97話 ふへへ
今回四千文字越えましたが、最後の大半はどうでも良いキャラの視点です。
もう少しで終わる終わる、と言いまくってるんでぶっちゃけますが次の異世界で異世界に行くのは最後です。
今回は前書きに…番外編のアイディア募集中。
どんな方でも、どんなアイディアでもかまいません。何回も応募は可能です。
募集場所は活動報告の『俺闇予定なんちゃら』です
「うむぅ…上手く逃げられたのぅ」
老人が空を見上げながら、そんな事を呟いた。
老人の目の前では飛行船に驚きつつも慌てて空に向けて攻撃を放っているジパングの兵士や、今まさに飛行船に入り込んでいるフォルテの兵士などが見える。
「まさかここまで早く攻撃してくるとも、あっさり脱獄されるとも思わなかったの。
面倒だからと言ってあの魔法具の欠点をそのままにしとくのは不味かったか」
「グレモア様に言われた事、やってきた」
「おお、葵か。
それがワシが調達を頼んでおいたものじゃな?」
「…リーダーのキリ・カリズをはじめとする商人数人と護衛数人を全員殺してきた。言われたとおり腐食を抑える魔法もかけてきたから体は綺麗に残っている。
私が切り刻んだ傷以外はだけど」
「その傷は綺麗に塞げば問題ないだろう。
どうせ、今回のことでこの国もいろいろと荒らされたし少しの間、兵士やらを建て直したりすることに大変だろう…予定通り異世界にでも行こうじゃないか。
連れていくのは少ない人数で葵と美咲、あとは楓でいいじゃろ」
「犬も連れて行くんですか…」
「特に理由は無いがの。
どうしても欲しいものがあるのでな、次行く世界では」
─ ─
「うわぁ…堕とされちゃったね。二隻ぐらい」
合計8つの大型飛行船のうち、二つが煙を上げながら墜落していった。
幸いその飛行船には今回、ジパングの王都に強襲をかけた兵士は乗っておらず、飛行船を操るためだけの少ない人数が乗っていたが飛行船の緊急時専用の転移魔法で他の飛行船に移ることで墜落に巻き込まれることを避けた。
この場合、そのまま国に帰れば良いんで無いの?と思うもしれないが飛行船に入れられている転移魔法陣は通常より少ない魔力で転移できるかわりに遠くへの転移は不可能だ。
「…や、やめろっ! 俺にそれを向けるな! 俺ってそういうジーン…てくる痛いのは好きじゃないんだ!
いやマジで苦手なんだってば! わかってるだろ!」
「徹夜、子供じゃないんだから無駄に抵抗しないでよ」
「いや、俺は子供だ! 絶対に子供だ!」
美月の持ってる何かを払うようにして抵抗してみるも、美月相手にそんな事をしても意味はない。
その美月の持っている何かが俺の顔の皮膚……詳しく説明してしまうと、皮膚が避け血がにじんでいる部分に軽く押し当てられた。
「~~ッ!!」
ま、定番のようですが消毒液をしめらせたモノを傷に押し当てられただけです。
「私達の後についてきていた部隊も含め他の部隊でもそれなりに怪我人が出てるからさ、治療魔法を使える神官やら魔術師はそっちの対応してるんだよね」
「美月だって治療魔法できるだろうが!」
「……一回だけでもやってみたくて」
そうかつまり美月は俺が消毒液のせいで悶え苦しむ姿を見たいというわけだな。
「だってさ! こう、喧嘩やなんやで傷ついた主人公を主人公と良い仲の人が良く、こんな感じの光景をやってたよ、漫画で!」
「美月…だからって俺でやんないでくれ」
俺が言えることじゃないが、これは漫画じゃないんだ!(小説だ!)
