111話 ぎゅふふ
マジ文字数が多くなった。
サブタイトルは内容に関係ありません
「それにしても…徹夜くんは帰ったはずじゃなかったのかい?」
光がはれ、眩しくて見えなかった視界がやっとの事で正常に見える状態になったとき、ラルドさんが剣を床に突き刺し体重を剣に預けながら、そんな事をいってきた。
ラルドさんは誰かのビンタのせいで片方の頬が少し赤くなっていたりしているが俺は気にしない…あとは魔剣さんに操られていたせいか体力も削られているみたいだ。
「帰ってもそれほど暇じゃないんですよ…嬉しくないですけど」
「それは、まぁ…不幸な事で」
「ホントですよ」
まあ、あっちの世界じゃいつも通りなんだけどね。
家は結構休めるし、別に家に敵が来ました…的なことは一切無いわけだしね問題ないですよ、マジですよマジ。
「それで、先ほどの暴れてたヤツはどうなったんですか?」
俺が今いるこの広い空間の何処を捜しても、破片すら見つけられずに居る。
「アレなら体の半分以上を消し炭にされながら、むこうの壁を突き破って遠くに吹き飛んで行ったよ……たぶん、アレだけやってしまえば再生するなんて事もないだろう。
再生するかも、体を半分以上吹き飛ばされて再生できるかも不明だけどね」
「一振りでそこまでやるんですか…」
「知性がないのか、ただの単調な突撃の突きだったからね…とどめを刺すのは意外と簡単だったよ」
「ライル心配してましたよ、ラルドさん」
「…異様に相手が強くて、しかも二人を相手にしてたからライルを逃がすので精一杯。
魔剣関連だとはすぐ理解できたから、一応私の剣まで預けてしまったし…ライルには相当心配かけたことは予想できる。
後で、お詫びをしなくてはね」
「じゃあ、俺にも何か奢って……」
「背中が痛い」
「……なんでもないです」
『奢ってください』と言おうとしたら遮られてしまった……俺、こんなに頑張ったのに…ラルドさんにめちゃくちゃ斬られまくったのになぁ。
「…ぬ?」
「ん? どうしたんですか、ラルドさん」
「いや、アレ…」
ラルドさんが珍しくアホみたいな声で(この思考がラルドさんにばれたら殺される)そんな事をいいながら、指を指している方向には何かモコモコしたものがあった。
そのモコモコは黒く、小さくてもぞもぞと動いている。
それは体を丸めていたらしく、体を開くとそこらのモノより小柄で子供と呼べる……
「にゃ~」
その生き物から、そんな鳴き声。
「猫ッ!!」
ねko…ラルドさんがもう言ったので俺が説明しようとしたことは忘れてくれ。
ラルドさんは目にも止まらぬ速さで一瞬の内に猫に抱きつき、顔をスリスリとこすり付けている…おい、働きすぎだぞギャップ。
「この可愛い体とにくきゅう…さ、最高ぅ!!」
「……」
「はっ!!?」
俺に見られていることに気づいたラルドさんは少し恥ずかしそうに顔を赤くして、どうにか先ほどの行動を見られてしまったことに対して何かできることを捜しているようだ。
さぁ、ラルドさんはどんな行動をとるのだろうか?
「わ、私は…少し周りの様子を見てくるよ。安全を確かめにね……この子を頼む。絶対に目を離さないようにしてくれ。
あぶないから、周りとか絶対危ないことばかりだから!」
ラルドさんは猫を逃がしたくない、というわけですね。
「分かりましたよ、ラルドさん」
「……なんだい徹夜くん、その表情は?」
温かい目。
「なんでもないですよ」
「…じゃあ、行ってくるよ」
少し納得がいかないという表情のラルドさんは軽く足を引きずっているが、鞘を剣におさめソレで自分の体を支えながら、歩いていった。
「……」
俺はジッと猫を見つめる。
それに対して猫は見つめ返してきて、首を傾げながらジ~と静かにゆっくりただ見つめ返してくるのだ。
それが10秒ぐらい続き、猫が鳴き声を上げるためか口を開き、そこから……
「なんだ、抱きしめないのか? モフモフだぞ、毛並みサラサラだぞ、にくきゅうがムキュムキュだぞ?
マジでこの体作るの大変だったんだぞ?」
「やはりお前か!」
その猫の口からは、最近聞いた声が漏れてきた。
「な、ニャ二をする!? 私の顔をつねるな!」
「魔剣さんですよね?」
「……そ、そうだが?」
「なんで、そんな姿してるんすか!?」
というか、なんか正気失っていませんでしたっけ?
