124話 サブタイトル思いつかねぇんだよッ!!
何故かキレたサブタイトル。無視してください。
そろそろ本格的に番外書き始めます。
「っ…オラ!!」
「ッ!!」
…体ごと勢いをつけるためにグルリと回転しながら鉄の板がいくつもくっつき固められたような大剣を振り回しながらも、美咲へと向けて振り下ろす。
それは美咲の腕で遮られ、勢いよく振り下ろされた剣を受け止めた結果…衝撃波のようなものが美咲を中心として発生した。
「「ッ!!」」
その次の瞬間には美咲は防御に使っていない手、そして奈菜は『重の大剣』を振るっていない手に持っていた十字架の形をした槍。
それらの二つが交差し、爆発した。
奈菜の槍が放たれ、それが地面にぶつかったことで爆発が起こったのだが…二人ともそれに身を任せてお互いに距離をとった。
奈菜の頬はかすかに削れており血が出ていて、美咲の横腹も奈菜の頬と同様に抉れている。
要するにどちらも攻撃を食らっていた。
「まさかレディーの顔を狙うとはね…いや、ボク自身レディーなんて思ってないけど」
「……わざとじゃないもん」
もん、ってなんだ「もん」て……気持ち悪いわァ!
そんな会話のなかでも菜奈は動いており、蹴りを右から左に振り抜くように放つ。
見た目はただの蹴りだが、その足のさきには見えない剣がついている。
「…ッ」
菜奈の振るった剣が、どの程度の長さかは美咲はまだ確認できていないのでしゃがんで避ける。
「ソレで避けたとは思わないでねッ!!」
菜奈は体をそのままの勢いでくるりと回り、回った結果美咲の方を振り向いた瞬間に下から上に向かって蹴りを放つ。
だが、それは振り抜くことはできず振り抜く前に美咲の足が菜奈の足を押さえ込んでいた。
「…くらえ」
そして美咲の拳が菜奈を吹き飛ばした。
それでも菜奈は足に装着してる魔法具で体制を建て直し、目に見えない剣で斬りかかるが、美咲が菜奈に向かって放ったもう一方の拳とぶつかり砕けちり、このまま菜奈を再び吹き飛ばした。
当然それは、菜奈自体に当たったわけではなく、槍に受け止められていたが美咲の魔力を込めた一撃は槍のヒビを大きくした。
菜奈はそれを確認しつつも空中で一回転し、スタリ…と両足でしっかりと着地をする。
「やっぱり不可視の剣の欠点は他よりも耐久力がないってことかな。
リミッターを外したこの槍も限界みたいだし、そろそろこれも壊れちゃうし…本当の最高の一撃を放ってから壊しますか」
「……?」
美咲が不思議そうな表情になるのを無視し、菜奈が槍を再び両手持ちで構える。
それは光を集め始め、どんどんと明るく眩しいものへと変わっていくが、それだけではなかった。
「これが、ボクが造ったこの武器の本当の実力だよ…美咲」
槍は光を吸収し続ける。
刃にどんどんと溜め込んでいくのだが……どういことか、刃の周りには光が存在していない。
真っ黒の闇が刃の周りを囲んでいるのだ。
「こいつの本気の吸収速度は光の早さを上回る。
こいつが食べたところには、当然光がくるわけだからすぐになくなった光を補うけど…その光さえも刃の周りに近づく事も出来ずに食われるんだよね」
菜奈が槍をくるくると回すと、空中に微かに闇が残るがそれはすぐに光によって消されていく。
だが、やはり槍の刃の周りは真っ暗である。
光の集め一点に集中して一撃を放つ槍が、光に消されることのない真っ黒な闇を産み出す。
「ガチでヤバそうだな…」
「さすがに本気でやらないと死んじゃうよ……美咲」
しっかりと持ち美咲に向けて槍を構える菜奈。
それに対して美咲は狼の姿へと変わっていた。
どちらからも莫大な量の魔力が体から漏れ出している。
二人の周りの小さな瓦礫やらが耐えられずに、粉々に砕け砂のような状態になるほどの魔力であり…どちらもおそらく今まで行ってきた戦闘のなかでも最高の一撃だ。
真くんの力のせいで、元々ボロボロな城だが…さらにボロボロになっていく。
そして、小さな瓦礫だけではなく、菜奈の足元の床さえも砕けてなくなる……そんな瞬間に菜奈は飛び出した。
「…『天国の十字架』」
「……『狼王玉』」
