84話 お泊り
サブタイトルで結構、内容が分かります。
「わざわざ、こんな夜中に見るもんでもないけどなぁ」
そんな事を言った俺。
えっとデパート事件(俺命名)の二日後の夜(夜中と言っても7:30ぐらいだが)であり、俺の部屋は豆電球以外はつけておらず薄暗い部屋の中。
数人だけ部屋に居た。
「何言ってるの、徹夜。やっぱりホラーモノは真っ暗な部屋で見るものでしょ」
美月までいるわけである。
明日学校だぞ、おい。
テレビの中で流れている映画はウジャウジャゾンビモノであり、驚かせるように唐突に襲ってくる恐怖の日本モノとは違い種類の違ったアメリカ式だ。
「ぐにゃあ!?」
定番なシーンだが主人公が銃を構えながら警戒をしていると、いきなり後ろからゾンビが主人公に襲い掛かるという場面を見て、俺の前に座っていた真くんが驚いて悲鳴を上げた。
「…美月さんは、帰らなくていいんですか?」
同じく部屋でテレビを見ていた栞が、少し戸惑いながらも美月へと尋ねている。
「もう私の両親にも徹夜の両親からも許可取ったし、今日は栞ちゃんの部屋にお泊りかな~」
「…っ」
絶望の顔になった栞さん。
当然、荷物持ってきていますよ…という美月の笑顔が栞にとっては悪魔の笑顔だったに違いない。
美月が俺の家に泊まることはそう珍しくは無い。
その日は限ってテストが近い日でも宿題がある日でも、必ず俺は21:00には寝るため美月が俺の母と一緒に寝るのだが、母とどんな会話をしているのかも全然知らないのである。
というか、どうせ俺にとってはろくなことではないので絶対に知りたくはない。
当然部屋は別である。
そんなラノベのような展開になることは決して無い(前に一回なったことがあるような…)色々と可笑しい母だが一応教師。
ちゃんとそういう部分では、しっかりしている。
「ま、頑張んなさいな。栞」
「栞ちゃんいっぱいお話しようね」
「っ」
俺は栞に同情の目を向け、テレビを無視して美月が後ろから栞ちゃんに抱きつき、栞は突然美月に抱き疲れたせいで息を呑んで固まった。
ちなみに、俺達が家から帰ってきたらおもいっきり栞に謝罪されたんだが美月は予定(?)通り栞の事を褒め、栞は何故褒められたのかわからずぽかんとしていた。
そりゃそうなるわな。
「へぎゅっ!?」
相変わらず真くんは映画を見てビックリしており、それを俺が後ろから撫でてなだめている状態だ。
何故ゲームは平気で映画は大丈夫なんだ?
「真くん、驚いても表情を変えるんじゃない。ポーカーフェイスだ」
「ポーカーフェイス?」
ちなみに俺は真くんに無駄な暗示をかけている。
真くん、結構人のいう事鵜呑みにするから暗示(?)をかけたりしやすくてとても楽しい。
「そう、ポーカーフェイス。
ポーカーフェイスを極めると……」
俺が見た先では未だに栞に抱きついている美月が居た。
「私の弟の話し聞きたいなー。何か進展してないのぉ?」
「~ッ!? 何も進んでない…というか進む何かすら存在しないよ!?」
その顔には驚愕しかない。
「あんなふうにひどい有様には、ならない」
「…ぬぅ?」
真くんは多分あまり理解はできてなさそうだな。
「ちょっと助けてよ、テツ兄!」
「いや、そんな事いわれてもなァ…ガールズトーク(?)にゃあ、俺は参加できませんよ」
「髪の毛解けば女でしょ! 私が何回、風呂上りのテツ兄を見てビックリしたか知ってるの!?」
「…んなこと知るわけ無いだろ!!?」
初めて知った、なんかもうショックで立ち直れない。
「…テツ兄もポーカフェイスが必要?」
真くんの言葉である。
「あ、そうだね…必要だね、これは」
力なく返事する俺…これは本当に仕方が無いと思う。
「ふぎゅぅ!?」
何で真くんの上げる悲鳴は必ず奇怪なものなのかね?