「いやな、誰に仕掛けられたかは知らないが私の自我を破壊するための魔法が、ウィリアムの血を受け継ぐ娘に仕掛けられていたな。
だから、本来私のコアである黒い宝石…お前があの娘を引き抜いたときに外れたモノだがソレに篭ることで難を逃れたわけだ」
「ほぉ…それで?」
俺の質問に答えていない。
「だ、だから…ウィリアムには剣として愛してもらえなかったし」
愛してもらえなかった、って言い方が何か悪すぎんだろ。
「あのウィリアムの匂いがする娘は…お前が言っていたが猫が好きらしいじゃないか? だから、最後の魔力を使ってこの体を作ったのだ!」
黒い子猫の小さな体を作って「ふんすっ」という様子で胸を張っている魔剣さん。
もう、魔剣じゃないね…黒猫さんにしよう。
「まあ、とりあえず黒猫さんは普通の猫ってことで頑張って」
「おう! …いや、普通はダメだな。
普通の猫の設定しにしたらこれから、ウィリアムの一族に粘着できないではないか…私は一生粘着するぞ、何代もな」
粘着ってオイ、何代もって悪質やないか。
「じゃあ、何かいい設定とかある?」
「徹夜くん、君の目の前には猫しか居ないが誰と話しているんだ?」
「……」
黒猫さんと話をしている最中に、ラルドさんの声…俺はつい少し焦ったような表情になってしまうが、予想外な事にコレにフォローをしたのは黒猫さんだった。
「私とだ」
「ね、猫が…喋った!?」
驚くラルドさん…驚いている割に頬を赤くして目をキラキラと輝かせているのは気のせいか。
…でもさ、こういうファンタジーでは猫が喋るのって普通じゃないかな? 二足歩行になりながら喋っている食べるラー油という名前の猫を知ってるし(獣人の王のタベ・ルラーユである)
「わ、私は昔、ウィリアム…つまりお前の祖先の男に造られ、魔剣を見守るように言われていたのだが…集まってくる魔剣たちの対処に追われてさきほどまでここから離れるしかなかったのだ」
なんかソレっぽいな、その説明。
「そんな話聞いたことがないのだが…」
「あれですよ、ラルドさん。
そのウィリアムってのもラルドさんと同じ猫好きで恥ずかしいから隠していたんですよ!」
「わ、私は別に猫がすきというわけではない!」
「好きではないのか?」
「……うっ」
慌てて否定するラルドさんだが、首を傾げながら黒猫さんがラルドさんに問いかけると思わずといった様子でラルドさんは声に詰まった。
「…す、好きですが何か?」
「ぶふっ!!」
恥ずかしながらボソリというラルドさんを前に、俺はつい噴出してしまったのだが……俺の体に突き刺さるギリギリのところに黄金の剣が突き刺さった。
「何か悪いか?」
「…何も悪くないです、だからお願いですので許してくださいまし」
ラルドさんは、やっぱり怖い。
「まあ、この黒猫さんはラルドさんのペットになりたいというわけですよ」
「ペット…」
目が輝いていらっしゃるが、すぐに何かにハッと気づきシュン…という感じで落ち込んでいる。
「造られた猫ですから、普通の猫みたいに抱きついて苦しめてもだえさせて嫌われるってことはないんじゃないんですか?」
「ほ、ほぉ!」
俺の言葉にラルドさんは再び目が輝かせている。
だが、俺がラルドさんが猫に抱きついて嫌われるというラルドさんが恥ずかしいであろう情報を知っている事と、猫に嫌われる過程の表現を凄いいやなものにしていることに気づかないのは俺にとって幸運だろう。
確かめるようにラルドさんが猫に抱きつくと猫は猫で嬉しそうに顔をラルドさんにこすり付ける…それを見たラルドさんはたいそう嬉しそうな笑顔となっている。
「…本当にラルドさん嬉しそうですね」
「何か悪いか?」
「いえ、全然」
剣を向けないで欲しかったりする。
「ま、そんな事は置いといて…俺意外にも一応来てるんですよ。俺の幼馴染とか」
「ほう、勇者さんが…で、どこに居るだい?」
「もう来てますね……おそらく壁を何枚も破壊しながら」
ここで来ました御都合展開の象徴である幼馴染レーダー。
そして、ついには俺と魔剣さんの戦いでも無事だった綺麗な壁を爆破し、この広い空間であるこの部屋へと足を踏み入れてきた。
「ふへ~、やっと到着!」
笑顔でそんな事を言う美月は、それこそ美月の今の行動を知らない人からすれば壁を壊して道を作りながらやってくるパワフルな人間だとは思わないだろう。
「おいっす…美月、少し体を治してくんね?」
俺は治療魔法は得意ではないし、ラルドさんは魔剣に操られていた事と最後のとどめの一撃での魔力の使用で、それなりになくなっているのだ。
だから、美月に頼みました。
…というか、なんで美月は金銀財宝がザックザクに入った袋を担いでいるんでしょうか?
