59話 ナデナデ×2シーン
最初の二人は『徹夜の知らないと所で働いてます』という事なので、徹夜が知らないこと…つまり文章で出てきていないことなどもあるわけです。
なので二人の言うカントクの話とは、一回も出てきておりません。
ここは徹夜達が魔界に居るのと同時刻。
だが、世界は変わり徹夜が生まれた世界…そして、その世界にある普通の喫茶店。
「んで…本当に、その苗字であってんだろうな?」
「ええ、間違いありません」
その喫茶店の中で和馬が居て、そしてその正面に紅茶を淹れているメイド服の少女…明が居た。
喫茶店のマスターさんは丁度用事で出ており、店に来ている客は今の時間がお昼を過ぎて2~3時間程度経った後なので一人も居ない。
「未だに名前しかわかってない『妖刀』のフルネーム…まさか本当に教えてもらえるとは思わなかったんだが…一応、お前にとっては仲間だろうし」
「前も言ったとおり、あれはあの老人のための行動しかしません。
他の堕勇がアレを仲間だと勘違いしようと、私は絶対に仲間だとは思いませんよ…手酷くやられたら嫌じゃないですか」
静かな動作で淹れた紅茶を和馬の前へと差し出す。
「丁度、一人アレにやられましたしね…」
「……」
明が行った後にテレビを見ると、交通事故でそれなりに人気だったアイドルの誰かが死んだ、というもので…それを和馬は特に何も言わずに少し見た後、明のほうを再び見る。
ちゃんと紅茶も飲み始めている。
「本当はここであんたを捕まえたいんだが…」
「…この世界での戦闘は厳禁ですよ。面倒な事になるじゃないですか」
「……本来なら堕勇の面々がこの世界のどこで、どんな風に生活しているかも分かってるのにな。
さすがにこの世界で暴れるとカントクも隠しきれなくなってしまうからな……徹夜じゃないが面倒だ」
…そういえばこの頃徹夜は「面倒」と邪念や言葉で言ってないのではないだろうか?
まぁ、そんな事はどうでもいい。
「それより当たってるかどうかの確かめのために私に聞きに来たのでしょう?
電話でも何でもして知らせなくて良いのですか?」
「あ、そうだった……」
和馬はポケットから携帯電話を取り出し、ある一人にかける。
「あ、もしもし瑞穂?」
和馬が電話し始め、明は自分の仕事の残っているものを片付けるために動き出す。
「うん、確認取れた…カントクが言った人物で間違いない。
……オケ、わかった。一応俺もそっち行くから」
和馬はそんな事を言うと、ティーカップに残っている紅茶を飲み干し、財布を取り出しながら立ち上がった。
そして電話の相手に移ろう。
「おぅ、わかった。先入ってるわ」
携帯電話を閉じてポケットにしまう瑞穂。
その目の前には無駄に大きい和風の家…その家の門も大きく、その門にかけられている名前の札は神凪という苗字が書かれている。
「…お邪魔しまぁ~す」
その門を瑞穂は躊躇なくあけて入った。
それと同時に何かがブワァ…と空気を侵食するかのように移動し、瑞穂を包もうとした。
「魔法苦手なんだよな…お願いします。メドゥーサ様」
そんな事を呟いた瑞穂の目の前には一人の少女が現れ、それが瑞穂を包もうとしたものを弾き返した。
「ぬぅ、自分の都合の良い時に頼るんだな貴様は……」
そんな事を言いながら瑞穂のほうを向こうとする少女の目を瑞穂が抑える。
「あまり気軽にこっちを向かれると俺まで石になりそうだから怖いんだけど…」
その少女は、精霊のようなものだ。
徹夜のクロなどと同じようなものだが、その力は瑞穂の相手を周りの時の縛りから解き放つ…まぁ、相手の動きを永遠に止める眼の力の原因である。
少女は普通の人間の8歳程度の姿をしていて、よく映画や神話などで聞く髪の毛が蛇…というものはなく、普通の髪の毛で、その首元に蛇が一匹住み着いている。
その少女に瑞穂はポケットから取り出したアイマスクをつけてから、ゆっくりと家の敷地を見回す。
アイマスクをつけられた状態でも少女は問題ない様子で歩く。
ピット器官というやつだろう。
「さっきのは進入してきたものに幻影を見せ、帰らせるようなものだな」
「ふむ…確かこの家には昔から剣道の道場を開いている名家で父親、母親、そして息子が一人、娘が二人だったはずだが……。
