この頃。
というかマジで計画通りにいかない。テスト期間中の午前に学校が終わるときにもうちょっと書いとけばよかった。
誤字・脱字があればご報告よろしくお願いします。