少し残念そうな顔をしながらも美月は俺の顔の傷を軽い治療魔法で治していく。もともとそれほど大した傷でもないのですぐに治っていった。
そんな俺達は置いといて奈菜は連絡用の魔法具で他の飛行船に乗った誰かと話をしているようだ。
どうやら話し相手は瑞穂らしく、何かが分かってるらしいです。
「へぇ…あのクソうざったい御老人の次行く世界は、そういう世界なんだ。
うん、わかった。特徴もほぼ同じだね……カントクとすぐに相談して、決めるよ」
そう、奈菜は魔法具を切ると再びかけはじめる。
カントクと相談するそうですね。
「いや、この頃次々と無駄に大変なことが続いてるな」
「暇なときが無いねぇ」
まぁ、今回のことは俺が逃げれなかったことがあるんだけどね。
というか、絶対に唯時が居なければ逃げられたよね……あのクソ野朗め。
「あ、徹夜くん美月ちゃん。すぐ異世界に行かないといけなくなっちゃったから、とりあえず明日か二日後に行くことになると思う」
「無駄に早くね? 少しは休ませろよ」
「ごめんね。それほど余裕ないんだ、この頃」
本当に申し訳なさそうな感じで奈菜は言う。
その言葉の内容を隠しもせずにいうのは、やはり戦力がごっそりと抜けていったせいもあるのだろう。
= (場所が大きく変わります) =
それはある世界。
魔王と勇者が戦い魔王が負ける以前に一度ラルドという女性に倒され、サラスムという大国に囚人として捕まっていた男…スウァフルという男が居た。
その男は『黒の十字架』という闇ギルドの中ではトップ3に入る組織で幹部みたいな感じの立ち位置の男だった。
その男は、さっきも説明したとおりラルドという女性に倒され、囚人として拘束されていたはずだが……。
「ふッ!!」
「ぎッ!!?」
そのスウァフルが振るった剣が、ボロボロの服を着た男を背中から突き殺した。
そして突き刺された男はすぐに絶命した。
「あ~あ、またとられちまったな…スウァフルの旦那に。
俺にどうでもいいものをおしつけて、自分は最後に良いとこどりしやがって、ホントいつものことながらむかつかさせ……」
「喋るな。うるさい」
そんなスウァフルに話しかけ、すぐに黙れ発言された男は同じくトップ3に入っていた闇ギルド『黒の道化師』の幹部の立ち位置だった無駄にしゃべりまくる男だ。
この男は美月の勇者御一行の一員だった無口な女性に倒されて、同じく囚人になっていた男だ。
名前はまだ無い……というか、これからも無い。
何故この二人が外に出て、人を殺しているのか。
それはサラスムとの取引によるものである。
その取引とは単純なもので、同じく囚人が逃げ出した場合それを追って確実に殺すだけ…それだけで一時的に自由な身にはなる。
ちなみにスウァフルにとっては戦い殺すことが目的なので自由のみになるかどうかはどうでも良いことだったりする。
それと同様にしゃべりまくる男は、ただ牢屋にいれられっぱなしよりも外を歩きたいからという理由でその役目を請け負っている。
二人の手首には特別な魔法具がつけられており、一ヶ月以上外に出ていると即死の魔法が襲うというものがあるがスウァフルは職業が気に入ってるし、しゃべりまくる男は汚い食べ物でも寝てるだけで出てくる囚人というものを少し気に入っているので逃亡する気はない。
そんな二人の内の一人、スウァフル。
その男は手に持った特別な能力を持つ剣を握る感触に違和感を覚えた。
「…?」
その感触に疑問を覚え剣に視線を落とした瞬間に、その剣…つまり『魔剣』が膨張した。
「ッ!?」
「ん、なんだぁ!?」
驚き、後ろに下がりながら剣を前へとほん投げるスウァフルと同様に驚きながら距離をとるしゃべりまくる男(名前付けてあげたいけど思いつかない)
