71話 俺この話を投稿したら、寝るんだ
サブタイトルは、俺自身の死亡フラグ(?)
「うわ…ちょ……納豆ドリアンくさっ!! ……あの恐ろしいほどデカイ口の事気にしてて忘れてたけど、納豆ドリアン…くさっ…!! ……スゥ…」
なんかおきている感じに思える徹夜だが、決しておきてはいない。
何故か異様なほどハッキリと寝言を言っているが、所詮は徹夜……気にしてはいけないのである。
まぁ、そんなアホな言葉が静かな部屋の中で異様に目立っているが、その部屋には寝言をいいながら夢の中の匂いをかいでしまったのか眉間にしわを寄せている徹夜と、ただ静かに寝息をたてている真くん。
そして、包丁を持ったクロと…その手を握っている栞が静かに睨みあっていた。
「……その手に持ったモノで、何をしようとしたの?」
栞は特に表情を変えることなくクロへと問う。
「見て分からんのか?」
それに対してクロは、普段は絶対に見ることのない黒いニヤリとした笑みを浮かべながら、栞へと問い返した。
栞は、クロの問いに答えるつもりは無いらしくただクロを見つめている。
「言っておくけど、私の兄には手は出させない。
絶対に……もし手を出そうとするなら、その前に私が体の一部も残らずに壊してあげる」
「ほう……魔法を使う魔術師が、精霊相手に戦うつもりか?」
まぁ、今まで空気だったので皆知らないだろうが…ここで、結構連載初期から考えていた説明を入れてしまおう!!
クロやフレやイム…つまり精霊達は基本的に魔力で体を作られており、それこそ世界の自然やらなんチャラは精霊によってつくられている。
そして、精霊は基本的に魔法は相当得意だ。
それこそ、自身が魔力でできており自分の属性を持っている精霊達にとっての魔法とは。自分が生まれたときから何年も訓練してきた魔術師と同等の力を持っているのだ。
正直、いらない設定だったから使っていない!!
「あなたは何を言っているの?」
「……へ?」
栞の言葉に、あほな言葉をあげるクロだが…次の瞬間には、いきなり倒れるクロ。
それを見た栞の手……クロを掴んでいないほうの手でわざとクロに見えないように後ろに回しているのだが、その掌の上には小さな魔法陣が展開されており、その魔法を食らったクロ。
まぁ、実際はただ寝ているだけなのだが…。
「私の敵は、あなたではないんだけど? それにテツ兄のモノを私が壊すわけが無いでしょ」
そんな事を言った栞。
なんか後半が少し怖い気がするが無視しよう。
栞はポケットから取り出したモノは、いつも収納されて短くなっている栞が使う魔法の杖。
それを栞がくるりと回すとカシャン…という音共に杖の収納されていた部分が飛び出し、それを音が鳴らない程度の強さで床にぶつけた瞬間に、栞の姿が消えた。
栞が現れたのは、徹夜の家からさほど遠くない空き地のような場所。
そこには栞……そして、もう一人少年が存在していた。
「久しぶりだな。まぁ、そんなに経ってないか……『魔道書』」
栞を見ながら、そんな事を言う少年。
大人になれば絶対に黒歴史となるであろう栞の呼び名を知っているということは、その少年も堕勇。
「……私はあなたになんか会いたくなかったけどね」
栞の表情の変化は特に見られないよね。
「一応参考に聞かせて欲しいんだが、何故俺があの精霊を操ってるのが分かった?」
「……あなたは相手を操るために魔力の糸を一本だけ、相手につける必要があるけど…その魔力の糸は常時完璧に隠すことはできていた。
でも、精霊は常に姿を具現化しては居らず、それこそテツ兄……景山 徹夜の身に着けている指輪に入ったり出たりと繰り返しているけど、その出たときにしか魔力の糸は接続できないから…慌しく出したり消したりしているところは、私にとっては何かはわからなくても、その何だか分からないモノに気づくことはある」
「…ふむ、さすがは魔法のプロだな」
何かを納得したような堕勇の少年だが、これを考えた作者は少しはてなマークが頭の上にあったりもする。
やはり、説明は難しい……というか、説明できなさすぎ。
「……俺が狙ったハサミのときも、あの精霊が転ばないようにと気を使ってるふりをしながら、景山 徹夜から離していくし…本当に狙い通りに行かなかったよ。
最後には完璧に防がれ、最後には精霊相手に魔法で眠らせるしな…」
「最後に一つ聞くけど、いつからクロを操ってたの?」
「…確か、数日前に魔界に頑張って潜入してたときかな」
細く説明をするが魔界でクロがぶつかってしまった場面があり、そのぶつかったのがその少年である。
その説明を終えた少年に火の玉が襲いかかり、それを少年は後ろに跳んで避けた。
「……それじゃあ、いい加減に始めようか。言ったでしょう? テツ兄に手を出そうとするなら絶対に壊してあげるって」
杖を構えながら、栞は堕勇の少年を睨む。
それに対して少年はニヤリと笑いながら、口を開いた。
「お前が得意なのは大規模な広範囲への攻撃魔法……つまり、この民家が並ぶ場所じゃあお前の全力は無理なんじゃないか?」
「……ッ!?」