そいつらが健在だったら、そんな魔法はいらないわな……まぁ、健在なら俺が勝手に入ってるんだから一人は出てきても可笑しくないと思うが」
考えながら歩いている瑞穂に少女が話しかける。
「…もうアイギスは使わないよな?」
別に瑞穂が考えていることに対してではない。
「いい加減に諦めろ」
特に表情を変えずに返答した瑞穂は家の扉へと手をかけ、その後ろでは少女がプクリと頬を膨らましているが、やっぱり瑞穂は気にしない。
その少女の気持ちなどに反応して行動するらしく、首に住み着いている蛇が舌を出したりしまったりしながら瑞穂へと威嚇の音を出している。
「はいはい、そうご機嫌斜めになりなさんな~」
テキトウにあしらうように瑞穂は少女を撫でる。
「こ、子供扱いするんじゃない!!」
それのせいで少女は気持ちよさそうに口元が緩んでいる。
…そして蛇が瑞穂の手を離れさせないように瑞穂の手に絡み付いているのは気のせいだろうか。
「言ってる事とやってることが違うな~」
「うるさいぞ、男女!!」
「せめて男を最後にしてくれないかな~、なんか男っぽい女みたいじゃん。女みたいな男のほうが俺的には精神的ダメージ少ないんだぞ……」
結構、これ…瑞穂君傷ついてますよ。
そんな感じで会話しながら歩いている二人だが、基本的に最初の魔法以外何もなく普通に何事もなく家の中を歩いている。
異様に大きい家の中を数分歩いている瑞穂だが、さすがにここまでの時間何もないとカントクが予想していたことは間違っていたのではないかと思い始める。
だが、渡り廊下を渡った先にある道場。
この家では剣道の道場を開いているのだが、この家から少し離れた所に1つと家の敷地内に1つあるわけであり、この道場は敷地内にあるものだ。
その道場に入ろうとした瞬間に、中から何か変な匂いがした。
人を不快にすることが当たり前のような匂いだが、表現をすることは決して容易なものではない異臭。
「……」
瑞穂が黙って扉を開けた。
中は薄暗いため、中に何があるかを確認するために目を細める。
だが、確認する前に瑞穂の目を隠すように蛇がまきついてきた。
「そんなモノ見る必要はないぞ」
少女の声が聞こえると同時に瑞穂は少女に手を引かれて道場に入っていく。
「……何にも見えないんだが?」
「それが目的だしな」
「……で、中はどんな感じだ?」
「さぁ? 一応、私も蛇だからピット器官というものは持っているが目は隠されているし、あくまで熱を感じるものだからな。
熱がないものまでは、わからないな。
さて、この異臭でも分かるだろう……あとはお前らをまとめている人間様にお任せしたらいいだろう」
瑞穂は少女にひっぱられるがままに外に出され、ポケットにしまってあった携帯電話を取り出した。
「……もうアイギスは使わないよな?」
「諦めろ」
メドィーサさんはアイギスがとても嫌いである。
そしてこの会話をし始めると、撫でるまでの動作はいつも行われることになるわけだが、この少女わざとやっているのではないだろうか? という疑問は瑞穂は考えないようにしている。
─ 徹夜視点へと移る ─
「ぬぅ…やっと着いたか。
ずっと座りっぱなしだったから尻が痛くなった…」
「ルル姉さん、一応女性なんだから言葉には気をつけようね」
俺たちはルルが待っていた所で馬車に乗り、一時間程度乗って移動し目的の場所についた。
ルルが女性らしからぬ言葉を使うので俺が少し気を使って控えめな言葉を使おうと思う……ルルは腰の下辺りをおさえ(控え目なのか?)苦痛の顔をしながら馬車から下りた。
「…目的の場所ってこの森の事なのか?」
「いいえ実際には、この森の中にある城です」
俺の質問にニィが答えてくれる。
美月は俺は無視しているが腰の下辺りの痛みの事を文句を言っているルルを気づかっている…優しいね。
正直、その程度のことで気にしてやることはないと思うわ。
まぁ、そんな感じでグダグダとしているが、とりあえずは森の中に入っていく。
道が整備されており、なにやら道の両端に小さな魔法具が数㍍間隔でおかれていて、それが魔物を遠ざける役割をしているらしい。
「本来は、この魔法具が城の外壁にも設置されていたのですが馬鹿な二人の兵士さんが一箇所壊れてることに気づかず、魔物の進入を許してしまったようです。
