94話 幸せな気分
前回は予約投稿をミスってしまいました。
「カントク!! 徹夜が生死不明ってどういう事ッ!?」
美月がカントクに迫るようにして、大声で尋ねた。
美月が着ている服には汚れなどがついたままで、北の森で魔物を倒し徹夜についての知らせを聞いて慌てて帰って来たのだろう。
「徹夜君には数時間おきに報告のために闇で作った鳥をこちらに飛ばすように言いつけてあったが……」
カントクは美月の目をしっかりと見つめながら、言葉を続ける。
「もう6時間以上連絡が来ない。
最後に鳥が飛んできたのはジパングの王都に入る前、つまり入ってから何かがあったというわけだ」
「………それで、どうするんですか?」
「当然、徹夜君がどうなったのかは知らないが助けにいく。
もう兵士の準備もしているし、魔術師には十数人単位で一つずつ兵士を送るための転移魔方陣を設置してあるし、一応治療専門の神官も連れていくつもりだ」
ちなみに出番が一切ない神官だがそれにも種類があり、治療専門と呪いを解く専門などだ。
「……」
「たぶん、殺してはないだろう……もし捕まってたとして、あの支配する魔法は悩んでいたり等の事がなければ問題はない」
徹夜だったら問題ないかも。
「…だから、多分無事なはずだ」
多分、てなんや。多分て…。
─ ─
私はジパングという伝統ある国の衛兵の一人である。
やはり、この国の中は他の国よりも少し面倒なことがあり、外側をほっておいて内側での争い事が多かった。
内側で争う国のなかでは二つの大きな勢力に別れていたのだ。
ある方が死んでから何もかも壊そうとする狂っている王と、それを止めようとする優しかった王子様。
だが、私はその勢力には関係のないただの一般兵。
…関係はないが昔、王子様が俺が担当していた門を抜け出すのに使っていたときについ発見してしまったことがあった。
だが、王子様はそれこそ子供のように楽しそうな笑顔をこちらに向けシーッと手で合図をすると、夜の城下町に消えていった。
私にはあの純粋な子供のような彼がそんな勢力のリーダーなのだということも驚きであったが、今は彼が死んでしまったことが悲しかった。
だが、こんな私でも家には妻と子がいる。
王子様と関わったことさえ話してはいけないし、呟くことさえしてはいけない。
私のせいで妻と子を殺すわけにはいけないのだ。
もう何人知り合いの家族が死んだことか…。
だが、そんな事を置いといて今私は少しだけ幸せだ。
目の前に迫ってくるのは綺麗に整った顔立ちの少女の顔。
何があったのか、所々皮膚がさけ血がにじんでいるが、その顔は普段と変わらないであろうほど綺麗で、おへそ辺りまで伸ばした髪の毛が揺れ、埃にまみれた髪なのに何故か綺麗なのだ。
私には何年も一緒にいる妻が家で待っているが、ついついみとれてしまうのだ。
まあ、本当に愛せるのは我が妻と子供だけだけとね……いや本当に。
話を戻そう。
近づいてくるきれいな顔は、限度を知らないのか止まることはない。
そんな状態についドキッとしてしまった私だが……次の瞬間に脳天を貫くほどの衝撃が走り、意識が遠退いていく。
そんななかで少女がなにかを大声で叫んでいるのが聞こえた。
「おっしゃ、次来いやァァァァァ!! こんのボケぇぇぇ!」
とても男らしかった。
─ ─
「おっしゃ、次来いやァァァァァ!! こんのボケぇぇぇ!」
俺は一人の兵士を頭突きで吹き飛ばしてから変な叫び声をあげた。
俺は現在、手首に枷をはめられて牢屋のなかで俺を取り押さえようとする兵士相手に乱闘中。
もうどうにか逃げようとしたものの取り押さえられ、俺が無駄に抵抗したせいか全身ボロボロ。
しかも髪の毛をまとめていた金属製の髪止めは砕けてしまった。
高かったのに…たしか銀貨二枚だっけ?覚えてないけど。
「少し静かにしたらどうじゃ…騒がしい」
目の前にいるクソ忌々しい老人の言葉を無視して、次に入ってきた兵士をなぎ倒す。
当然兵士が入ってくるということは、扉は開いてるのだが牢屋の外には老人と明がいるので、怖くて出れません。
「それにしても身体能力と魔力を封じる枷がしてあるので並みの人間よりも弱いはずですが…兵士たち相手になぎ倒してますね…。
というか、あの女性は本当に徹夜さんなのでしょうか…」
明が呆れたように呟いていたが無視!
「まあ、ただ喧嘩慣れしてるだけじゃろ」
無視!
「もう良い。
お前ら、牢屋からでて鍵をしめぃ。うるさくて止めようとしたが無理なようだ」
その言葉を聞いた兵士は慌てて牢屋の中でのびている兵士を引っ張り出しながら牢屋の外へと退避した。
「……暇潰しがなくなっただとっ!?」
「喧嘩を暇潰しと考えるな…。
まあ、お前が今回ここに来てくれて助かったよ。影山 徹夜」
「ア?」
老人にたいしては喧嘩口調で行くよ。
「前回お前と戦ったときに唯時の目には色が変わったといっていた。
それを後で確認したのだが、お前のその体の中には、もうひとつ魂があるじゃろ?
しかも、相当強力な力を持つ者が」
「……」
「それはワシにとってちょうど良い」
「…なんでだ?」
意味不明。
「さっき来たばかりだから準備をしていないのでな、今すぐはできんが…その魂とお前の魂を分けさせて他の人形に移せば、一気に二つもちょうど良い戦力がてにはいるじゃろ?
当然、他の堕勇よりも強力な支配をかけるがな」
そんなことをいって老人がニヤリと笑うのと、牢屋の鉄格子になにかがぶつかり大きな音をたてるのは同時だった。
「私をお前みたいなガキが操る? 調子に乗るなよ、クソ野郎」
俺が別にしゃべってるわけでなく、勝手に口が動いていた。
なんか怖い。
「まぁ、楽しみにしとくが良い」
そんなことを言った老人は明を引き連れて、どこかに消えた。
うぜえ…というか、もう来んなよ。
「……わぁ、本当に徹夜ちゃん綺麗やん。ウチの好みやわ」
「なんか、すごいな」
「うわ、また面倒な狼小僧と竜少女が来たよ」
そんな会話から始まり、つい暇なので楽しく話し始めてしまった俺達。
そんなこんなで30分経ち、やることがあるらしく二人は消えてった。
なんできたんだ、あいつら?
「……あなたは、勇者なんですか?」
すると向かいの牢屋から声が聞こえた。
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