114話 なんかもぉ…やだ
サブタイトルのは、今回予定通りに書けなかったからです
いつもだべっている部屋。
そこには現在、俺と美月、そして奈菜が俺達に状況を説明するらしく一緒に部屋の中に居た。
「…つまり、どういう事だってばよ?」
「まあ、簡単に言うと…この都市にウィルスが充満していて大変なことになっているってことだよ…」
「…この外で、行列で移動している人たちは一体何?」
美月が見ている目線の先。
窓の外の都市には普通に歩いている者もいれば担がれて歩いている者もいる。
「あの人たちは戦えない一般人なんだけど、この都市の魔術師やら神官やらの数が間に合わなくて治療できないから、他の都市に転移魔法で移動中って感じ。
この都市のいろんな所に設置した転移魔法の魔法陣が二桁ほど…それで一時的にでも他の都市に避難させて、そっちだったらウィルスとかないからね。
一応、もう王族は秘密裏に避難させているからね…王族が、今この都市に居ても迷惑だからね」
「…大変そうだな」
「まあ、治療魔法が苦手な人が造ってる転移魔法だから…回復した人の数はあまり変わらないんだ。
……ちなみにボクは苦手です」
「俺も苦手だな」
「………わ、私も苦手だよ」
美月は嘘だろ。
とりあえずは、そんなこんなでこんなそんな(意味不)……まあ、そんな事は置いといて俺は一体何かに役に立てるのであろうか?
他のメンバーは仕事に借り出されているらしく、この部屋には居ない。
「俺達もなんかしないとダメなんだろ? ぱっぱと言ってくれりゃあ、すぐに終わらせるように頑張るんだけどな」
俺にしては少しやる気のあるような声である。
まあ、やることがあるならすぐにでも終わらせて、あとを楽に過ごしたいだけだ……でもさ、これって絶対終わらない仕事だよね。
仕事を終わらしたら、すぐさま他の仕事が入り込んでくるパターンですよね。
…というか、なんで俺達はこうもまったりしてるんだろか。
「他のメンバーもなにかしら仕事やってんだろ?」
「うん、まあね……ただ要ちゃんは、よく分からないので苦しんでるんだけどね……」
軽い調子で言ってるけど重症、らしい。
「苦しんでる?」
「原因はわからないんだよ。
本来、ボク達はこれぐらいのウィルスだと全然予防の必要もないんだけど…要ちゃんは、このウィルスに反応する何かがあったらしくて今は少々血を吐きながら苦しんでる途中だと思う」
「いや、マジで軽い調子でいうな」
「神官が数人掛りで魔法陣を利用した強力な治療魔法をかけてるから心配ないと思うしね……それが絶対的なモノではないけどね」
「ふむ…」
「まあ、とりあえずは徹夜くんはこの都市で一人で住んでるせいで観戦しても家から動けていない一般人を捜して、転移魔法陣の前に連れてきて。
美月ちゃんは、周りの壁で感染して動けない兵士とかを治療魔法で治してくれればいいよ…感染スピードは速くても、軽い治療魔法で治せる程度のウィルスだから」
「…了解です」
「……だから、私は治療魔法は苦手だとって…」
「嘘はつかなくていいよ、ボクはちゃんと美月ちゃんが治療魔法使ってるのを見たことあるからね」
「…ごめんなさい」
美月は諦めたな。
そんなこんなで俺達は部屋から出て行き、美月と一旦分かれることになった。
俺は当然、いつものように闇を飛ばして捜せばいいだけだ、結構近くに魔法陣が展開されていたことを確認しているので、そこで待機して見つけたら闇の中を出来るだけ移動させて魔法陣に突っ込めばいいだけど。
ま、とりあえずはやるしかあるまい。
─ なんかグダってる~ ─
徹夜たちが仕事し始めて、数時間、
そこは徹夜の家である。
「……大丈夫? 真くん」
「…うにゅぅ」
学校から戻ってきたばかりで制服のまま徹夜の部屋に入り栞は辛そうにしている真くんに尋ねると真くんは一言だけ、そんな変な言葉を返した。
徹夜が学校に行き、数時間経っているのだが…真くんは熱を出してからドンドンと体調が悪くなっていき、今は相当疲れているらしく動かないようにしている。