栞が何かを言う前に、その視界の隅で何かが動く。
栞が思い切り後ろへと跳ぶと、相当太く巨大な拳が栞がいた場所に突き刺さり、地面をえぐった。
その拳の主は3メートル行くかという巨体で青色で気持ちの悪い人型の魔物……まぁ、簡単に説明するなら色違いのハルクである。
それだけではなく細身のカマキリのような二足歩行の魔物が異様な速度で切りかかってきて、それを栞は空間転移で避けた。
「……あいかわず、気持ち悪いものを使う」
栞が、その二匹を見てつぶやく。
それを無視して少年は魔物を操り、栞へと向かわせる。
「でも、いい加減に…それじゃあ、私は倒せないと考えるべき」
次の瞬間に魔物二匹が光の鎖によって拘束された。
そして止めとばかりに杖の先から炎の矢が放たれ堕勇の少年を貫いた。
……のだが、その姿が霧のように消えた。
栞の後ろからガッシリと腕で首を絞められる形で拘束された。
「…俺に手で頭を触られた時点で、自分の状況が理解できるよな?」
少年のその言葉。
少年は首を腕でおさえていない方の手で頭をガッシリと掴んでいる。
少年の能力、というよりも普通よりも強力な魔法なのだが……少年の力は手で触った相手を操る事。
つまり、栞に触れたという事はそういう事だ。
「ぐむぅ!!?」
その悲鳴は少年から漏れたもので……その溝には栞の肘が突き刺さっていた。
これは痛い、痛すぎる。
「触らないで欲しいんだけど?」
「…っ、何で操れないんだ?」
冷たい目で……というか完全に怒っている感じの栞と、少しヨロヨロしながら後ろに下がる堕勇の少年。
「……私はあなたの言ったとおり大規模な広範囲に対する攻撃魔法が得意……という事は、あなたより魔力が多いのは当たり前。
だったら、魔力であなたの魔法を押し切ることは容易なんだよね……ちゃんと、自分の使っている魔法の限界って物を知っておこうか」
「…っ」
栞の言葉に対してキッと睨む少年。
だが、その顔がすぐに驚愕へと変わった……何故なら、少年が居たのは民家が並ぶ場所だったはずなのだが今居るのは何にも無い無駄に広い平原。
「今度は、こっちがやらせてもらう」
次の瞬間には、次々とその平原の地形や気候等など状況が変わっていく。
地面が割れ、竜巻がおき、何もないはずの平原に轟音と共にいくつもの岩の塔が生える……そして最後には、空から光が降り注ぎ、全てをその光熱で燃やし尽くす。
何も無いはずの平原が魔法によって地形が変えられ……結局は最後に光が全てを焼き尽くしたせいで、結局は何もなくなったのだが地面を数㍍によってえぐっていた。
「……っ!?」
……だが、次の瞬間には少年がハッ…と気づいたのは、さっき居た民家であり少年にも、周りにも何も影響はない。
「……今のは?」
「さっき私を騙そうとしたモノと同じ、ただの幻だけど? まぁ、私ができることをただ見せてあげただけだけどね」
それこそさっきの魔法を放つのならば普通の勇者であれば、少しは息は荒くなるほどの魔力を使う魔法。
それは幻といえど、気づかされないほどにリアルに作り出す幻は相当な魔力をつい取ってくる魔法である……それを普通に使う栞は、やはり魔法特化であるからなのだろう。
「まぁ、こんな茶番はもうやめるとして……。
いい加減に本当に姿を現したら? 気絶させた弟さんの体を操るんじゃなくてさ」
「っ!? な、何故それを…」
「私は堕勇に居るときから、調べられる範囲で調べていたけど?
それこそ、今回みたいに敵になる可能性があるし、もし私のやりたい事ができた場合、それを邪魔されたら迷惑だしね……まぁ、今までやりたいことなんてなかったんだけど。
さっきあなたは私に勝ったと思ったけど、それは私が思わせてあげただけ……その弟さんの体についている魔力の糸をたどって本体の居場所を探るために、一回は触らないとダメだったから」
そんな事を言った栞の杖の上に魔法陣が浮かび上がった。
「……ッ!!?」
「もう遅いんじゃない?」
次の瞬間に、何処かで相当大きな鈍い音が響いた。
そして、目の前に居た堕勇の少年……の弟の体から力が抜け、べたりと前に倒れた。
「……いい加減にあなたも出てきていいんじゃない?」
「気づかれてたか…」
栞の言葉に出てきたのは泰斗。
約一週間の遠出が終わり、堕勇などのさまざまな機材などを移すための報告やらなんやらで、一回戻ってきて自分の故郷の世界に戻ってきたのだ。
「…私を捜してたの? 何か用?」
「少し調べて欲しいんだが、今日から三ヵ月後までで、あの世界で他の世界に移る魔法陣がいつ自然発生するかあとはどんな世界に通じているかとか調べて欲しいんだが、頼めないか?」
「調べられるけど……」
泰斗の言葉に答える栞だが杖は構えたままで警戒を続けている。
「やってもらう代わりといっちゃなんだが、そこに倒れているやつと、お前が倒した堕勇の処理を俺がやってやる……それじゃあ、だめか?」
「……まぁ、それでいいよ。やってあげる……三日後に、同じ時間またここに来て」
少し考えた栞は泰斗に、そう答えた。
誤字・脱字があればご報告よろしくお願いします。