「…結構やられてますね、黒いの」
「お~、リーシさんですかぁ」
美月の後ろからはリーシが現れる。
他にも合流しているらしくミルリアや奈菜たちも後ろに居る……あれ、なんでイリルさんが居るのかな?
徹夜は知らないが美月たちと戦っていたりした『狼王』と『竜人』は、美月が無視して財宝のほうに走って行ったときに美咲はしょんぼりとしながらトボトボと去っていき、楓はイリルさんが横は入りして来たあと奈菜とイリルさんが話しているので、暇になって一人で探索しに行った。
信じられないが、基本的に自由奔放である。
そんなこんなで疲れているので、この世界で一日だけ休憩して元の世界へと帰ることにした(当然、連絡はしました)
リーシに話を聞いたのだが魔剣は約300本あり本体が倒されると共にもとの県の形へと戻った…その結果、このダンジョンに戻っていた200本弱えお回収に成功。
その200の中から結界などの守り、攻撃特化、治療…さまざまな種類があるものを区別しいくつか部隊を作るそうだ。
奈菜はラルドさんやイリルさんと何かを話している。
まぁ、この世界ってなんか他の世界より難易度高くて本当に面倒だな…と改めて思ったのは気にしないで置くべきだろう。
ちなみに、ラルドさんはライルに心配かけた侘びとして、何か料理をつくるハメになっていた……ラルドさん料理できるんですね。
─ ─
誰も居ない場所。
そこに老人と葵と明の三人が居る。
「…楓と美咲はどこじゃ?」
「さぁ? トラップで飛ばされてからは二人とも自由に楽しみながら、この地下都市みたいなモノの内部を探索していますよ。
実際、私もトラップにひっかかりたかったです」
老人の問いに明は軽い調子で答える。
先ほどまでずっと老人は明に謝りまくっており、それでやっと明は機嫌を直したようなのである。
「…それで、こんな所に何をしにきたの?」
葵が老人び質問をすると老人は改めて目の前の物に視線を向ける。
そこにはもぞもぞと動き、少しずつではあるが段々と再生して元の姿に戻ろうとしている頃猫さんの抜けた自我のない魔剣だ。
「自我のない……これの再生能力に用があったのじゃよ」
老人がそう言うと、影から人形が出てきて…あるものを渡す。
それは奈菜の世界で暴れていた死神の振るっていた鎌。
それがテキトーな動作でもぞもぞと動いている魔剣の上に放り投げられ、それの周りに老人が魔法陣をいくつも展開する。
老人は、それを、見てただ不適に笑っている
「この作業が終わったら、そろそろ美咲と楓にどうにか連絡して帰るぞぃ…」
─ 飛びに飛びまくります ─
「おい~す、一日ぶりに帰ったどぉ~」
次の日の午後に戻った。
「おかえりっ」
家に入ると、タタタタッ…という軽い音と共に真くんが走ってきた。
だが、何故だか顔が少し赤い。
「ん~?」
「どうしたの、テツ兄?」
真くんの後に栞もついてきて、俺が真くんをジ~と見ていると少し不思議そうに尋ねてきた。
「なんか、いつもより真くん顔赤くね?」
「……確かに。今日の朝まで全然普通だったんだけど、今は異常そうに見える」
俺と栞の会話に不思議そうな表情になっている真くん。
俺は真くんの額に手を当ててみると、いつも異常に熱い気がする…まあ、手でふれて熱があるかなんてわからないので、体温計を使うしかないだろう。
「母さん、ただいま~! いきなりだけど真くんが怪しいから、体温計どこにあるか教えて~!!」
「おかえりっ…待ってて、私が最後にしまったから場所は私しか知らないからすぐに持ってくわ!」
この時間なら番組の関係上で母さんが居る可能性が高いであろう一番大きなテレビがあるリビングに向けて俺は大きく声を張り上げると、すぐに母から俺の言葉に答えるように返事が返ってきた。
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