93話 書類
特になし
結局……日のある内はずっと子供達と遊んでいた。
建物の中で追いかけっこやらかくれんぼやらして遊び、ついつい全員捕まえるまで夢中で楽しんでしまった俺は仕方が無いという一言で終わらすには……まぁ、いいだろう。
そんな事は気にしなくてもいい。
この程度の些細なことならば正直、気にした所でなにも特に損もないし得もない……つまり、一番この世の中で気にする必要はないという事だ。
…。
……。
………。
…………ごめんなさい私欲に負けました。
とりあえずは今の状況に戻るが、外は暗く子供達はいつも暮らしている場所(当然、家があるというわけではないらしい)に戻り、俺は一人だ。
周りに散らばせた闇のネズミや小鳥やらをやっと動かして、今回の目的を実行する事ができる。
「では、始めるか。ご主人」
「おう、やりますか。じゃあ、フレとイム…周りの警戒は今まで以上にお願いな」
「りょ」「う」「「解しました」」
今まで以上に聞き辛い区切りをしたな今。
それは置いといてフレとイムは体から紫色の炎が勢いよく吹き出したかと思うと消え、屋根にコツンという小さな足音が響いた。
さすがは精霊様。
「さて、リヤナさんにも手伝ってもらうしクロもお願いな」
「…まぁ、久しぶりにご主人に頼られているんだ。期待はして欲しくないが、頑張ろう」
《………眠い》
久々にリヤナさんの声が頭に響くが…無視!
そんな事はさておいて俺は眼を潰し闇へと意識を向ける。
今回の『出張!闇アニマル』の数は約900。リヤナさんは400、クロは300、俺は200。これは俺が操りきれるかどうかな問題で一番少なくなりリヤナさんが一番得意で俺よりもクロの方が扱える数が多いのでこうなったのだ。
正直、俺としては一番数が少ないというのは嫌だったが、リヤナさんにお願いしたときに技術不足言われてしまいました…結構、長い間この能力使ってるんだけどな。
めげるな俺……めげたら負けだよ。
「私はもうやりはじめているぞ、ご主人?」
「…俺も、さすがにやり始めるわ」
「うぬ」
俺はテーブルの上に地図を広げる。
そこにはこの王都の地図で、赤のボールペンでいくつか印がつけてある。
要するに最低でも印がついている場所を調べてくれ、という事だ。
目の前(まぁ、闇を通してみているのだが)にはいくつもの視線が存在しており、頭が疲れるのがソレ一つ一つに集中する。
さまざまな光景が頭に流れ込んでくるが、正直7割は受け流しているが、重要だと思われる場所に闇が到着してから集中すれば問題はない。
「む、これなんてどうだ?」
クロさんが闇から取り出し何かを渡してきた。
「なんだ、これ?」
それは簡単に言うと数十枚の紙の束。
そこにはずらりとよくわからない文字が並んでおり、なんというか雰囲気的にも見た目的にも『書類ですよっ!』と自分から訴えているみたいだ。
《それが…なんでこの世界にあるの?》
「は?」
ちなみに説明しておくがリヤナさんの言葉はクロたちにも聞こえている。
クロたちは俺を精神の世界(まぁ、夢の中に居ると考えているのだが)に呼び出すことができるので、基本的にクロの場合は指輪、フレとイムの場合は剣で繋がっているのだ。
だから、俺の中でリヤナさんが喋ってるのはクロ達にも聞こえているというわけだ。
…説明が下手で本当にごめんなさい。
《それは私が生きていた時代から研究していた結果を纏めている書類だけど…》
へぇ…という事は600年以上前から存在していると言うわけだな。
書類はパッと見、少し汚れているだけでそんな昔から存在しているようなものには見えず、たぶん魔法をかけて長い時間放置してもボロボロに腐らないようにしてあるのだろう。
…というか、なんでこの世界にそんな物があるんだよ。
「俺達がまだ堕勇だなんだかんだを知らないときにも堕勇は世界に入ってきたわけだし…リーシやミルリアの目をかいくぐって魔界に侵入して、この書類を盗んでいた……?」
《まぁ、それしかないんでしょうけど……何を考えて、この書類を盗んだが気になるわね》
「書類の内容は?」
《徹夜は研究の結果を見たことがあるけど、魔力の塊である魔力石を生物に埋め込み兵器にする研究とか》
ミルリアが手に埋め込んで、結果暴走したヤツか。
《あとは私の父…つまり魔王が数千年か数百年かは忘れたけど、昔創った魔剣の特徴やら行動パターンやら。
あとは美味しいケーキの作り方とか、植物系の魔物を他のどの種類の植物系の魔物と混ぜ込めば、どの程度の強さのどんな特徴を持つ魔物が生まれるか。
あと覚えてるのだと魔族が使ってる戦艦のエンジンの仕組みとか…》
何故ケーキが出てきた。
その書類を纏めたときの魔王様、もしくは研究員はそれほどまでに甘さに飢えていたのか? まぁ、考えるのには糖分が必要だしな…いや、でもケーキに拘る必要はないんじゃないか? だったら食べるのに少しでも時間のかからない飴とかを選ぶんじゃないのか?