「……テツ兄は?」
「学校からまだ帰ってきてないよ」
真くんに尋ねられたことに、簡単に答えた栞。
「栞、お姉ちゃん」
「ん?」
「………外で遊びたい」
「我慢なさい」
そういえば、とふと栞は何かに気づく…結構長い間真くんとは一緒にいるけれど『お姉ちゃん』とは呼ばれたことがないな、という事に。
栞も栞で表面上は親しいようにしているが、栞は元々人と接することが苦手だ…なので内心少し引いていて、真くんはソレを気づいているかのようだった。
(実際、真くんが栞の事を呼んでいる場面は存在していない、はず…うろ覚えなので間違えているかもしれないが)
「…ふふ」
「ぬぅ?」
つい笑ってしまった栞に、真くんは首をかしげた。
「いや、真くんにも結構慣れられたな~と思って」
「むぅ」
そんな事を唸りながら真くんは栞に向かって笑みを向け、栞はその真くんを撫でて真くんに笑顔で返した。
「真くんは、どこから来たの?」
「…さぁ?」
「テツ兄と会う前は…熱出しているときに聞くことでもないか。
…真くん、相当疲れているみたいだし夕食の時に起こすから…とりあえず一旦寝ようか」
「……うん」
少し首を動かし頷いた真くんは、目を閉じるとすぐに寝息をたて始める。
熱を出してから、ずっと寝ているだけだが…それほどまでに疲れている。
真くんは数日前から熱を出したせいで顔は少し赤く、普段と比べれば結構汗を流している。
「それぐらいひどいのか…少し気になるな」
栞はそんな事をポツリと呟くと、手を真くんの額に乗せ、目を閉じ集中する。
相手の体に異常がないかなどを調べる、栞にとってはすぐ、簡単に、発動できることが出来る魔法。
それが真くんの体の異常を調べ上げていく。
「……」
右手を真くんの額に乗せたまま、ポケットに入ったままだったケータイを取り出し、ある番号を押し通話を開始する。
そのケータイの周りに魔法陣が浮かび上がる。
─ 徹夜視点再び ─
俺はずっと仕事をしていたのだが、何故かカントクに呼び出されていた。
「…なんか久しぶりな気がしますね、カントク」
「実際、会ったのは久しぶりだよ。徹夜くん」
俺の言葉にカントクは即答だ。
「今、要くんが原因不明の何かで苦しんでいることは知っているか?」
「まあ、奈菜に聞きましたね…治療魔法で治ってないんですか?」
「…激痛を和らげることは出来ている……が、治ってはいないんだ。だが、今は激痛を和らげていられるがソレも長くはもたない。
このままだと、要くんは死ぬ可能性もあるだろう」
「…それを、わざわざ俺に言う必要は? 治療魔法とかが苦手な俺には言う必要は一切ないと思うんですが」
これは……もしや、あの方か? で、でも…知らないはずじゃないのか?
「まぁ、君には無理だろう……だから、君の妹さんに頼みたいんだ。
詳しくは、君とは血が繋がっていないのだから義理の妹だろうが………」
あの方だったな。
「…なんで知ってるんですか?」
「一応、私はこの国でもそれなりに地位はあるし、私も含め、君達の故郷の世界でも色々な知り合いや情報網を持っているんだ。
ただ普通の学生生活を送る一人の少女を調べることは可能だ……それに勝手な行動で敵と何かを交渉する者は、君だけではないだろうからね。
誰かは分かってると思うが…」
「……むう」
「当然、君の妹は今までこちらにとっては色々とひっかきまわされたりもしたわけだが…手をかしてくれれば、チャラになると思ってくれていい」
…し、シリアス!
そんな事を内心でビックリしながら、出来るだけ表情を崩さないようにしていると俺のケータイが振るえ……恥ずかしいことにあるアニソン(『ヤンマーニ』が数回繰り返されます)が流れ始めた。
「……」
「……」
「…出てもいいですか?」
「どうぞ」
カントクの許可を取り、電話の着信の名前を見ると…例のあの方だった。
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