その次の瞬間には、光と闇の混ざる十字架が菜奈の槍から放たれる。
そして、狼の姿の美咲の前方にいくつかの魔方陣が現れ重なり、そのいくつも重なった魔方陣の中に高濃度の魔力の塊てある球体がつくられ…それを美咲は放った。
二つの攻撃がぶつかり、爆発する。
どちらもすさまじいほどの威力だが少しだけ菜奈の方が上回っており、爆発の煙の中から光の槍が美咲へと突き進むが、それは美咲にあっさりと砕かれた。
簡単に砕かれるほど威力が削られ訳だ。
その後の爆煙から菜奈が飛び出した。
その手にはひとつの剣が握られており、もう一方の手に持たれていた槍は粉々に砕けて消えた。
「…『解呪の剣』」
菜奈はそれを振りかぶる…目標は美咲の額の変な魔方陣だ。
「ッ!!」
それに反応して美咲の鋭い爪が、その剣の刃を砕く。
その次の瞬間には、菜奈の左肩辺りに美咲が大きな顎で噛みついた。
肩の骨がミシミシと悲鳴をあげ、思わず痛みで顔を歪める菜奈だが、その顔はニヤリとした顔に変わった。
「言ったよね、これは『解呪の剣』。名前の通り呪いを切る剣……刃なんてものは関係、ないッ!!」
刃の消えた剣を美咲の額へと突き刺し、光が辺りに満ちる。
その光が収まりなくなると、美咲に噛みつかれ、血が出ている腕をおさえながら立っている菜奈と老人の呪いと呼べる魔法を強引に解いたせいか気絶している美咲がいた。
その額には今まで存在していた変な魔方陣のようなマークは消え去っている。
「…さて、徹夜くんの方にいかないとね」
菜奈は体を重そうにしながらも、未だに昇り続ける紫色の光の柱のもとへと歩いていった。
─ ─
振るわれる剣。
後ろから徹夜の首を切り落とそうとする剣は徹夜がしゃがみ、何も切り裂くことなく通過していった。
振りぬかれた剣は今更不要と言わんばかりに全部ではないが数体の人形を切断し灰にする。徹夜は相手から離れるために大きく前に跳び、振り向き相手を見た。
「なかなかの反応速度じゃのぉ…後ろを見ていない時点で反応速度を気にするべきではないと思うが」
いつもご老人のお世話をしている人形から20代後半の男が飛び出していた。
男は徹夜が攻撃を避けたことに驚きの声をあげているが、一つにまとめられていたはずの徹夜の髪はふわりといった様子で重力に従い髪一本一本が自由に落ちた。
別に髪が切られたわけではないが、ちょうどよく髪をまとめるのに使っていたものだけを切られたのだ。
というか、いつも老人を演じていてクセになったのか老人の喋り方ですね。
「その剣…」
まるでぬいぐるみを内側から突き破ってきたといわんばかりの登場であるが、その手には徹夜にとっては少し見覚えのあるものだ。
実際、徹夜以外にも奈菜や美月も知ってはいるが…三人とも知っているものは少し違う。
その形は大鎌ではなく剣だった。
「見覚えがあるじゃろう? これは奈菜の世界の死神の鎌とお主がもともといた世界の魔剣を合わせたものじゃよ。
あの死神の鎌の欠点は耐久力が弱いということじゃ…それこそ勇者ほどの力があれば折れる。
だから、魔剣の再生と強固を合わせたわけじゃ」
「…ふぅん」
相手の説明に徹夜は軽く返事した。
その目の前で老人だった男…ここは正直にグレモアと呼ぼう(グレモアってカタカナだし色々とめんどくさいんだよね)。グレモアの足元にある徹夜の髪を纏めていたゴムが灰になり消えた。
ここで今の状態の徹夜の説明をすると今の闇を混ぜた状態の魔力消費は相当なものだ。実際、徹夜だけの魔力でならば5~10分程度しか使えない。
おそらく10分は本当に満タンの時なので今の徹夜には無理……なので、使用している魔力はリヤナさんがため込んでいた膨大なものも含まれている。
それでも30分行動できるかだ。
そして、相手はこんなにも魔力を消費する徹夜の運動神経でもギリギリ…しかも完全には避けきれなかった。
これが数百年と生きている勇者の実力である。
「時間もあんまないし…やるか」
徹夜くん、今回は珍しくあまり喋らない…というか無口である。
「あまり焦らずともいいじゃろうに…」