《ちなみにケーキの研究をして纏めたのは……私だ》
お前ったのか。
暇を持て余した、神々の……なんでもないです忘れてください。
《これはそのとき使っていた特別な文字…これが他の種族やらに見られてもわからないように特定の人物しか知らない暗号みたいなモノだよ》
通りで読めないわけだ。
「とりあえずこれは闇の中にしまっておこう。今は必要ないしな」
言葉通り、書類を闇の中にしまう。
もしあの世界に行く機会がある時は、少し面倒な気もするがリーシたちに返しておこう。
「じゃあ、本来の調べ物に移ろう」
俺が、そう言って集中するが……200ぐらいの目線がポツリポツリの消え始めた。
「……どういう事だ?」
その消える速度は段々と上がっていく。
《私のほうでも消えてってる…バレたって考えたほうが妥当でしょ。
すぐにこの場所からも離れて、その後は王都から抜け出しましょう……できるだけ急いで、ね》
了解しましたプロ。
《クロちゃん、俺とリヤナさんの分の闇も操作していくつか集めて建物やらを壊して無駄な事件を起こして。できるだけここ以外の場所に目を集めて》
「了解」
リヤナさんの指示に従い始めるクロ。
俺は闇を出し操作し、ここに出していたテーブルやらを全て片付ける。
そんな俺達の前の退場シーンと同様に炎が噴出したかと思うと、フレとイムが現れる。
「いくつかの」「何かが」「「迫ってきてる…もう近い」」
「うわ…最悪」
「私が操作している闇も段々と消されていってるぞ、ご主人」
いくつも操作して一体に集中しきれないのは仕方が無い事だが、すぐに殺されまくってるのは可笑しい。
ただの兵士が殺しに来ているわけではないようだ。
《闇に紛れて逃げましょう…今すぐに》
「了解ですボス」
闇からコートを取り出し、すぐさま着て外に出る。
…国が荒れているせいか普段なら明るく灯しているであろう魔法具の灯りもともっておらず夜なので真っ暗…俺のコートの出番だね。
あ~、でもこれって目を騙しているだけだから、とても目の良いあの人が居たら……ああ、これフラグかぁ。
「視えてるぞ…景山 徹夜」
「…ッ」
後ろから聞こえた声。
もうフラグだと分かっていたので、それが聞こえる前にしゃがんでいた俺の頭上を蹴りが通過していき、俺はすぐさま後ろに跳んで目の良いあの人から離れた。
「うわぁ…これは無駄に豪華な面々ですなぁ。
まだ到着してないって言ったじゃないですかぁ、カントクぅ………」
その俺の目線の先にはいつも通りのヤツラ……『妖刀』さんを除く無駄に厄介な面々が揃っていましたとさ、チャンチャン♪
クッソがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
─ え~、場面は変わりまして… ─
ジパングとかは関係なく、徹夜が居る世界の『フォルテ』という国に向かう道に商人達が居た……のだが、そこには血が流れ鉄の匂いが充満し、商人達が雇っていた護衛も含め何人もの人間が倒れていた。
「なんだよ…お前」
その商人の一人だけ生き残っており、その商人がつぶやいた。
生き残った商人の向ける目線の先には一人の少女が返り血を沢山浴びながら刃のほとんどが血にぬれている刀を持った少女は生き残っている商人を見る。
「……ただの堕勇だけど?」
その次の瞬間には商人の目の前に刃が迫り、赤い液体が飛び散った。
唐突ですが、番外編のアイディアの応募を開始しました。(現在既に終了しました)
詳細は活動報告に書いてあります。
期限は番外の前の本編が終わるまで、活動報告以外への応募は無視させていただきます。
活動報告『俺闇番外編の予定なんちゃら』
http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/106952/blogkey/536974/
誤字・脱字のご報告よろしくお願いします