そんな二人の目の前で魔剣が膨張し変な風にウニョウニョ動くものが剣から出て、最終的に片手に剣が生えていて触手のようなもので構成されているため気持ち悪いが、その体は人型のようなものになっていた。
「もっと離れろ、攻撃範囲内に入ると確実に串刺しにされるぞ」
スウァフルが警告しながら後ろに下がり、それに従って後ろに下がるシャべ男(じゃべりまくる男の略)
「あんた、何が起こったのかわかるのか?」
「知らん。
だが、あれは我が使っていた剣…つまり能力は当然のように存在する。
攻撃は外れることはなく狙ったものを正確に貫く…というものがな。お前の剣を貸せ」
二人の目の前の離れた所では、魔剣だったものが暴れており、その動きは獣のようだ。
「は? なんで俺の剣を貸さなきゃなんねぇんだよ…?」
「あれは我の所有物だ。
所有物が所有者に牙を向いたのだぞ? ならば、我自身で仕置きをしなければならないだろう?」
それを聞いたシャべ男はスウァフルへと自分の剣を投げ、それをキャッチしたスウァフルはすぐさま魔剣へと向けて駆け出した。
それを確認した魔剣だったものは、変な叫び声を挙げながらスウァフルへと向けて襲い掛かった。
手に生えた剣をスウァフルへと突き出す魔剣だったモノ、それに構わずスウァフルは借りた剣を上段で構えながら走ることをやめない。
その次の瞬間には剣はスウァフルへと刺さっていた。
だが、それは心臓でもなく命には関係ないであろう腕。
「ふんッ!!」
それをやはり気にせずスウァフルは剣を振り下ろし、次の瞬間には血のような黒いものを噴き出しながらぐじゃりと倒れた魔剣だったモノ。
「偉くアッサリしてんなぁ…あっさりしすぎてて俺はすこしがっかりだよ。
狙ったものを確実に貫く能力だった筈なのに、よくもまぁこんなアッサリと…」
いつの間に来ていたのか、シャべ男がスウァフルの後ろで魔剣だったものを見ながらそんな事を言った。
「その能力は人間のようにある程度の理性と考える能力を持ったものが扱ってからこそ、一番の力になる。
コレはそんなものはなくただ貫けば終わりなのだ、我が使ったときのように心臓を狙ってるわけでもない…だったら腕一本犠牲にしておけば容易く倒すことは可能だ」
「ほぉ、そんな欠点が…」
「先ほども言ったが、人が扱えば話は別だ」
そんな事を喋っていた二人。
その二人の目の前に倒れたいたモノだが、次の瞬間にはその体からいくつもの触手を飛び出させた。
「ぬっ!?」
「ちゃんと仕留めといて下さいよ、旦那ァ!!」
慌てて後ろに下がる二人に対し、体中から触手を飛び出させながら再び突っ込む魔剣だったモノ。
その体中から出ている触手にも能力は付加されており、腕一本を犠牲にすれば倒せるなどというものは通用しなくなった黒い化け物が二人に向けて突っ込んでいく。
「ああっ!? 剣、剣がない!! 旦那に貸したままで剣がない!!」
「……」
こんなときまで黙らないシャべ男に少し呆れ顔になったスウァフルだが、こんなときまで呆れ顔になっているスウァフルにもあてはまるだろう。
そして、その二人に向けて突っ込んでいった魔剣だったものだが…
次の瞬間には光の塊が横から魔剣だったモノを吹き飛ばした。
吹き飛ばされた先にはダメージの限界量を超えたのか、ただの能力つきの剣へと戻っている。
「え? あ、なんだ?」
「……」
驚いているシャべ男と黙って目を細めるスウァフル。
そのスウァフルの目線の先には黄金の剣を持った金髪の女性の後姿があった。
ふへへ(サブタイトルはこれ)やっと第一章の誰もが忘れているであろう俺の宣言が、今ここに達成されるだろう。
というか、最後の癖に原点回帰ですか。
誤字。脱字があれば御報告宜しくお願いします