「ねぇ、栞ちゃん聞かせてよ。自分の弟のことだし気になるんだってば」
「……だから、聞かせるも何もありませんてば!!」
「ぴぎゃあ!」
「……ん~?」
なんかカオスだな、おい。
…というか、真くん以外は誰も映画に見向きもしてない気がするわ。
俺もだけど。
まぁ、んなことは置いとこう。
俺は真くんをなだめながら俺はポテトチップスを一枚手に取り口の中に放り込む。
味はコンソメだ。
ポテトチップスで代表的なものはのりしおとコンソメだと俺は思っているんだが、イメージ的にコンソメのほうがカロリーが高いと思いきや本当はのりしおの方が高いので、それに気づいたときは少しだけ驚いた。
…高いといってもあまり変わりないのだが。
「真くん、これうまいぞ~」
「ほぅ」
俺が真くんの顔の前に一枚を差し出すと真くんがそれを受け取りカリカリと食べて、美味しそうに顔を緩めている。
「むぎゅぅぅ!?」
その次の瞬間には映画のせいで驚いたが…。
この映画、俺が真くんをなだめているのに何故俺の行動を邪魔するのか…いや、映画にそんな医師なんて関係ないんだけど、タイミングが良すぎるんだよ。
「大丈夫だぞ、真くん」
「…う、うん」
少しおびえ気味の真くんだが、ゲームをしているときは嬉々としてグロゲーをやっているので強調されたホラー、というか多分突然の恐怖に対して異様に弱いのだろう。
何故、無駄に偏ったのか。
「テツ兄助けてよ!」
「まだやってたのか、お前ら…」
今も継続中だったらしい。
そんな感じでグダグダやっているとき、俺のケータイが震えだし特に特徴も無い音が流れ出す。
「電話だ、少し静かにな」
「ちょ、私を助けてって…「はい、もしもし?」…無視か」
『あ、徹夜くん? こちらナナですよ』
「おう、何か用か?」
電話から聞こえた声は奈菜の声。
そういえば連絡交換してたな、まぁこんぐらいは当然の事だが。
『元々徹夜くんにも用事があって電話したんだけどさ。徹夜くんの前に美月ちゃんにも電話したんだけど連絡つかないんだ。
徹夜くんなら美月ちゃんの携帯じゃない家の連絡先も知ってるだろうし、ボクが言ったことを後で連絡しといてくれる?』
「ん? 少し待ってくれ。
美月、お前のケータイは?」
「あ、電源切ったままかも…」
『美月ちゃんもそこにいるの?』
「まぁ、そうだが…」
『なんで、こんな時間に…』
もう20:00ぐらいにはなっていたりする。
「気にすんな。問題ない」
『…まぁ、とりあえず用件を伝えるね。
三日後、なんかあの世界でパーティみたいな物が開かれるようになったから』
「はぁ? パーティー?」
『うん。当然ボク達もそれに参加しないといけないからね。
確か前に瑞穂君が護衛していた王子様の誕生日だったよ、たしか』
「…なんで、そんなものに」
『まぁ、しょうがないよ。
ボク達は今まで何回か参加した事があるから慣れてるんだけど、徹夜くんたちは最初の世界でどうだかは知らないけどこの世界じゃ初めてでしょ?
だから、一応報告しといたよ』
「うわぁ、絶対だりぃ」
『ま、そんな感じでよろしくぅ。あとで今日の夜の話聞かせてね』
その言葉を聞いた瞬間に俺が何かをいう事を遮るようにブツッ…と、電話が切れた。
う、うぅむ……参加したくないでざる!
そして奈菜は最後にあんな事言ってきたけど、特に何も無いでござる!
美月が徹夜の家にお泊りして何かあると思った!? 残念、特に何もありませんでした!
ねぇ、どんな気持ち? 今どんな気持ち!?
(自分でも認める、このうざさ)
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