一応、その二人は私と仕事をするほどには強かったので死ぬことはありませんでしたが、それなりの魔物の量に襲われたらしいです」
ふ、うふ、う……あれ、なんか俺の思考が変な風になったけど? 俺『ふむふむ…』ってやりたかったんだけどな……(※純粋な誤字です)
なんかイメージ的に変な人の笑い声になっちゃったよ…うふ、的な感じ。
まぁ、とりあえずは歩いた結果少し崩れている城に着いた。
「ああ、こんなにも荒れ果てて……やはりあの二人にはもう少し仕置きが必要なのではないでしょうか? いや、前よりもきついものにしないといけないでしょうね…」
そんな呟きが聞こえたが気にしないでおこう。
「むぅ…後で魔物殲滅の仕事を部下共に出したほうがいいようだな」
魔王様らしき事言ってるよ…あのルルが。
微妙に不愉快そうに顔をゆがめているルルは、とりあえず城の中に入るようで歩き出し、それを俺たちは何も言わずに着いていくことにした。
城の内部は、魔物が暴れているようでそこら辺に傷がついていて…昔は豪華だったであろうテーブルなども、やはり壊れているので勿体ない感がとてつもない事になっている。
ああ、壊すんだったら売っとこうぜ…全部俺のお小遣いにするからさ。
「徹夜の目に欲が浮かんでいるような気がするんだけど、気のせいかな?」
気のせいじゃないです。
「気のせいだ。俺は人の手本になるような人間だから、そんな欲なんてものはない」
俺の思考と言葉は正反対である。
「徹夜が見本になったら、全員ダメ人間になる気がするけど…」
美月くんや、意外とひどい事いうんだね……徹夜おじさ傷ついちゃうよ。
「その変な思考をしている時点で手本にしたら終わると思うけど…さすがにもう言うのはやめるね。徹夜泣いちゃうから」
もう既に泣いてます。
この頃聞くことのなかった美月からのキツイ言葉は、もう心にグサグサ突き刺さりまくりです。
「まぁ、とりあえずは行こう徹夜」
あれ、謝罪もなし?
なんか今回の美月の対応が本当にきついものになってる気がする。
「だって、この頃…徹夜、真くんとか栞ちゃんのことばっか構ってるじゃん……」
ああ、なんか久しぶりに不機嫌な美月さんだ…そして心を読むなし。
…いや、異世界で久しぶりに会ってからは美月の事ばっかり構ってたから、あまり不機嫌にすることもなかったんだけどね。
この頃、初めて知り合うの人が多くなりすぎて美月の事を構ってないし……。
「悪いな、美月」
そんな感じで美月を撫でると、昔のように嬉しそうな顔でこっちを見てくる。
この頃俺は美月を撫でたりすることはないが俺は美月のこと堪能してるからな(例としては前に俺のこと心配してきて俺の顔を下から見上げてくるとてもかわいi…ゲフンゲフンなんでもない忘れてくれ)
美月的には無意識なわけだし、俺は美月に何もやってないので不機嫌になられることも無理はないのかもしれない。
…久しぶりに何かプレゼントでもしようかな?
「ゴホン…ピンクな雰囲気を出している、そこの二人。
我々は、いい加減先に進みたいのだが良いか?」
そんな所でルルが咳払いしながら、遮ってきた。
「やめなよルル姉さん、人の恋路を邪魔しちゃダメなんだよ」
「遮らないと永遠に続きそうなものをみせられるのは嫌だろう!! まだ遭遇はしていないが魔物もそこらじゅうに沢山うろちょろ居るのに!!」
ごめんなさい、ルルさん(というかルルにしては珍しく真面目だな?)
…俺にしてはマジで謝罪の念を込めてますよ、これ。
まぁ、とりあえずは変な雰囲気を断ち切り歩いていく。
変な雰囲気を出させないためか先頭をニィと美月、後方を俺とルルの二列方式で行っている。
そんな感じで歩いていたわけだが……足元でガチャリという音が聞こえ、何故か後方で歩いているはずの俺とルルだけ浮遊感。
「「ぶにょわッ!?」」
そして俺もルルも間抜け声を出しながら落下していき、音をたてて廊下がしまった。
「…え、徹夜は?」
「……ルル姉さんも消えた?」
いきなりの展開についていけない二人が残された。
細かくは覚えてないので分かりませんが、この頃美月ちゃんの事を徹夜くんが構っていないような気がしました。
誤字・脱字があれば御報告宜しくお願いします。
予約投稿に失敗した(汗