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俺は闇、幼馴染みは光の勇者様  作者: 焼き芋(ちーず味)
第三章 セカンドワールド 堕勇と勇者の戦争
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121話 負けず嫌い

奈菜は吹き飛ばされた勢いを空中で魔法具を使用して全て殺し、城の……城のどこかわからないところに着地した。

真くんが色々と吹き飛ばし、その影響で城の上の方はそれなりに崩れているので空が見えている。


「老人を相手に一人だけど…徹夜くん、大丈夫かな?」

奈菜は先ほど吹き飛ばされる前にいた方角を見るが…その先には奈菜を追ってきた美咲が狼の姿で移動してきていた。

奈菜の前に着地し、人の姿に戻る美咲。


「…悪いな。俺が命令を理解する前に、もう奈菜の事を攻撃していたよ」


「あんまり気にしてないよ。老人がいるからどうしようかとは考えていたけど、美咲はボクがどうにかしようと思ってたしね。

…ただ、さっきの攻撃で上着がボロボロになっちゃったんだよね。この戦いで最後みたいだし、アレで引き締めようかね」

そんな事を言った奈菜は上着を脱ぎ始める、上着の下は別に下着というわけではないが…それなりに薄い服だ。

当然、奈菜はそれを分かっているから脱いだのだが、美咲は知らない。


その服を確認する前に一瞬だけ美咲は目を慌ててそらそうとしたが、それを確認した美咲は少し残念そうにしていたのは…まぁ、いいんじゃね?


「…これこれ」

そして、その美咲を気にしない奈菜。

そんな奈菜が取り出したのは一着の服。それは徹夜たちの世界のモノとは違うが、軍服のようなデザインの物だ。

…というより、ある国の軍服である。


「それは、あいつのか…」


「まあ、そうだね…確かに先生のだよ?」

美咲の言葉に返答をする奈菜。

先生、とは…奈菜が最初に召喚された世界で奈菜に戦い方を教えたSSランク(だっけ?)の少年の事である。

少年は動きやすくて何着か簡単に手に入ったので、その軍服を愛用していた。

奈菜の持っているのは、その一着である。


「なんで、奈菜がソレを持ってるんだ?」


「ボクが少しある事で服がダメになったときにね…もらったんだ」


「ふぅぬ…」

奈菜の答えに短く返した美咲。


「ん……何を不機嫌そうにしているのかな? 美咲は異世界でボク達がお風呂に入っているときに覗こうとしてたじゃないか」


「そ、それは昔の話だろ! それに結局見れずに、女子勢にこってり絞られたしな…仕置きに拷問を使うやつらは始めてみたよ」

美咲さんは……昔は徹夜よりも主人公をしていたらしい。

そんな事は置いといて、軍服を着た奈菜はそれなりにサマになっている。


「…いい加減に、あいつに拘るのをやめないか? 奈菜。

その口調だって、戦闘スタイルはしょうがないが…数字で言えばそれほど長くは経っていないが…短くもないぞ?」


「じゃあ、ボクに勝てたら直すかどうか考えてあげるよ……それに老人にボクを殺すように〝命令″されているでしょう?

いい加減に始めようか」


「……」


「あのね、知ってる? 美咲」


「何をだ?」


「ボクはね…昔はお嬢様だなんだかんだ言われていたけどね。実際今は無理を言って一人暮らしをしているんだけど、それなりに良い家柄に生まれたことは確かなんだよ。

でもね…表面上おっとり静か、を演じていたけどボクは昔から負けず嫌いなんだ」


「…家の話なんてしないから、ほぼ初耳だな」


「そりゃあ、異世界から戻ってからは色々と問題があって両親と会うのが嫌だから…それを友達に言うのは嫌だからね。

美咲に言うのが始めてだしね…まぁ、とりあえず話を戻すけどボクは負けず嫌いなんだ。

だから、あの世界でボクは勇者の中では最弱…そして、技術云々抜きでの性能スペックでは実質最強は美咲って言われてたけど…内心、それがあまり許せなくてね」

そんな事を言った奈菜の周り…というよりも、美咲と奈菜の居る広い空間にいくつもの剣や槍などの刃物形の武器が現れ、地面に突き刺さった。

そして、いつの間にか奈菜の手には十字架のようなデザインの槍が握られており、それを片手でクルクルと回している。


「殺す気でくる美咲を相手に……あくまで殺さない気のボク。いいハンデだと、思わない? 美咲」


「……一応こんな俺でも男だ。さすがにここまで言われれば、本気でやるしかないな」


奈菜の持つ槍が周りの光を吸収し、三つに分かれている刃が凄まじい光を放つ。

それに対して美咲もやる気になったらしく片腕だけが狼の物へと変わり、魔力が込められた爪は青白い光を放っている。


その次の瞬間には、お互いに接近し三つの刃の槍と鋭い爪がぶつかり合っていた。




 ─  ─


自らの体から出た血溜まりの中に栞が倒れている。

それを普通に立っている蒼と倒れている栞の高さの関係上、見下ろす形で栞の事を葵が見ていた。


「さすがは『魔道書』。私の刀が体を切り裂く瞬間に全身から爆発的に魔力を放つことで、私の刀の軌道をそらし…即死だったはずの急所、または致命傷になるであろう攻撃から逃れたか」