グレモアが、そんなことを言っているが徹夜はすでに跳びだしており、普通の……勇者でも追うのが難しい速度でグレモアに迫り、拳を振るう。
グレモアがそれに向かって剣を振るい、徹夜の拳とグレモアの剣がぶつかり…どちらとも吹き飛ばされた。
魔剣と死神の武器を合わせたモノは、ただの武器ではない。死神は不完全ではあったが元は神の中位である魔神…そして神の下位の力を持っていた魔王が作った魔剣。
それを合わせたモノは神話に出るような強力な武器…適当に考えて、わかりやすく名前をいってしまう『神器』(神が使う武器…ということで)の域にある。
だが、徹夜には何百年という魔力を使い闇を体に混ぜ…身体能力をあげた徹夜は……相手の剣と同様か、それとも上回るレベルだ。
吹き飛ばされ距離が離れた二人だが、次の瞬間には二人とも急接近し武器と拳がぶつかった。
「…ッ!!」
「本当に、なかなかに手強そうじゃのぉ」
グレモアは短くククク…という薄気味笑いを浮かべながら、徹夜を見据えている。
それに対して徹夜は黙ったまま、体をにひねり回し蹴りを放つ。それをグレモアは剣でガードするが、そのまま徹夜の力に押され吹き飛ばされる。
「ワシが何百年と生きて、この実力なのじゃが…お主は十数年生きて、ここまで辿り着くか。
……本当に、厄介な奴じゃ」
グレモアはそんなことを言うと、手が翼になっている人形が回り込み。
それにグレモアを乗せて空へと飛んだ。
「…待て」
それを追って徹夜は大きく跳び、グレモアに向けて拳を放つがそこは空中。
ただ跳んで拳を放った徹夜とは違い、移動方法のあるグレモアは簡単に避ける。
「空中では避けれまい…」
一瞬で後ろに回り込んだグレモアは、徹夜に向けて剣を振るう。
だが、次の瞬間には徹夜が消え…グレモアの背中に徹夜の蹴りが食い込み、グレモアを乗っていた人形ごと城へと吹き飛ばした。
城に激突するまえにグレモアは体勢を立て直すと、人形に再び乗り…徹夜の方を睨むようにして見た。
その徹夜は空中に浮いている。
「悪いな、移動方法はあるんだよ……この状態だと、足場がなくたって問題ないからな。
…やばい、この状態で喋ると疲れるから無口キャラに戻ろう」
無口キャラの理由はこれだったり…。
何故、空中に徹夜が浮いている理由。
それは浮いているというわけではなく、立っているという方が正しい。徹夜は全身に闇を混ぜ込んでいるわけだが…闇は意識すればほぼすべてのモノに干渉できる。
ならば…足だけという条件を付けて空気を意識すれば足元がない空中でも立つことはできる、というわけだ。
下手したら全身を空中で固まりそうでもあるが…そこはリヤナさん担当なので問題はない。実際戦いながらそこまで細かい事のできない徹夜だったら、やらかすかもしれない。
「本当に厄介な奴じゃ」
「そりゃ、どうも……」
グレモアの言葉に短く返す徹夜
(※今更なのですが…グレモアと書くべき場所を、つい老人と書いてしまいます。なのでできるだけ直しながら書いているのですが老人とミスってる場合があります、正しくはグレモアです。老人で正しいときにはルビでも入れておきます)
そんなこんなで空中でぶつかる剣と拳。
一旦離れた徹夜はジグザグに空中を跳びまわり、それに対してグレモアは人形に乗りながら徹夜をしっかりとみて徹夜の動きに反応している。
そして、その次の瞬間にはグレモアと徹夜の蹴りがぶつかり合っていた。
「魔力の消費も相当だし…そろそろ終わらせる」
短く徹夜はそんなことを言う。
それと同時に徹夜の拳をグレモアは剣で受け止めた…その瞬間に徹夜の頬に走ってる黒い線からプシャリと血がはじけ飛んだ。
グレモアの攻撃を受けたからではない。
「魔力の消費も理由の一つなんじゃろうが……やはり、その状態では体がもたないようじゃな」
「……」
無言のまま徹夜はグレモアに大振りの蹴りを放ち吹き飛ばした。
それを追って飛び出す徹夜だが…グレモアも徹夜もお互いの攻撃はまともには当たっていない。
なので、グレモアは吹き飛ばされて埃が服についていたりはするが血は出ていないのだが…徹夜が動いた瞬間に血のしずくが周りに飛んだ。
「…倒さずに時間稼ぎをすれば勝つこともできる。厄介は厄介であるが、長い時間戦えないのであれば倒す事は容易い」
「俺が、そこまで時間をかけさせると思うか?」
老人の時と変わらず不敵な笑いを浮かべるグレモアに対して徹夜は特に反応をすることなくグレモアへと迫る。
だが、それに対してグレモアは剣を振り下ろし、魔力や体の限界が近いため焦ったのか徹夜はもろでそれを受けることになり下に吹き飛ばされる。
「……今の状態では斬れないか…斬るためには魔力がなくなって少し弱れば、その体を斬ることも可能じゃろう。
まあ、それもやはりは時間の問題というわけじゃな」
説明した通り、剣と同じ…または上のレベルまで行っている徹夜の体は今の時点では斬ることは不可能だろうが、徹夜は時間が経つほど力は弱まっていく。
なので、あと数分か十分すれば徹夜でも避けなければいけない状態へとなる。
「…だから時間がないから次で決めるって、言ったんだッ!!」
徹夜は吹き飛ばされた場所から一気にグレモアへと迫る。
その勢いのまま徹夜は体全体で勢いをつけ、ぐるりと回りながら蹴りを放つ。それに対してグレモアは剣を振るい徹夜の蹴りとグレモアの剣が激突する。
「……ぅらァァァァァ!!」
今回の戦いで初めて掛け声とともにさらに力を込めて足を振るい、グレモアを思いきり吹き飛ばした。
それを追うために徹夜は空気を蹴って、吹き飛ばされたグレモアに再び迫る。
再び剣を振るってきたグレモアに対して、徹夜はそれを腕で弾いてさらに近くへと迫る。
「俺はな……こんな能力を使ってるから、結構勘違いされやすいんだ」
「……何がだ?」
徹夜は拳を構えている。
というか、こんな時でも会話をできるという二人の余裕。
「俺は闇をいつも使っているが……魔力は使っているが、それはあくまで魔法ではなく能力だ。
この体に闇を混ぜ色々な能力が上がっている状態で、そしてお前を倒したあとに必要な魔力は闇を一分使えれば問題はない…つまり何百年とため込んだ魔法を一気に使える」
徹夜の周りには黒の魔法陣が浮かぶ。
その瞬間に今まで以上の魔力が徹夜から、流れだし…世界を揺らした。
「ッ!?」
驚きに目を見開くグレモアに対して徹夜はゆっくりと口を開き、そして構えた拳が魔法陣に向けてゆっくりと突き進む。
「……『黒の魔力』」
徹夜の拳が黒い魔法陣を叩いた瞬間に、魔法陣から黒い魔力が一気に放出された。
それに対して老人はそれを切断するかのように剣を振るうが…剣が一瞬のうちに砕け、老人ごと吹き飛ばした。
吹き飛ばした黒い魔力の塊は、徹夜から1㌔離れたところで世界にヒビが入り…そのヒビの中に消えてなくなった。
世界にヒビを入れるほどの威力。この状態の徹夜の放つ攻撃は、それほどまでの威力が込められていた。
「……予想よりも魔力が少なかったか。跡形もなく消し飛ばすつもりだったのに」
徹夜の目線の先には徹夜の想像上とは違い、落ちていくグレモアの姿があり…そのまま瓦礫だらけの城へと落ちた。
それに対して徹夜も城へと着地した。
徹夜の目の前には…剣で微妙に徹夜の攻撃の軌道を反らしたのかグレモアの上半身の左半分が消し飛ばされているが、息はあるようで死んではいない。
そんな状態でも意識はあるようで、喋りはしていないが…こちらを見ていた。
「……ふぅ」
「終わったようだね、徹夜くん」
「おう、奈菜か」
声のした方を見ると当然、奈菜がいる。
実際、徹夜がグレモアと戦っている最中には奈菜は来ており…なんか入ってくの辛そうだな~、という感想の元。
ずっと観戦していた。
「その姿は? なんか辛そうではあるけど」
ずっとしかめっ面してるからね。
「気にするな」
そんな軽い会話をしている奈菜と徹夜。
油断しきって軽い会話をしている二人だったが……次の瞬間に目の前の床から何かがいくつも飛び出し、奈菜を貫いた。
「が…ッ!?」
奈菜が、そんな声を漏らすとともに徹夜にもそれが迫った。
美咲くんの最後に放った攻撃の名前のテキトー具合。
もう終わりが近い~。
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