力なく倒れている栞の胸はわずかに上下に動いており、栞の口元の血溜まりはわずかな呼吸で小さな波ができている。

だが栞には自分で立つなどの動作を行えるほどの力は残っていないだろう。


わずかにではあるが栞は目を開いているので、意識はある。

その証拠に神官を覆っている結界、そして栞達が今現在居る部屋を守るために張られている結界も消える事無く残っている。


「私が『魔力』を切断するよう意識しておけば、そのまま即死だっただろうが…これは単純に私の詰めが甘かっただけだな」

そんな事を呟いた葵だが、周りの状況を改めて確認する。

結界で守られた神官に部屋、そしてその中央では辛そうにしている要がおり…血溜まりに倒れている栞。

そして、要を見たときに何か足りないものに気づいた。



次の瞬間に葵に向かって雷が放たれ、それを葵はすぐさま切断した。

そんな葵の後ろでは大きな虎のような魔物が葵に向かって飛びかかったが……。


「今まで隠れていたのは正解だが…私に気づかれた時点で終わりだ!」

次の瞬間には、虎…虎光の腹が切り裂かれてその巨体は倒れ…先ほどまで神官の後ろに隠れていた雷鳥サンダーバードであるサンが飛び出した瞬間に見えない刃によって切り裂かれた。

二匹の獣もすんでのところで体をずらし、死んでいない…だが、やはり行動不能だ。


「…主人であろう要が居なければ、ただの獣。それほど怖くは無いな…まあ、獣如きの癖に死なないように体をわずかにずらすところは、褒めるべきだがな」

死んではいないが、もぞもぞと動くことしかできない虎光とサンを放置し、葵は改めて栞や要のほうを見る。

刀を持ち、まずは栞へと近づいていく。



「…殺すか」


「さすがにやらせるわけにはいかないな」

次の瞬間には刀と結構な大きさの鉄の塊…ハンマーが交差し葵は吹き飛ばされ、いきなり現れた声の主…ぶっちゃけると瑞穂は刀の刃が頬をかすりながらも、どうにかかわしていた。


「…あっぶね~。せっかくかっこよく出てきたのにしょっぱなから首斬られちゃ、かっこ悪すぎだろ」


「痛いな…邪魔するな、男女」

死ぬギリギリのところでもカッコイイだなんだかんだ言う瑞穂に、横っ面をハンマーで殴られたのに平気そうに起き上がる異常な葵。


「せめて女男にしろ…それだと男みたいな女みたいじゃないか」


「知るか」

立ち上がる葵に、頬を斬られて出た血を拭っている瑞穂。


「いやはや…紫色の光の柱が気になってきてみたら何故か迷って、こんな所に来たんだが…俺は運が良いな。

偶然、お前と会うことになるとは」


「折角、殺そうとしたところに来られて私は迷惑だ」


「それこそ、俺には知ったことではないな」

そんな会話をしている二人だが色々とやっていた関係上、瑞穂の近くに栞が倒れていることになっている。


二人が軽い会話をしている間に栞はググッと力を込め、葵のほうを向くために顔を上げた。


「……吹き、飛べ!!」

その次の瞬間につらそうな声ではあるが栞が叫び、ソレと共に魔法陣が葵に向かって一直線にいくつも展開され、それが栞から葵に向かうように順に爆発していった。


「うお!?」

純粋にビックリする瑞穂。


「くッ!?」

それに驚いた葵だが、十分に反応し爆発の炎を切断したが葵が意識したのは『炎』なので…衝撃波を完全に切断できずに、吹き飛ばされ壁を突き破り外へと飛び出した。

それを確認した栞は再び顔を下げ、疲れたように息を吐く。


「大丈夫か!?」


「……大丈夫、じゃない…です」

栞に向かって瑞穂が駆け寄り、それに疲れて途切れ途切れの声で栞が返答した。


「こ、これは治療したほうが良いのか? あまり得意じゃないが…」


「それよりも…あの女が戻ってくるのを防いで欲しいですね……できたら壁を直すので、すぐに出て行って欲しいです」


「あ、ああ! わかった!」

栞の言葉に瑞穂はただ頷き、慌てた様子で栞が吹き飛ばされたほうの崩れた壁から飛び出していく。

すぐに壁は時間が巻き戻るように修復され、神官を覆っていた結界が消えた。


「すみませんが…私を元の場所に戻してください。体をズタズタにされて、自分では…まともに動けませんので」

栞の言葉に慌てて数人の神官達が栞に駆け寄り、栞を葵が来る前に立っていた場所に移動させる。

栞の今の力では立つ事ができず、座る形になったが…栞は魔法陣に魔力を流し始める。

倒れている虎光やサンのほうにも数人が駆け寄っていく。


「……早めに、終わらせないと」

栞はさっきの戦闘での転移や壁を修復するための時空属性の魔法で相当魔力を使っている。

それに対して要を苦しめているモノを消すのにもそれなりの魔力を消費するので、栞は現在魔力が十分に足りている状態ではない。

それは神官たちの流す魔力で補えるだろう。


「出血が、ひどいですね……やばい、死ぬ。できたら…魔力が足りるかわからないので、魔法は使わなくて良いので、手当てしてくれるとありがたいです」

それを聞いた神官…若い女性の神官が慌てて出てきて、止血するために包帯を栞の体に巻きつけ始めた。



一つ気になるのは、この女性の神官が手当てが苦手で栞がミイラ状態になるのかだ。

まあ、その部屋に居るのは治療専門の神官なのでそんなことは起きないだろう。

栞ちゃんは次の話にするつもりだったんですが…なんかじらすのも悪いかな、と思って……。(・ω・`)

最後は結構喋っている栞さんですが、勇者の補正がかかってなければ軽く死ねるレベルです。



誤字・脱字があれば御報告宜しくお願いします


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